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119:カブキ者(シガミー)、VS眷属

「うふふふっ、くすくすくす、クツクツクツクツ――――コォON(おぉん)!」

 ぎちり――――――――シュッボゥ!

 ごぉぉぉぉぉぉぉっぉぉわわわわわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――!!!


 燃えあがる、(いのち)(ほのお)

 その青白(あおじろ)濁流(だくりゅう)(てん)を焦がし――おれを飲みこむ(ほど)にふくれあがる!

 (ほむら)(いん)じゃねぇ!?


 さっき見た指形(ゆびがた)は、たしかに最弱(さいじゃく)(ほむら)(いん)だった。

 たいまつの(ほのお)が、はじけ飛ぶくらいの――初級(しょきゅう)法印(いん)のはず。


瀑布火炎(ばくふかえん)(じゅつ)――かっ!」

 両手(りょうて)(かお)(おお)う。


 ぼごうわぁっ――――――――どこまでも(ふく)れあがる、火のない(ほのお)

「(迅雷(ジンライ)――――!?)」

 返事(へんじ)がねぇ!


 ――――キィィィィィィィィッィンッ♪

 姫さん(リカルル)そっくりの(かお)に、うかぶ(ふた)つの月影(つきかげ)(ひとみ)


 ――からだが(うご)かねえ!

 ぼっうわぁ――――おれの両腕(りょううで)に火が(うつ)る!

 おれは真言(マントラ)(とな)えちゃいねぇ――――燃えてるわけじゃねぇのか?

 (こおり)に浸けたみてぇな――(うで)をつたってながれこむ――つめたい。


「おれぁ、伯爵夫人(おくがた)さまとやり合うつもりはねぇ――――ないです!」

 迅雷(ジンライ)、いいかげんに起きろ!

 ジタバタ――――ぅお!?

 もがいたら、(うで)がうごく?

 (あお)く燃えてるトコだけ、(うご)かせるようになった。


 うしろ(あたま)から、迅雷(かんざし)を引っこ抜く。

 金糸(きんし)のような(かみ)が、ほどけて――(あお)瀑布火炎(だくりゅう)に向かって、なびく。


「(おい、どうした!? なんか言え!)」

 だめだ。神力(かみなり)がきれたのか、迅雷(ジンライ)小石(いし)(あか)りが消えてる。


「〝法印(ほういん)〟を知ってるってことわぁ、あなたわぁ――この(ほし)の生まれじゃないのねぇ?」

 ふさふさの尻尾(しっぽ)を、(おお)きく揺らす――狐耳(きつねみみ)

 くるん――――尻尾(しっぽ)がまえに(まわ)されると、たち(のぼ)っていた(ほのお)が――――コッチに流れこんできた!


「うっわぁぁぁぁわわぁぁ!? ほ、(ほし)ぃ!? 五百乃大角(いおのはら)みたいな(こと)を言うな、わからん! ――避けられねぇ!」

 (あし)がうごかん。けど(うで)(ほのお)が燃え(ひろ)がった――(はら)のあたりまでが、(うご)

かせる!


 ぼごわっ、ごぅおわぁっ――――紙一重(かみひとえ)()ける、()ける、()っける。

 ぐりんぐりりん――――(しり)を向けた公爵夫人(きつねみみ)が、尻尾(しっぽ)(うごめ)かせた。

「きゃっきゃっきゃ♪ ――――あら、しぶとい?」

 尻尾(しっぽが)が――おれを(ねら)ってる。

 巨大(きょだい)狐火(きつねび)が、おれを追ってくる。


 あの尻尾(しっぽ)狐火(きつねび)を、(あやつ)ってんのか。

 それにしても(ほか)連中(れんちゅう)は、ドコに行ったんだ!?


 ごぉぅわ――――(おお)きく揺れた(ほのお)が、おれの全身(からだ)を覆い尽くす!

「つ、つめてぇぇぇぇっ――――!!!」

 狐火(きつねび)に、呑みこまれた。ピキパキ――指先(ゆびさき)(こお)りつく。

 こ、コレだけの〝人魂(ひとだま)〟にかこまれてんだ、もう燃やす。

 (なん)でも良いから燃やさねぇと――(こご)え死ぬ。


ON(おぉん)――――!」

 真言(マントラ)(とな)える。

 ぎちり――――――――シュぷすん!

 発火(はっか)はしたけど、火が噴き出ねぇ――――かまうか、もう(こおり)()ぬ!


「キリキリ――――〝瀑布(ばくふ)火炎(かえん)(いん)〟を(むす)ぶ――――バザラ」

「ウン――――丹田から吹き(ぷすぷすぷすん)出す白煙(、ぼっふぁぁ)――――ハッタ!」

 半径(はんけい)三丈(さんじょう)一瞬(いっしゅん)焦土(しょうど)にかえる、(ほのお)瀑布(ばくふ)が――出ねえ。


 ボシュプシュシュワワワッ――ボッフワァァァァァァァァァァァァァァァンッ!

 あたりが白煙(はくえん)(おお)われた。(なに)も見えなくなった。


 (きり)の向こうに揺らめく気配(けはい)

 (あい)人魂(ひとだま)は消えた。(つめ)たさがやわらぐ。

「わぁたぁしとー、(おな)(わざ)使(つか)えるのねぇぇぇぇぇーっ? ひょっとして、アナタも江戸(えど)の人?」

 (こえ)(ちか)よってくる。


 ヴッ――――じゃりぃん♪

 錫杖(しゃくじょう)を出す。まだかじかむ指先(ゆびさき)で、しっかりとつかむ。

「え、江戸(えど)だあ? (ひがし)(みやこ)は行ったことがねぇからよく知らん。あんたの正体(しょうたい)妖狐(ようこ)でも、五穀豊穣(ごこくほうじょう)(かみ)眷属(けんぞく)でも、関係(かんけい)ねぇっ! ――ので、やり合うつもりはねぇ……ないですっ!」


「えっ!? コッチだって無いわよぅ、そんなの!」

 ぶわさぁっ――ぱちぃん♪

 妖狐(ようこ)尻尾(しっぽ)を手でなでると、(きり)が消え――(ゆび)を鳴らすと、あたりが(あか)るくなった。


「いまのは一体(いったい)!?」

 がやがやがや――姫さん(リカルル)がニゲルに(たす)けだされ、

 工房長(ノヴァド)巨大(きょだい)魔法杖(まほうつえ)を、(すみ)っこへ(はこ)んでいく。


「どうしたの、シガミー。となり良いかい? ぼくも参加(さんか)する」

 どこかから椅子(いす)を持ってきたニゲルが、(よこ)(すわ)った。


「(おい、巨大(きょだい)人魂(ひとだま)だか狐火(きつねび)だか、瀑布火炎(ばくふかえん)(じゅつ)だかは、どこいった!?)」

「――どうかシましたか、シガみー?――」

 返事(へんじ)をする迅雷(ジンライ)神力(めし)が切れてたわけじゃ、ねぇみてぇだ。

「――マた口調(くチょう)が、(もト)(もド)っていまスよ?――」


 (とう)妖狐(おくがた)さまは、(つら)が良い黒いの(なんとか)に、かいがいしく(すわ)らされている。

「――エクレア・トルティーヤでス、シガみー――」 

 そうだ、柄繰(エク)レアだ、柄繰(エク)レア。


「((いま)な、あの(ひめ)さんの母上(ははうえ)のヤツにな――)」

 ――――キィィィィィィィィッィンッ♪

 昼中(ひるなか)には、見ることのできないはずの、(つき)(ひかり)をたたえた(ひとみ)

 伯爵夫人(おくがた)が、こっちをみてる。


「(あ、あとで(はな)すよ)」

 天井(てんじょう)も焦げてないし、おれ……ぼくの指先(ゆびさき)(こお)ってない。

 まさに(きつね)に化かされてた――って(わけ)だな。


 アレが、この領地(くに)奥方(おくがた)さまだっていうなら、たとえ妖狐(ようこ)でも(わる)いもんじゃねえ……と(おも)う。

 ガムラン(ちょう)城塞都市(となりまち)も、みんな(たの)しそうに暮らしてる。

 どっちかっていやぁ、ウチの惡神(かみさん)のほうがタチが(わる)いまであるしな。

 ただ、リカルル以上(いじょう)に、(てき)(まわ)したらやべえ……やばいのだけは、よーくわかった。


「それで、リカルルちゃぁん。その子わぁ、だぁれぇ?」

「は、はは、はい。あの子は期待(きたい)のスーパールーキー、シガミーですわぁ!」

総員(そういん)拍手(はくしゅ)――」


「あなたわぁ、シガミーちゃんっていうのねぇー。(わたくし)はコントゥル家名代(みょうだい)の――ルリーロ・イナリィ・コントゥルでーす。以後(いご)お見知りおきを? うふふふ♡」

 なんとなく……ウチの下っ腹(いおのはら)には、会わせない方が良い気がする。

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