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118:カブキ者(シガミー)、コントゥル伯爵夫人

「レディ、コントゥル――お(たわむれ)れが過ぎます」


 リオレイニアが姫さん(リカルル)付きの、白っぽい(・・・・)筆頭(ひっとう)なら――

 この甲冑(かっちゅう)を着た、黒っぽい(・・・・)護衛(ごえい)筆頭(ひっとう)である――すっごい(いか)ついのが(かれ)だ。

 いままで(はな)したことはないけど、姫さん(リカルル)がなんかしたときに、絶えず矢表(やおもて)に立っていた。

 もちろん、そのとき(かれ)正対(たい)するのは、姫さん(・・・)だけど。


 姫さん(リカルル)から(・・)周囲(しゅうい)をまもる細身(ほそみ)長大(ちょうだい)(たて)は、名誉(めいよ)(きず)で埋め尽くされている。

 アレそのうち、(なお)してあげたいな。装備(そうび)をなんでも、(なお)せるようになったし。


「――そうでスね。(かレ)にハ何度命(なんドいのチ)(すク)われタか、わかりマせん――」

 えー、ソコまでじゃないよね?

 草原(そうげん)姫さん(リカルル)(おそ)われたときに、(たす)けてくれなかったし?


「――あのときはリカルルが強引(ごういん)に、おそらく甲冑(かっちゅう)機能(きのう)をつかい、全力(ぜんりょく)(かれ)をまいたのでしょう――」

 『聖剣切りの閃光(ヴォルトカッター)』の一員パーティーメンバーでもある、(かれ)をまいたってことは――やっぱりあのとき本気(ほんき)首を取りに(・・・・・)(生きかえるけど)来てたんだな。


「――はイ。そしテ(かレ)行動(こうどウ)には一定(いっテい)誠実(せいじつ)さ――騎士道(きしドう)……武士道精神(ぶしどうせイしん)(かン)じラれ、それヲ間近(まジか)で見てイたリカルルの人格形成(じんかくけイせい)に、(すく)なかラぬ影響(えイきょう)をヲあたえていタと(かんが)えマす――」

 そういうはなしか。あのとき、(いさぎよ)く負けを(みと)められた姫さん(リカルル)は、すこし立派(りっぱ)だったからな。


「エクレア・トルティーヤ!」

 伯爵夫人(おくがた)に飛びつかれる、(くろ)いの筆頭(ひっとう)

 ざわめく周囲(しゅうい)


 落ちる『ルードホルドの魔法杖(まほうつえ)』――ごどん――ぷぎゅるりっ!

 結構(けっこう)(おも)さがあったからな――下敷(したじ)きの姫さん(リカルル)大丈夫(だいじょうぶ)か?


「いつものように、なまえでよんで♡」

 伯爵令嬢(むすめ)を踏み(つぶ)し、その護衛(ごえい)に――(あい)をささやく伯爵夫人(はくしゃくふじん)

 どよめく周囲(しゅうい)

「……(いま)のわたしは、リカルルさま付きの護衛(ごえい)です。それに、ご自分(じぶん)のお立場(たちば)という(もの)を、お(かんが)えください――」

 カパリと(めん)を跳ねあげる――柄繰レア(えくれあ)


 きゃぁぁぁぁぁっ――――周囲(しゅうい)女供(おんなども)……女性(じょせい)方々(かたがた)が、(あま)ったるい金切(かなき)(ごえ)を張りあげた。

「うるっせぇ!? なんだ、(なに)が起きた?」

「――(かレ)のイケメンぶり……優形(やさがタ)容姿(ようシ)と、伯爵夫人(はくしゃくフじん)との関係性(けんけいせイ)感銘(けんめイ)を受けていると(おモ)われます――」

 んぅ? まあ、〝前世(まえ)のおれ〟と(くら)べりゃたしかに(つら)は良いが、あいつやべぇーだ……やばいよね?


 ココの領主(りょうしゅ)は、(はなし)がわかる名君(めいくん)だ。

 それでも、越えたらいけねぇ、身分(せん)って(もん)がある。


「レディ、コントゥル――」

 見かけ(すがた)だけは、立派(りっぱ)町娘(まちむすめ)伯爵令嬢(おくがた)に、ひっ付かれた黒甲冑(くろかっちゅう)が――微動(びどう)だにしなくなった。


「ちゃんと、名前(なまえ)で呼んでくれないと――一生離(いっしょうはな)れてあげません♡」

 きゃぁぁぁぁぁぁぁ――――♡

 湧く、女性(じょせい)方々(かたがた)

 この(かん)じなら――柄繰レア(やさおとこ)(いのち)までは取られないで、済むのかもしれない。

 そもそも公爵夫人(かのじょ)はどう見ても、公爵令嬢(リカルル)お付き筆頭(リオレイニア)とおなじ年頃(としごろ)にしか見えない。

 なんか、おかしい。


 長机(まわり)面々(めんめん)をみわたす――――(あわ)ててるヤツは、ひとりもいなかった。

 いや、ひとり(あわ)ててるのが居るな。

 ニゲルが(ひめ)さんに駆けよって、魔法杖(まほうつえ)を退かそうとしてる。


「ルリーロ・イナリィ・コントゥル! ――いくら(もと)パーティーメンバーでも、これは(いただ)けません。なにより(わたし)には(あい)する――――婚約者(こんやくしゃ)がいるのですから――――っ!」


 あれ? 禁断(きんだん)(こい)じゃないっぽいよ?

 えー、あの護衛(ごえい)(ひと)折角(せっかく)すっごいイケメンて発覚(はっかく)したのに――お手つきじゃん。

 あー、解散解散(かいさんかいさん)ー。

 (いま)(いま)まで、湧きに湧いてた女供(おんなども)……女性(じょせい)方々(かたがた)が散り散りに、散っていった。


「ひょっとして、まえにお手紙(おてがみ)に書いてた、央都(おうと)のギルドの受付嬢(うけつけじょう)ちゃん――?」

「いえ、まー、そうです。(つぎ)(やす)みにも彼女(かのじょ)(いえ)に、挨拶(あいさつ)に行くつもりです」

「それは、それは――盛大(せいだい)派手(はで)なお(しき)を――――」


 ふわぁっさぁり。

 夫人(ふじん)のうしろに、なんかいる(・・・・・)

 それに、さっき――〝稲荷(いなり)〟って言ったか?


「(おい迅雷(ジンライ)クン、こいつぁ――――!?)」

 いつまでも(とし)を取らず――

 稲荷(けんぞく)を名のり――

 そして――ふっさふさの尻尾(しっぽ)


 おれはコイツを知ってるぞ(・・・・・・・・・)

「――シ――」

 迅雷(ジンライ)返事(へんじ)を――――できなかった。


 目のまえに――ぼぉうわっ♪

 青白(あおじろ)(ほのお)(とも)る。


 ソレは――灯りの魔法(ひかりのたま)炎の魔法(かえんのたま)とは、べつの(ことわり)によるものだと――わかる(・・・)

 かつて前世(ひのもと)で、何度(なんど)もやりあったことのある――(ぞく)に言う、狐狸妖怪(こりようかい)(たぐ)いだ。


 ぼぉうぼぉうぼぉうぼぉうぼぉう――――!!!

 おれの周囲(しゅうい)に、次々(つぎつぎ)(とも)る――つめたい。


「まちがいねぇ――――こりゃ、狐火(きつねび)だ!」

 ()(もと)の生まれなら、この〝(つめ)たい火〟が(なん)なのか――わかる。

 おれの真言(マントラ)と、本質的(ほんしつてき)には(おな)(もん)だ。


 ソレは――(いのち)灯火(ともしび)と言っても良い(もん)で。

 ソレは――自分(じぶん)(いのち)とは(かぎ)らない。


 青白(あおじろ)(ほのお)が、あたりの(あか)るさを打ち消していく。

 だらだらだらだら――――イヤな(あせ)が、からだの(しん)まで(こおり)りつかせる。


「リカルルちゃぁぁん!? その子わぁ、だぁれぇ?」

 昼中(ひるなか)には、見ることのできないはずの、(つき)(ひかり)をたたえた(ひとみ)

 伯爵夫人(おくがた)(くび)だけを、こっちに向けていた。


 あたりは薄暗(うすぐら)く、ココには〝■■■■(■■■■■■)■■■(■■■■■)眷属(けんぞく)〟と、〝おれ〟の二人(ふたり)しかいない。


 町娘(まちむすめ)のような(ふく)

 その(そで)が持ちあがり――――〝(ほむら)(いん)〟をむすんだ。

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