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117:カブキ者(シガミー)、カブキーフェスタ企画会議

「えー、第一回(だいいっかい)カブキーフェスタ開催(かいさい)のための企画会議(きかくかいぎ)に、ご参加(さんか)いただきまして(まこと)にありがとうございますですわぁ――♪」

 ここはガムラン(ちょう)冒険者(ぼうけんしゃ)ギルド地下(ちか)作戦会議室(さくせんかいぎしつ)だ。


 長机(ながつくえ)四角(しかく)く組んだ中央(ちゅうおう)が、おおきく空いている。

 ソコへすすみ出る、(あか)細身(ほそみ)のドレス。

 革製(かわせい)胸当(むねあ)て((がら)入り)だけで、甲冑(かっちゅう)は着てない。


総員(そういん)拍手(はくしゅ)――」

 拍手(はくしゅ)をうながすのは、(しぶ)(かお)のギルド(ちょう)

 (かれ)(した)えた姫さん(リカルル)が――仁王立(におうだ)ちである。


 わー、パチパチパチ♪

 彼女(かのじょ)あんなんでも(・・・・・・)名実(めいじつ)ともにココ――魔物境界線(ガムランちょう)のエースだ。

 人徳(じんとく)もあるし、行動力(こうどうりょく)もある。

 見てる(ぶん)には面白(おもしろ)くて、(きら)いではない……すこし(こわ)いけど。


「「「「「うぉぉぉぉ、なんかはじまったぁー!!!」」」」」

 別段(べつだん)(かべ)があるわけでもないから、遠巻(とおま)きに冒険者(ぼうけんしゃ)見物(けんぶつ)しに来てる。

 しかも、倉庫(そうこ)一角(いっかく)でもあるため、吹き抜けの搬入口(はんにゅうぐち)から物資(ぶっし)がときどき(はこ)びこまれる。


 おーい、ソッチを(つえ)(ささ)えてくれー。

 了解(りょうかい)でさぁー。おろすぞぉー。

 つまり、なんだか騒々(そうぞう)しい。


 上空(うえ)からゆっくりと、(はこ)びこまれる魔物素材(まものそざい)――(みょう)(なが)いと(おも)ったら、あれは化けウサギ(変異種(バリアント))の(つの)だ。


 チーン♪

 チーン♪

 チチーン♪

 鑑定持(かんていも)ちが、けっこう居るな。


「――はイ。リオレイニアとギルド(チょう)、そシてテイカー商会(しょウかい)付きの商人(しょウにん)(めイ)が、鑑定持(かンていも)ちのようデす――」

 アーティファクトによる狙撃(そげき)警戒(けいかい)する(じゅつ)を持つ、(ひめ)さんに配慮(はいりょ)してぼくは、また耳栓(みみせん)をしてる。

 (そと)(おと)普通(ふつう)に聞こえるけど、迅雷(ジンライ)からの(・・・)内緒話(ないしょばなし)がつかえない。


 ふぉん♪

『角ウサギ【変異種】の角<New>/

 非常に希少かつ長大な、雷撃系魔力素材。

 神力の伝導率は測定不能。』


「シガミー、なんて(かお)してるの?」

 あ、まずい。〝シメシメうっひっひ(がお)〟を見られた。

 上級鑑定(じょうきゅうかんてい)をするには、鑑定(かんてい)したい(もの)を〝値踏(ねぶ)み〟しなければならないのだ。


「ごめんごめん。ぼくぅ、まだ上級鑑定(じょうきゅうかんてい)のやり(かた)に慣れてなくてさ、(わる)ーい(かお)になっちゃうんだよね、えへへ♪」


「ぼくぅ――だとぉう!?」

 (となり)にいた工房長(ボヴァド)の目が、(けわ)しく見開(みひら)かれる!

「シガミーじゃない!? まさか――!?」

 階段(かいだん)から野次馬(やじうま)をしてた、ニゲル青年(せいねん)(さけ)ぶ。


また(・・)魔物(まもの)がでたぁぞぉ――――総員配置(そういんはいち)につけぇー!」

 ガッチャガチャガチャ、ドカドカドカドカッ!

 衛兵(えいへい)まで降りてきた。


 (ここ)(ひと)たちとも付きあいが、(なが)くなってきたと(おも)うんだけど。

 丁寧(ていねい)なしゃべり(かた)をすると、なんでか――――化けた魔物(まもの)間違(まちが)えられる。

 子供(こども)姿(すがた)でもぼくの中身(なかみ)は、()(もと)生まれの『僧侶(そうりょ)猪蟹(ししがに)(やく)40(さい))』だ。


 この世界(せかい)に生まれ変わり、ガムラン(ちょう)にたどり着いてから、ずっと粗野(そや)口調(くちょう)だったから、仕方(しかた)ないんだけど――てめぇら!


 長机(テーブル)に――ドカリ!

 ちいさな(しり)をのせ、(かた)(いか)らせ(ひざ)をつかむ。


「やっかましぃやぁ、おれだぜおれぇ! この猪蟹(シガミー)さまのどぉこぉがぁ――魔物(まもの)に見えるっていうんでぇぇぇぇぇぇっいっ!!!」

 (すず)()のような、かろやかな怒声(どせい)(はっ)してやる。


「な、なんだよー、おどかさないでよ。シガミーじゃんか」

 (かく)れたニゲルが、また階段(かいだん)から身を乗りだした。

「はぁー、まったくだぜぇ!」

 工房長(ノヴァド)片手(かたて)(かま)えた巨大(きょだい)鉄塊(てっかい)……金槌(かなづち)をおろした。

 ドズズゥン!


 パパン♪

 手を(たた)き、注目(ちゅうもく)をあつめる(あか)いドレス。

「はーい。おバカはそのくらいにして、とっとと決めてしまいますわよ?」

 ドレスの(すそ)をひるがえし、壁板(かべいた)(けず)れる(いし)文字(もじ)を書くリカルル。


 あの真っ(くろ)く塗られた、おおきな木の(いた)は――猪蟹屋(みせ)にあっても良いな。

 ――はイ、シガみー。大口(おおぐチ)注文(ちゅうモん)などを、書き留めることができると便利(べンり)デす――。


 きゅ、きゅ、きゅきゅきゅー♪

 (けず)れる(いし)(くろ)(いた)(しろ)文字(もじ)が、書き込まれていく。


『第一回カブキーフェスタ企画会議

 フェスタ開催の目的=楽しそうだから!』


 たなびくドレス。揺れるほそい(かた)――そして(はず)(しり)

 ははぁん。ニゲルが食堂(しょくどう)仕事(しごと)をさぼってまでココに居るのは、姫さん(リカルル)のプルンプルンした(あれ)(なが)めに来てたのか。

 たしかに、見てる(ぶん)には全身(ぜんしん)どこを取っても――(はな)がある。

 ピコピコと、よくうごく狐耳(みみ)はかわいらしいとさえ(おも)えるしな~――見てる(ぶん)にはだけど。


 狐耳(みみ)(かたち)がルコルそっくりなのは、やっぱり〝血筋(ちすじ)〟なんだろうな。


「(……領主(りょうしゅ)である伯爵(はくしゃく)名前(なまえ)は……なんだっけ?)」

「――ラウラル・ジーン・コントゥル伯爵(はくシゃく)でス――」

 そんな名前(なまえ)だったっけ?

 すっかり(わす)れてたよ。


「――そレが、どうカしましタか?――」

「(いやさ、伯爵(とのさん)(あたま)には、狐耳(きつねみみ)が付いてなかったなーと(おも)って)」。


 ――ドガァァン!

 ――バキゴガカァン!


「なんだろ?」

地上(うえ)(ほう)が、(さわ)がしいですね?」

 となりに(すわ)るリオが、(くび)(かし)げた。


 ――ォンヴォン♪

 ソレは、突然(とつぜん)あらわれた。

 木さじ食堂(しょくどう)女将(おかみ)が、木さじを振りまわすときの剣筋(けんすじ)

 目で追えない速度(そくど)を持つ、いくさ場ではあまり会いたくない(たぐい)いの。


 伸びすぎた(ひつじ)(つの)か、たばねた山菜(ぜんまい)みたいな空飛(そらと)ぶ――魔法杖(まほうつえ)

 それをぼくは、見たことがあった――一日前(いちにちまえ)に。


「リカルルちゃぁん――――♪」

 リオと(おな)じくらいの(とし)

 つまりリカルルと同年代(どうねんだい)女性(じょせい)が――『ルードホルドの魔法杖(まほうつえ)』――に乗っていた。


「うっぎゃぁぁぁぁっ――――!? お、お(かあ)さまっ!? 一体(いったい)どこからお()きになられましたのーっ!?」

 まるで、町娘(まちむすめ)のような――リオが買い(もの)に出かけるときと、(おな)じような格好(かっこう)の。


 むぎゅりっ――――「ひぃさぁしぃーぶぅーりぃーねぇー♪」

 巨大(きょだい)(つえ)で、企画会議議長(きかくかいぎぎちょう)を踏みつぶしたのは。


「あらっ、リオレイニアちゃんもいるー♪」

 (ひと)(かお)(かたち)も、(あたま)(うえ)狐耳(きつねみみ)も――姫さん(リカルル)、そっくりだった。


「ご無沙汰(ぶさた)しております、奥方(おくがた)さま」

 リオが片足(かたあし)を引いて、(こし)を落とした。

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