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116:カブキ者(シガミー)、五百乃大角にたすけられる

「おはようございます、シガミー」

 目を開けたら、やさしい(こえ)


「おはよ……う?」

 真っ(しろ)(かお)が、こっちをじっと見てる。


「まったく、薬草(やくそう)夜通(よどお)(あつ)めていたというのは本当(ほんとう)ですか?」

 真夜中(まよなか)でも、町近(まちちか)くの草原(そうげん)なら、ソコまで危険(きけん)ではない。

 けど、(なん)(はなし)


「いくら、イオノファラーさまのおつかいでも、夜中(よなか)(まち)(そと)に出たらダメなんだからね?」

 むぎゅ――(はな)指先(ゆびさき)で押さないでよ。


「――えっ? なんだ? そう――なの?」

 かがみ込むレイダの指先(ゆびさき)を、つかんで退()かす。

「(そういうことになっているようです。命拾(いのちびろ)いしましたね)」


夜詰(よづみ)みの薬草(やくそう)がねぇー、世のため(ひと)のために必要(ひつよう)でしたぁ。そこで、あたくしさまは(かんが)えたのですわよ。えへん♪」

 レイダの(かた)に乗る、まるっこい生き物(ごしんたい)


「そっか、シガミーは薬草師(やくそうし)だったっけ」

「そういうことですねぇ~♪ 薬草(やくそう)専門家(せんもんか)であるシガミープロにお(ねが)いしましたー♪」


「シガミープロ……というのはよくわかりませんが――夜中(よなか)にひとりでというのは危険(きけん)で――」

「――はありませんよ、リオレイニア。迅雷(ジンライ)が付いているから、安全上(えんぜんじょう)問題(もんだい)はありません、きっぱり!」

 すげえ。五百乃大角(いおのはら)が、はじめて(やく)に立った。


「はイ。むシろ万一(まんいチ)(さイ)に、全力(ぜんりょク)迎撃(げいゲき)できルため、町中(まちなカ)よりモ安全(あんゼん)かもしレません」

安全(あんぜん)――は言い過ぎですよ、迅雷(ジンライ)。では今後(こんご)、やむをえず夜間採取(やかんさいしゅ)をおこなう(とき)は、かならず(わたくし)同行(どうこう)させてください」


「わかりました、わかりましたぁー! 以後(いご)ぉ、気をぉつぅけぇーまぁすぅーっ♪」

 両耳(りょうみみ)を押さえて、聞く(みみ)を持たない御神体(めしのかみ)

 相変(あいかわ)わらず、死ぬほどムカツクヤツだけど、こんなんでも(かみ)だから、リオも文句(もんく)は言えない。

 それでもリオのことは気に入ってるみたいだし、レイダとはいつも一緒(いっしょ)に居る。

 見かけが〝ねがみめんど〟とかなんとか言う、まるっこくて(ちい)さい姿(すがた)になったのは――まさに(かみ)(〝美〟以外(いがい))の采配(さいはい)だったのかもしれない。

 横柄(おうへい)態度(たいど)(ぎゃく)愛嬌(あいきょう)があるって、(みせ)(きゃく)にも受け入れられたみたいだしな。


「(おい、なんか……おとがめ無しだぞ? 奇跡(きせき)だ!)」

「(はい、さすがはイオノファラーです)」


「ふっふぅーんだ!」

 御神体(いおのはら)(とが)口元(くちもと)に、菓子(かし)の食べかすが付いてた。

 飯の神(こいつ)なりに、もらったお土産(みやげ)(ぶん)の――御利益(しごと)をしてくれたんだろうな。


 おきあがり――ぱん、ぱしん♪

 レイダの(かた)に向かって、柏手(かしわで)をうった。


   §


「そっか。きょうは、ぼくが仕込(しこ)みをしなかったから、売り(もの)串揚(くしあ)げがもう、終わっちゃったのか」


「「ぼくぅ――?」」

 ぼくの言葉(ことば)を聞いたふたりが、ぼくの(ひたい)におでこを押しつける。

 やめろ、やめて――「邪魔(じゃま)だよ?」


「ふたりとモ、シガミーは病気(びょうキ)でハありません。夜通(よどオ)し、(わたシ)と〝やサしい会話(かイわ)〟の練習(れんシゅう)をしたのでス」


「そうでぇ……そうなんだよ。レイダに(おんな)(きゃく)……女性(じょせい)のお(きゃく)さんが逃げちゃうでしょって(おこ)られたから、おれ……ぼくも(かんが)えたんだよ」


「ぶっふふふっ、こ、こんなのシガミーじゃない!」

 やっぱり、(わら)われた。

違和感(いわかん)が、とても良い仕事(しごと)をしていますね、クスクスクス♪」

 うるさいよ、リオレイニア。


「けど――いままでの、お(じい)さんみたいなしゃべり(かた)よりは、よっぽど素敵(すてき)!」

「ええ、シガミーは見た目だけはとっても可憐(かれん)なので――内面(ないめん)素敵(すてき)になれば、きっと猪蟹屋(シシガニャー)発展(はってん)武器(ぶき)になりますよ」


「おれぁ……ぼくは、どっちでもいいんだよ。(はなし)(かた)なんてさ」


(おとこ)の子みたいだけど、ぜったいこっちの方が良いよ!」

 はしゃぐレイダの肩から、御神体(いおのはら)がころがり落ちる。


「はい、口調(くちょう)(あいだ)を取って、ニゲル青年(せいねん)(はな)言葉(ことば)真似(まね)ることにしました」


「あーほんとだ、ニゲルそっくり」

「ほんとうですね……(なん)(あいだ)かはわからないけれど」


「ぶっひゃひゃひゃひゃひゃひゃはやっ――――ソレまだやってたの!? ぷげら!」

 寝床(ねどこ)(ころ)がる、御神体(びのめがみ)(わし)づかみにする。

「うるさいよ? 『猪蟹屋(ししがにや)』の存亡(そんぼう)は、五百乃大角(かみさま)(めし)……ごはんの品数(しなかず)にも、(かかわ)わってくるんだからね?」

 五百乃大角(かみさま)をレイダに手わたす。


 振りかえる五百乃大角(ごしんたい)

「いーじゃない、ボクッ()。シガミーのお(みせ)猪蟹屋(ししがにや)を盛りあげるには――まず、シガミーを大々的(だいだいてき)に売り出すことに、賛成(さんせい)のひとぉー?」


 白いの(リオ)と、子供(レイダ)と、御神体(いおのはら)と、その眷属(ジンライ)挙手(きょしゅ)


   §


「こりゃ、どういう格好(かっこう)なんだい?」

 レイダとお(そろ)いの一張羅(いっちょうら)

 橙色(だいだいいろ)(ぬの)(かた)から下げた。


「あらぁんっ、どーしたのコレ? (ちょう)かわいいっ!」

 しまっておいた帽子(ぼうし)を、勝手(かってに)梅干し(いおのはら)が引っ張りだした。


「「「「(ちょう)かわいい!」」」です、シガみー」

 よせやい、迅雷(ジンライ)クンまで、なに言ってんだ!?


 姿見(すがたみ)(うつ)る、ぼくの姿(すがた)は――なんだろう。

 猫耳(ねこみみ)が付いた神楽舞(かぐらま)いの巫女装束(みこしょうぞく)みたいだった。


猫頭(ねこあたま)(ひと)たちの、お(まつり)り……猫祭(ねこまつり)でもするの? 歌舞伎(かぶき)すぎだよ」

 姫さん(リカルル)くらい(はな)があるなら、着こなせるだろうが。

 こりゃ、派手(はで)すぎる。


「「カブキー?」」

「シガミーの(くに)の……なんだっけ、伝統芸能(でんとうげいのう)? お(まつ)り?」

「「お(まつ)り?」」


「はイ、歌舞伎(カブキ)と呼ばレる、色鮮(いろアざ)やかナ衣装(いシょう)や、派手(はデ)音楽(おンがく)や、奇抜(きばツ)(おド)りをたのシむ(もヨお)しデす」


「へぇぇーっ♪ なによその(たの)しそうなの。そんなの聞いたら、(まち)総力(そうりょく)を挙げて開催(かいさい)するしかないでしょう♪」

 よく(とお)(りん)とした(こえ)がした。

 (まど)が開いてて、派手(はで)(かお)がコッチを見てた。

歌舞伎/歌舞伎踊。歌舞伎劇。異様な身なりで自由に振る舞う〝傾く〟の連用形から。

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