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110/743

110:伝説の職人(シガミー)、包囲される

「では、まことに(もう)(わけ)ございませんが、何箱用意(なんはこようい)できるか、いまいちどギルド(ちょう)確認(かくにん)してきますので――」

「――あ、じゃ、その(あいだ)に、女神像(めがみぞう)参拝(さんぱい)したいんだけど」


「はい。ではコチラにどうぞ」

 ぱたん――長机(カウンター)一部(いちぶ)を押しあげ広間(フロア)に出てきた受付嬢(ルィノ)が、ほそい路地(ろじ)案内(あんない)してくれた。


「ではコチラに、なりますぅ」

 (した)(ぱら)が出ていない、女神像(めがみぞう)(まえ)まで来た。


「スキルの収得(しゅうとく)もしたいので、すこし時間(じかん)がかかっても良いですか?」


「えっ、あんなにレアスキルだらけなのに、まだスキルを取るポイントがおありなのですか!?」

「いえまあ、はい」

 コレは嘘ではない(ある)のだから、仕方(しかた)がない。


「で、でででで、っでででは、わたぁしわ、ギルド(ちょう)確認(かくにん)したい(こと)がございますのででで、ごゆっくりどうぞ」

 〝で〟が(おお)いな。

 (かお)を引きつらせた受付嬢(ルィノ)が、ほそい廊下(ろうか)をもどっていった。


   §


迅雷(ジンライ)クン」

「――なンですか、シガみー――」

「いろいろ――やらかした気がしない?」

「――はイ。でスが、はじメて(おトず)れル(まチ)ですシ、仕方(しかタ)がありませン。次回(じかイ)に活かしまシょう――」


「だよね。よーし、じゃあ迅雷(キミ)女神像(コイツ)でやらなきゃいけない(こと)をヤッてくれ」

 うしろ(がみ)に刺さってた(ぼう)が、しゅるるるるっと(かみ)をほどいてフワリと出てきた。


 女神像(めがみぞう)背中(うしろ)(はこ)を開け、なかにとびこむ迅雷(ジンライ)


 ふぉん♪

『女神像端末#3312

 城塞都市オルァグラム内エリア統括データベース、

 ならびにライブラリ更新を開始します。

 更新終了まで 00:05:00』


「終わるまで、5(ふん)もかかるのか」

 チチチィーッ、カリカリカリッ――――ビュパァン♪


 返事(へんじ)はなく、(はこ)(なか)から(まえ)にも聞いた騒音(そうおん)が聞こえてきた。


「(やっぱりソレうるさくない? 受付嬢(ルィノ)が居ないから良かったけどさ)」

 ふぉんふぉふぉん、シシシシッ。

 ふぉふぉふぉふぉふぉふぉっふぉ――――ビードロになんかの羅列(られつ)が――はやくて読めない。


「ふう、(今夜(こんや)はもう(つか)れたよ。いますぐ(かえ)りたい)」

 迅雷(ジンライ)(あい)づちがないと、超暇(ちょうひま)だな……(そと)も見えないし。


 この通路(つうろ)には、(まど)のたぐいは一切無(いっさいな)かった。

 ギルドの建物(たてもの)が、ガムラン(ちょう)(ばい)はある(ひろ)さなので、似た構造(かたち)をしていても、通路(つうろ)の向こうは(そと)ではなく(べつ)部屋(へや)があるんだろな。


「まあいいや。おとなしく、めだたないようにして、売れるだけでいいからゴーブリン(いし)を売ろう。そしてすぐ(かえ)ろう」

「――そうでスね。イオノファラーの食費(しょクひ)(カせ)がなイといけませんからね――」

 迅雷(ジンライ)がしゃべったと(おも)ったら――――五百乃大角(いおのはら)のことをすっかり(わす)れてた!


「――なニか、重要事項(じゅうようジこう)でスかシガミみー?――」

 ある意味(いみ)――重要(じゅうよう)だ。

 コレを(わす)れて五百乃大角(いおのはら)にへそを曲げられたら、また女将(おかみ)のさじ食堂(しょくどう)まるごとぜんぶ(・・・・・・・)食い(つぶ)さないとは言い切れない。


「(名物(めいぶつ)だ。屋台(やたい)がやってるから、なんでも良いから、みつくろって買っていかないとな)」

「――そうデした。(あジ)吟味(ぎンみ)しないといけませンね――」

「(いーや。この(さい)(あじ)は二の(つぎ)だ。むしろまずいほど(たす)かる)」

「――それデはイオノふァラーの機嫌(きゲん)(そコ)ねるのデは?――」


「(いや、(かんが)えてもみろ。(まんが)(いち)うまいモンを買っていったらどーなる?)」

「――確実(かクじつ)に……〝おかワり〟を要求(よウきゅう)されマすね。。それほどオいしくなくて、かツ(おコ)らせない程度(てイど)のギリギリのサじ加減(かげン)……納得(なっトく)しまシた――」


『更新終了まで 00:02:32』

 あと半分(はんぶん)


「けっこう、かかるんだね?」

「――女神像(めがミぞう)のシスてムOSが二世代前(にせダいまえ)(もノ)なノで、そノ対応(たいオう)時間(じかン)が取られていマす――」


 ふぉふぉん♪

『動体検出 武器反応あり』

 んぁ!? なんかくるぞ?


 ほそい通路(つうろ)になだれ込む、大勢(おおぜい)人影(ひとかげ)

 (かべ)(とお)してみえる、その縁取(ふちど)りが(ちか)づいてくる。


 どかどかどかっ――――曲がり(かど)の向こうから大勢が詰めかける音。



「(なんだろ、ゴーブリン(いし)を売るときの作法(さほう)に、ひどい手ちがいでも有ったかな)」

「――エリあ統括(とうかツ)デーたベースの更新(こうしン)中断(ちゅうだン)しまス――」

 あ、女神像(めがみぞう)(わる)さしてるのがバレたんじゃ――


『更新終了まで 00:01:04

  >更新作業ーーーー中断しました』

 減っていた数字(すうじ)が止まって消えた。

 女神像(めがみぞう)背中(せなか)

 (はこ)(なか)から迅雷(ジンライ)が飛びだし――


 ヴォウォォーゥン、くるくるくるくるん、ザッシュ!

 ――うしろ(あたま)にもどった。


「――いいエ、すべテのデーたベースの更新(こうシん)は、〝女神(めがミ)食事(しょクじ)(さマた)げナい〟ことにもつナがる不文律(ふブんりつ)でス……アクセス作業(さギょう)(ジか)発見(はっケん)されなケれば察知(さっチ)さレる(こト)はアりません――」



「――ギルド(ちょう)相手(あいて)子供(こども)です!」

 受付嬢(ルィノ)の声が聞こえる。

「そんな(こと)を、言っている場合(ばあい)ではない!」


 どかどかどかっ!


 通路(つうろの)の向こうから(あらわ)れたのは、筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)甲冑姿(かっちゅうすがた)

 夜襲(やしゅう)も掛けられる、(にぶ)()(いろ)甲冑(かっちゅう)


「(あの(くろ)(よろい)(ひと)が、ここのギルド(ちょう)みたいだ)」


貴殿(きでん)が、伝説(でんせつ)職人(しょくにん)スキル所持者(しょじしゃ)というのは、本当(ほんとう)かっ!?」


「――金剛力(こんごうりキ)がつかえナいのが致命的(ちめいテき)でス。〝神力棒(しんりょくボう)〟ヲ解放(かイほう)すレば、一個師団(いっこシだん)無力化(むりょクか)すルことが可能(かノう)でスが、この距離(きョり)ダとギルドの設備(せツび)でアる女神像(めがみゾう)(こワ)すこトになります――」


 背後(はいご)女神像(めがみぞう)。目の(まえ)には冒険者(ぼうけんしゃ)たちと、その(おさ)

 (まど)もなく、(せま)通路(つうろ)に逃げ場はない。


「(お手あげか!?)」

 耳栓(みみせん)ごしに迅雷(ジンライ)に、(はな)しかけるのが精一杯(せいいっぱい)

「――現状(げっbじょう)打開(だかイ)すル試案(しアん)……ありマせん――」

 なにもできない。


「はーい! 不肖(ふしょう)、カラテェー。逃げも(かく)れもしませーん!」

 ぼくは観念(かんねん)して、両手(りょうて)(たか)く上げた。

 ごねてシガミーとして連れもどされるよりは、カラテェーとして不手際(ふてぎわ)謝罪(しゃざい)した方が被害(ひがい)がすくないと、(おも)ったからだ。


 スラァァァリ――――ジャキィィィンッ――――ガチャガチャガチャッ――――ブゥォォォォォン、ゴドガッシャン!

 抜き(はな)たれる、長剣(ロングソード)大剣(グレートソード)(ランス)戦斧(バトルアックス)


「――シガみー、(わタし)をつかいマすか!?――」

 うしろあたまが(ふる)える。

 破壊(はかい)される(こと)のないアーティファクトである迅雷(じんらい)が、自分(じぶん)使(つか)うかと聞いてきた。


 〝七天抜刀根術(おれのわざ)〟で(たたか)えって言ってるんだろうが――

「――だめだ。根術(おれ)が〝突き(・・)〟を(はな)てば、(よろい)簡単(かんたん)(とお)しちまう」


「(この場は、ルコルに(あいだ)(はい)ってもらうしかない)ルコルー、たすけてー!」

 必至(ひっし)渾身(こんしん)大声(おおごえ)を出した。


 (すず)の音のような(こえ)しか出ないが、なんとか広間(ホール)までは(とど)いたはず。

 領主(コントゥル)の名を出してもらえば、ひどいことにもなるまい。


   §


 追いつめた覆面幼女(カラテェ)(きぬ)を裂くような――「ルコルー、たすけてー!」。


 おどろいたギルド(ちょう)抜刀済(ばっとうずみ))ならびに冒険者一同(ぼうけんしゃいちどう)抜刀済(ばっとうずみ))が、背後(はいごを)を振り(かえ)った。

 背後(はいご)(なに)もないのを確認(かくにん)したギルド(ちょう)冒険者一同(ぼうけんしゃいちどう)受付嬢(ルィノ)が、(ふたた)覆面幼女(おれ)(ほう)を向いた。


「(こ、こりゃぁ、どういうこったぁ!? もう神頼(かみだの)みくれぇしか、手が(のこ)ってねぇ!)」

「――シガみー、イま神の名(・・・)を出しテは事態(じタい)が、より(・・)複雑化(ふくザつか)すル(おそ)れがアり、たいへン危険(きケん)でス――」


「(よ、ようやく迅雷(ジンライ)クンにも、五百乃大角(いおのはら)危険性(きけんせい)が、わ、わかってきたようだね?)」

「――じョ、上位権限(じょういケんげん)にヨり、ヒ、非公開(ひこウかい)でス――」


   §


 そのころ、ひとっこひとり居なくなった、詰め所広間(ギルドホール)


「クカァー、いまなんか聞こえた気がするニャ――むニャむニャ」

「スピィー、むにゃ? なにも聞こえなかったコン。(ひま)すぎて(ねむ)いコン――これじゃ深夜の昼寝(ノォトノーナノルン)コン――むにゃ」


 獣人族(じゅうじんぞく)二人組(ふたりぐみ)長椅子(ながいす)(すわ)ったまま、ねごとを言っていた。

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