表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/743

105:烏天狗(シガミー)、ニャミカがあらわれた

「な、なんでもないよ。そーいえばさ、〝真っ(くろ)〟じゃない(いま)格好(かっこう)だとぼくは、なんて呼ばれるんだい?」

 てきとうな(はなし)をして、ごまかす。


「うぅぅぅぅんとねぇー……〝食材(しょくざい)のルガ(はち)を狩りに(もり)に来た、ウェイトレスさん〟コォン?」


「(ウェイトレスっていうのは、女給(じょきゅう)さんのことだよね)」

「――はイ、シガみー――」

 〝(はち)を狩りに来た〟って言うのは、(かお)に巻いた黒布(くろぬの)をみて――〝(はち)よけ〟だと(おも)ったっぽい。


「じゃあ、ぼくも(・・・)――(ひら)たい手鍋(てなべ)とか持ったほうが、良いかな?」

 そう言った、ぼくの視線(しせん)を追いかけ、「なんのことコォン?」と振り向く狐耳(ルコル)


 (みせ)裏口(うらぐち)から、姿(すがた)をあらわしたのは――鉄鍋(てつなべ)をかぶって手鍋(てなべ)を持った、給仕服姿(ウェイトレス)


「ニャ、ニャぁんだ! こんな夜中(よニャか)にお(みせ)(ひと)が居るから、ドロボーかと(おも)っちゃったニャ――――」

 リオや姫さん(リカルル)くらいの、年頃(としごろ)だとおもう。


「にゃ、ニャミカが出た――――コォン!」

 ルコラ少年(しょうねん)長机(テーブル)を飛びこえ、しがみ付いてきた。

 そのつぶらな(ひとみ)が、恐怖(きょうふ)にゆがんでいる。


 〝ニャミカ(ウェイトレス)〟の視線(しせん)が、ルコルを素通(すどお)りして――なんでかぼくの(かお)黒布(くろぬの)を巻いてある)でとまる。

 そして、おろした手鍋(てなべ)を、なんでか(すたた)びもちあげた。


「――――ルコラコルラコントゥル! ア、アンタって(ひと)は、こんな夜中(よニャか)女の子(・・・)を連れこむニャんてぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 その全然怖(ぜんぜんこわ)くない、しゃらあしゃらした怒声(どせい)店中(みせじゅう)木霊(こだま)する。


 ふくれあがったしっぽ。

 (なべ)をつかむ、ふさふさした手。

 (ほほ)くらいまでだった毛皮(けがわ)が、ワサワサと伸びて(かお)のぜんぶを(おお)った。

「――彼女(かのジょ)はハーフ猫族(ねこゾく)のヨうです――」

 (いきお)いよく跳ねあがった猫耳(みみ)で――――グワララァン!

 かぶっていた鉄鍋(てつなべ)が落ちた。


「え、女の子(・・・)? そんなのいないコォン!? ここに居るのは冒険者(ぼうけんしゃ)の〝カラテェ〟だコォン!」

「じゃあ、そのウェイトレス姿(すがた)の子はニャぁに? ねぇぇ、ルル、ルルル、ルル、ルルルル――ルコラコルラコントゥル!」

 (ふる)えるあまり、〝ル〟がおおくなってる。

 〝ニャミカ(こっち)〟のほうが、姫さん(リカルル)親戚(しんせき)ぽくみえるな。


「カラテェは〝ボク〟って言ってたコン。あんなに(つよ)かったコン。(おとこ)の子……だコォン?」

 すがりつくルコル少年(しょうねん)


ぼくは(・・・)、いちおう(おんな)ってコトになってるけど、気にしないで良いよ?」

 なかみは、おっさんだからね。

 給仕服(きゅうじふく)(すそ)を、バッサバッサとはためかせてみせる。


「フニャニャァァァァ――――!」

 毛皮(けがわ)(おお)われ猫頭(ねこあたま)みたいになった〝ニャミカ(ウェイトレス)〟が、手鍋(てなべ)を大きく振り上げる!


「なんか、お取りこみ(ちゅう)みたいだし、ぼくは(もの)を売りにギルドに行ってみるよ――」

「――ゴーブリン(いシ)を売るマえに、女神像(めがみゾう)へノ参拝(さんパい)をオススメしまス――」


 ――――がしり。

 ふりむくとルコラ少年(しょうねん)が、ぼくの手をしっかりとつかんで(はな)さない。


   §


「こほん、失礼(しつれい)したニャ。〝ニャミカ・ミャニラウ〟ニャ。ルコラコル店長(てんちょう)(たす)けてくれてありがとうニャ♪」

 給仕服(きゅうじふく)(すそ)をつまみ、すっと片足(かたあし)を引く。

 正式(せいしき)礼儀作法(れいぎさほうだ)だ。かえさないわけにはいかない。


「えっと、ただの〝カラテェ〟です。ぼくも(たす)かったから、おたがいさまだよ」

 リオレイニアの振るまいを、ずっと間近(まぢか)でみてきた。

 ひととおりの、まねごとは出来(でき)てる……とおもう。


(われ)はルコラコル・ラ・コントゥル。このカフェ『ノーナノルン』の(あるじ)コォン♪」

 ルコルが(あたま)を下げたら、装備(そうび)できていない〝(きつね)帽子(ぼうし)【くすんだ濃黄色(のうおうしょく)】〟が(ゆか)に落ちた。


「こら、防具(ぼうぐ)はちゃんと装備(そうび)しなさいって、いつも言ってるニャ!」

 (ひろ)った帽子(ぼうし)を、ぎゅむぎゅむと狐頭(きつねあたま)に押しつける猫耳娘(ニャミカ)


(いた)(いた)い、さっきニャミカに(なぐ)られた、たんこぶが(いた)いコォン」

「あー、その帽子(ぼうし)さ。ぼくのせいなんだよね。あんまり(おこ)らないであげて」


「どういうことなのニャ?」

 シャキィンと猫爪(ねこつめ)が飛びでる。

 これはたしかに、すこし(こわ)いかも。


   §


『カラステング LV:14

 防具鍛冶職人★★★★ /上級修復/体力増強/伝説の職人

       /上級解体/上級鑑定/薬草採取/収穫量倍化/植物図鑑

 ――所属:』


 ダミーの木板(カード)を、ふたりに見せた。


「(上級鑑定(じょうきゅうかんてい)で、見破(みやぶ)られないかな?)」

「――わかりマせん。バレたら謝罪(しゃざい)し、正直(しょうじき)素性(すじょう)を明かしましょう。(なや)むだけ(そん)です――」


「〝上級鑑定(じょうきゅうかんてい)〟に〝伝説(でんせつ)職人(しょくにん)〟ニャ――――!?」

 ぱかーん――――〝猫耳娘(ニャミカ)〟の(あご)がおちた。

 ザワザワと毛皮(けがわ)がひっこんで、(かお)の真ん(なか)人肌(ひとはだ)にもどりつつある。


「けど、〝薬草師(やくそうし)〟って言ってなかったコォン?」

 ルコルが(かお)を近づける――――と、猫耳娘(ニャミカ)猫爪(ねこつめ)がニョキリと伸びる。

 (おどろ)いたぼくが一歩(いっぽ)はなれると、猫爪(ねこつめ)がスポンと引っこんだ。


「――おソらく彼女(かノじょ)は、ルコラコルの護衛(ごエい)のよウです。距離(きョり)を取ッて、刺激(しゲき)しないヨうにしましょう――」


「(そういうことか。了解(りょうかい))うん。ずっと〝薬草採取(やくそうさいしゅ)仕事(クエスト)〟をしてたから、(ひと)にはそう言ってる」

 (うそ)ではない。

「けど、〝防具鍛冶職人(ぼうぐかじしょくにん)〟ニャんでしょ?」


「まあ、いろいろあってね。ガムラン(ちょう)には、ものすごく(うで)が立つ職人(ちょくにん)がたくさん居て出番(でばん)がなくてさ」

 これも(うそ)ではない。工房長(ノヴァド)工房連中(こうぼうれんちゅう)(うで)一流(たしか)だ。


「ふぅん。それならコッチの(まち)工房(こうぼう)をひらけば、きっと引く手あまたニャー」

 (ひと)(かお)にもどった猫耳娘(ニャミカ)が、〝(きつね)帽子(ぼうし)〟を長机(テーブル)においた。

 そして、まるいのぞき窓(ビードロ)が埋めこまれた(はこ)で、ジロジロと(なが)めはじめた。

「(あの(はこ)は、なんだろう?)」

「――たダの調度品(ちょウどひん)ではナいようです。アーティファクトの反応(はんノう)がアります――」


「いやいやぼくなんて。防具(ぼうぐ)修理(しゅうり)をしたのは、さっきのが(はじ)めてだし」

 これも(うそ)ではない。


(ひと)には色々(いろいろ)あるものだコン。では(われ)のも見せるコォン」

 (わた)されたのは、木製(もくせい)のカード。


『ルコラコル・ラ・コントゥル LV:16

 薬師★★★  /薬効最大/初級蘇生術/病巣隔離

       /先制攻撃/等価原理概論/上級鑑定/茶器作成/茶葉熟成

 ――所属:カフェノーナノルン』


「――(先制攻撃(せんせイこうげき)等価原理概論(とうかげンりがいろん)(れイ)の〝(ひカ)手刀(しゅトう)〟に(かン)するスキルでス。収得(しゅうトく)しまスか?)――」

「(……スキルは消す事(・・・)出来(でき)るんだっけ?)」


「――いイえ、そのばアいは打ち消す効果(こうカ)を持つスキルを伸ばシて、対処療法的たいしょりょうホうてき(よワ)めるシか有りませン――」

「(それも、聞いてないんだけど。なら、なおさら(いま)は取らないよ。へたしたら使(つか)い物にならなくて、(たたか)うどころじゃなくなるかもしれない)」


「――はイ。了解(りょウかい)しましタ――」


「わー。いいな薬師(くすし)。ぼくは、それになろうと(おも)ったんだけどさ、なんでがよーく見たら、薬草師(やくそうし)でさ――」

「――シガみー!――」


薬草師(やくそうし)? 〝防具鍛冶職人(ぼうぐかじしょくにん)〟ニャんでしょ?」

 あ、また聞かれた。なんか(うたが)われてる?


 (くび)だけをこっちに向けた猫耳娘(ニャミカ)(ひとみ)が、(たて)にほそくなり――――チーン♪

 彼女(かのじょ)が手にしていた調度品(アーティファクト)から、(かね)の音が鳴った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ