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100:烏天狗(シガミー)、たまご運搬クエスト開始

(つく)りおきのプディングを、ぜ・ん・ぶ食べちゃうなんて――――ルコラコルラコントゥル! 今日(きょう)という今日(きょう)は、ゆるぅしぃまぁせぇん~かぁらぁねぇぇぇぇっ!」

 ルコラ少年(しょうねん)迫真(はくしん)演技(えんぎ)が、渓谷(けいこく)木霊(こだま)する。


 ルコルは城塞都市(となりまち)で、〝かぁふぇ〟という茶店(ちゃみせ)(いとな)んでいるらしい。

 まだ子供(こども)なのに(たい)したヤツだと(おも)ったけど、コッチも猪蟹屋(ししがにや)をやってるし――(たい)したことではないのかもしれない。


 (おと)もなく街道(かいどう)をはしる――椅子(いす)

 まるで(うま)のように駆ける姿(すがた)は、不気味(ぶきみ)だけど――――(うま)より(はや)かった。

 これなら、ふたりの用事(ようじ)を済ませても、(あさ)までにガムラン(ちょう)にもどれそうだ。


(みせ)品物(しなもの)を食べちゃった、ルコルがわるいよね?」

「いかにもコォォン♪」

 ぼく――烏天狗(カラテェ)肩車(かたぐるま)した狐耳少年(ルコラコル)が、なぜか得意(とくい)げだ。

 釣り合い(バランス)がわるいはずの椅子(いす)は、(たお)れもせずに(すす)んでいく。


 給仕係(きゅうじがかり)(おんな)の子に(おこ)られる――店主(ルコル)

 レイダの(かお)(おも)い浮かんだ。


「どこも、(みせ)内情(ないじょう)はおんなじだなぁ」

「なんかいったコォン?」

「なんでもない、なんでもない。たまごが取れる場所(ばしょ)は、渓谷(けいこく)(はず)れにあるのかい?」


「そだよ。このまま(すす)むと、沼地(ぬまち)との(さかい)(ちいさな)さな(もり)がある。そこに(たまご)がよく取れるとうわさの巣があるコォン」

 ばさり――取り出されたのは、巻いた(かみ)


 ぶわっさっ――――あああっ!

 (かぜ)に飛ばされうしろに飛んでいく、(ひろ)げられた(かみ)


 ヴッ――――じゃりぃん♪

 ぱさり。

 とっさに出した錫杖(しゃくじょう)で、飛んだ(かみ)をからめとる。


「はい」

「あ、ありがとう――カラテェ。あぶないところだったコォン♪」

 コッチを見上げようとする狐耳(ルコル)

「あわあわ、落ちる落ちる。(まえ)を向いてて、(まえ)を――」

 長手甲(ながてっこう)高下駄(たかげた)もない(いま)烏天狗姿(すがた)じゃ、投げ出されたらケガくらいしそうだ。


「ごめんごめん。こんどは飛ばされないように――そぉっとコォン」

 (ひろ)げられた(かみ)を、灯りの魔法(ひかりのたま)が照らす。

 (かみ)にはモコモコした(なに)かが描かれていて、そのウチの何カ所(なんかしょ)かに、(しるし)がつけられている。


大卵(おおたまご)が取れるのは、この三カ所(さんかしょ)だコォン」

「この地図(ちず)は、(たし)かなのかい?」


「1パケタもした情報(じょうほう)コォン。まちがいないコォン♪」

値段(ねだん)関係(かんけい)ないとおもうけど――(すく)なくともさっきの一個(いっこ)は取れたってことだね」

「そう、大事(だいじ)なのはソコだコォン♪」


 スタァン――――不意(ふい)椅子(いす)がとびあがる!

 はしる椅子(ルコルのつえ)は、(たて)に揺れることなく、地をすべるように移動(いどう)できる。


「うわっとととっ!?」

 はずむ狐耳(ルコル)――投げ出される烏天狗(ぼく)

「あっぶねぇ――――!?」

 馬車(ばしゃ)(わだち)(ふか)くなった(ところ)が、一瞬(いっしゅん)足下(あしもと)に見えた。


 カッシャン――――スポン!

 出しっぱなしだった、錫杖(しゃくじょう)(さき)

 鉄輪(わっか)椅子(いす)の背もたれに、引っかけた。


「だっ、だいじょうぶコォン!?」

「だいじょうぶだよ、このまま(すす)んでいーよ」

 魔法の杖(いす)のあまりの速度(そくど)で、はためく(はた)のようにぶら下がる烏天狗(からだ)

 (かお)(そら)を向いてるから、夜雲(よぐも)が晴れてほしが(またた)いているのが見えた。


 (ほし)見上(みあ)げるたびに、ついつい(かたち)確認(かくにん)してしまう。

 この(ほし)(ならび)は、日の本(ぜんせ)では見たことがないものだ。


「クケェェェェェェ――――ッ」

 渓谷(けいこく)上空(じょうくう)を、(くび)二本(にほん)ある大鷲(おおわし)が、飛んでる。

 あれは、ぼくたちをつかんでいたのとは(べつ)のヤツだ。


「(どう迅雷(ジンライ)? 金剛力(こんごうりき)をはやくなおす目処(めど)は、付きそうかい?)」

「(いいえ、SDK(エスディーケー)複製(コピー)はやはり不可能(ふかのう)な――)」


「む、暗殺者(アサシン)気配(けはい)コォン!? くおりゃぁー」

 ぶら下がったまま狐耳(ルコル)をふりむくと、またもや手刀(しゅとう)炸裂(さくれつ)していた。


「(確実(かくじつ)(わたし)念話(ねんわ)反応(はんのう)しています)」

 姫さん(リカルル)とおなじだ。

 狐耳(きつねみみ)がピクピク(うご)いているから、度を超えて(みみ)が良いのかもしれない。


「(貴族(きぞく)暗殺対象(あんさつたいしょう)になりやすいので、アーティファクトの特殊(とくしゅ)作用(さよう)(たい)する、(なん)らかの防衛術(ぼうえいじゅつ)収得(しゅうとく)している可能性(かのうせい)があります)」


 けれど〝先制攻撃(わりこみ)〟で繰り出された手刀(こうげき)では、(とお)くてぼくに(とど)かない。

「くぉりゃぁー」

 なにもない背後(はいご)をしきりに手刀(こうげき)する、お貴族さま(ルコル)

 ひかり(かがや)いたときの威力(いりょく)は、とんでもなかったけど――当たらなければ効果(こうか)発揮(はっき)しない種類(しゅるい)のスキルらしい。


「(狐耳(きつねみみ)種族(しゅぞく)のまえでは、迅雷(ジンライ)からの念話(ないしょばなし)は止めよう。かわいそうだし)」


「――はイ、シガみー。耳栓(みみせン)経由(けいユ)に切りかエました。8秒後(びょうゴ)渓谷(けイこく)を抜けマす――」


「(じゃ、そろそろ(はじ)めようか。金剛力(こんごうりき)じゃないふつうの手甲(てっこう)下駄(げた)は、出せるかい?)」


「――はイ、可能(かのウ)でス。あ――」

 がらん、ごろろろっ――――


 金剛力(こんごうりき)でもある迅雷(ジンライ)機械腕(かいな)は、品切(しなぎ)(ちゅう)だ。

 魔法の杖(いす)ですっ飛んでるさなかに(もの)を出せば、とうぜんその場に取りのこされる。


「(しかたないなぁ――)」

 迅雷(ジンライ)は、神々(かみがみ)知恵(ちえ)をもつ(すご)(ぼう)だけど――ときどき間の抜けたことをする。

 すぽん――――錫杖(しゃくじょう)をねじって、背もたれに引っかかった鉄輪(わっか)をはずす。

 ずざざざぁぁぁぁ――――()ってぇぇっ――――ごろごろごろろろぉぉぉぉっ!


 そうだった、金剛力(こんごうりき)がないぼくは――LV(レベル)があるだけの子供(こども)だった。

 底上(そこあ)げされる体力(たいりょく)には、限界(げんかい)がある。ケガはしなかったけど。


「――注意力(ちゅうイりょく)が足りませンね、シガミー。気をつケてください――」

 うにゅぬぅ――金剛力(こんごうりき)にたよりきったままだと、(いのち)にかかわる。

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