1:輪廻転生、地獄ではない
ここはどこだ?
ゴツゴツした岩場で目覚めた。
「ぬぅ? おれぁ香味庵の土間で寝てたはずだぁがぁ?」
香味庵とは、最近、俺がねじろにしてためし処で――
「――なんだぁ、このキンキンうるせえ声わぁ?」
ふか酒が祟ったにしちゃ喉が痛くねえし、二日酔いもねぇぞ。
――ごろん♪
なんだ?
それは大樽みてえな大きさで、ひとかかえはあった。
「なんでぇこの、やたらとでけぇ酒瓶わぁ~」
葉っぱみたいな小さな手が、香味庵の名入りのソイツをしっかりつかんでる。
こんなでけえモン、店にあったか?
あったとしても、あのドケチ女将が出すはずねえ。
――トップンタップン♪
小さな手が自在にうごき、中身を確かめた。
「うひひ♪ まるまる入ってんじゃねーか……よ?」
ってか、まてまてまて。
この違和感――ひょっとして。
体に巻き付いたぼろ布をめくる。
「ひょえわぬへひぉらろぃーーーーぉ!?」
アオォォォーーーーーーン!
遠くでオオカミが遠吠えしてやがる。
「こいつぁ、おれの体じゃねぇ!」
酒瓶をかかえたまま、あたりをみまわす。
川でもありゃ、自分の姿を確認出来ると思ったんだが、あたりは岩だらけだ。
「酔ってねえし、あの世でもねえ! 狐狸妖怪に化かされてんのか!?」
体をまさぐると、あまりのくすぐったさに――
「――きゃははははっ♪」
鈴の音みてえな、軽やかな声がでた。
「はぁはぁはぁ……まったく天罰でも当たったのか?」
身に覚えがありすぎて、〝輪廻転生〟なんて言葉にも信憑性がでるってもんだ。
近くに丘があった。あそこからなら川か町でも探せるかもしれねえ。
「はぁひぃはぁ、うへひぃ~。罰当たりにしちゃ~、地獄でもねぇみてぇだが――」
こいつぁ、だめだ。百歩ゆずってガキなのは仕方ねえとしても、女ってのはいただけねえ。
武芸百般につうじ、七天抜刀根術免許皆伝の体躯が見る影もなかった。
ゴロゴロゴロォォ――アオォォォォォン!
遠くで雷鳴がとどろきだした。
遠吠えも近づいてきてやがる。
ココがどこら辺だかわからねえが、早いとこ香味庵に――
「いや、この姿で戻っても、入れてくれるたぁ……とても思えん」
酒瓶を抱えた女の童が石造りの奇っ怪な町を見つけたのは、あたりが夕焼けに染まったころだった。
午後9:19 · 2022年7月14日·Twitter Web App
の自ツイートを元に、衝動的に初めてみました。
よろしくお願いします。