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*すみません。ちょっと体調を崩して予約投稿できませんでした(汗)。もう少しで完結です!引き続き読んで頂けたら嬉しいです(*^-^*)
戦後の処理が終わり、我が国はスコット王国に対して多額の賠償金の要求を突き付けた。侵略しようとして敗れたスコット王国が拒絶できるはずもない。
今後は平和条約を締結し、二度と互いに侵攻はしないという盟約書に調印することになった。
多くの軍費を投入しながら何ら戦果を得られず、多額の賠償金を支払わなくてはならないスコット王国の今後は苦難の道になるだろう。
責任を取って国王が退位するらしいという噂もある。
いずれにせよ対外的な問題は文官たちの前に書類の山を幾つも築いたが、取りあえずは解決の方向に向かっている。
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問題は国内の内通者だ。
国を裏切り、スコット王国と密かに通じていた人間がいる。
王宮の諜報や密偵が、スコット王国が侵攻の準備をしていることを探れなかった。何者かが邪魔をしていた可能性が高い。
当然ながら、容疑者ナンバーワンはギャレット侯爵である。
妻がスコット王国の王族であることに加え、外務担当の大臣として長年スコット王国は友好国だと主張してきた。
侵攻の切っ掛けとなった代表団の表敬訪問の手配もギャレット侯爵が率先して行ってきたものだ。
さらに王家の諜報がスウィフト領に辿り着けなかったのはギャレット領で襲撃されたからだと考えられる。
現にブレイクたちはギャレット領で多くの襲撃を受けた。
しかし、ギャレット侯爵は真っ向から反駁した。
スコット王国が侵攻していた間、ギャレット領から攻撃をしたことはない。もし、自分が裏切りスコット王国と通じていたのなら、スウィフト領を挟み撃ちにしていただろう。
挟み撃ちにあっていたらスウィフト領はあっという間に潰されていたはずだ。
だから、裏切っていない、証拠があるなら見せてみろとギャレット侯爵は開き直った。
確実にスコット王国が勝つかどうか様子見していたんだろう、とブレイクは内心で突っ込んだが、証拠が足りないと言われればその通りだ。
例えば、家宅捜索できれば何か証拠が見つかるかもしれないが、仮にも高位貴族の屋敷だ。家宅捜索の令状を得るには状況証拠だけではなく物的証拠が必要だった。
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「本当にウィロー様が仰っていた通りね。ギャレット侯爵はなかなか尻尾を出さないわ」
アリシアが嘆息まじりに呟いた。
ギャレット侯爵の前妻のウィローの話を思い出す。
「まぁ、そうだな。大々的な家宅捜索が出来れば何か見つかるかもしれないが、曲がりなりにも高位貴族の屋敷に入るには、捜索の根拠となる証拠が必要だ。麻薬、魅了の薬、人身売買、密偵たちの誘拐、監禁、拷問、殺害など……色々やっていそうなんだがな。物理的な証拠が出ない。ホント奴は狸だ」
ブレイクもうんざりした顔で文句を言う。
「それに指紋の捜査に備えて、常に手袋をするようになったって聞いたぞ。本当に用心深さはたいしたもんだ」
変なところに感心しているジョシュアも会話に加わった。
「そうなんですね……。では、もう物理的な証拠は難しいでしょうか……」
アリシアも肩を落とす。
「……ま、状況証拠はある程度あるんだ。だから、奴の周辺を徹底的に調べて家宅捜索できるくらいの証拠を積みあげられるように頑張るよ! 王宮の法務官は優秀だからな」
ブレイクはあくまで前向きで諦めるつもりもないようだ。
「そうですわ! 諦めてはいけません! きっと突破口が見つかりますわ」
ブレイクはアリシアに微笑むと言葉を続けた。
「ところで、スウィフト領のマシュー・ゴードンは今、戦後の後片づけで忙殺されていて、しばらく領地を離れられないんだが、いつか落ち着いたらアリシアに領地に来て欲しいと言っていた」
ブレイクの言葉にアリシアは頷いた。
「はい。私も行きたいです。殿下にはマシューからの手紙も届けていただいて、本当にありがとうございました」
「マシューは君のお父さんが亡くなった後も毎年クリスマスプレゼントを贈っていたそうだよ。アリシアの直筆と思われる礼状が毎年届いていたから、君が酷い目に遭わされていることに気がつかなかったと後悔していた」
「はい。マシューの手紙にも謝罪の言葉がありました。それにしても、誰が私の筆跡を真似られたんでしょうね? スウィフト家にそんな器用な人がいたかしら? 継母も継姉もあまり字が上手なタイプではないし、我が家には祐筆もいなかったから……」
それを聞いたブレイクが目を見開いた。
「……それは、もしかしたら突破口になるかもしれない!」




