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「僕は先祖返りで、聖女の髪と瞳の色を持っているんだが、それだけじゃなくて、僅かだか彼女の能力も受け継いでいる。つまり、普通の魔力以外に特殊な能力があるんだ」


この世界の人間は、生まれつき大小はあれど魔法を使える魔力を持っている。しかし、未来視のような予知能力は聞いたことがない。


「能力……未来視ということですか?」


アリシアは驚いてブレイクの顔を見つめた。


「いや、そんなに確かな能力じゃない。聖女に比べたらゴクゴク弱いものだ。能力ともいえない。ただ、僕は人と会うと、その人の周囲に色が見えるんだ」


「色?!」


「ああ、幼い頃はみんなも見えているものだろうと思っていたんだが、家族や乳母に尋ねてもみんな怪訝な顔をするだけだ。僕以外に見えない、ということに徐々に気がついて、人に言わないように気をつけた。不気味がられてしまうからね。王子としても奇矯な振る舞いは避けるべきだ。そのうちに色の特徴が分かるようになってきた」


「色に特徴があるのか?」


ジョシュアが首をひねる。


「ああ。例えば、緑は穏やかで害意がない人間。青は味方。信用ができる人間だ。野心のある欲深い人間は赤。黒は悪意や殺意。危険信号は黒と赤が入り混じった色だ。確実に僕に敵意と害意を持っている」


「まぁ!」


あまりに具体的でアリシアは驚いた。


「そのおかげで助かったことも多い。僕の家族は、僕が異常に勘がいいことを分かっていて、信頼してくれているんだ」


「そうか。良かったな。ちなみに俺たちにも色はあるのか? 自分では黒でも赤でもないつもりだが!」


「君たちは二人とも緑と青が混じっているよ。とても清々しい綺麗な色だ。最近は青が強くなってきて、僕は嬉しいと思っているんだ」


ブレイクの言葉にジョシュアの顔が赤くなった。とことん照れ屋らしい。


アリシアもブレイクが自分たちを信頼してくれることが分かって嬉しかった。


すると、一転してブレイクの顔が深刻になった。


「しかし、最近黒と赤を見かけたんだ。それも気分が悪くなりそうなドス汚れた色だった」


「どこでですか!?」


「合同演習の時にアリシアも会っただろう? ギャレット侯爵夫人だ」


「え!? あのスコット王国の王女でいらした・・・?」


「ああ、そうだ。だから、心配なんだ。僕は彼女が王女だった頃にも会ったことがあるが、あんなに禍々しい色ではなかった。ギャレット侯爵は以前から赤が目立ったが黒はなかった。それなのに、合同演習の時には黒が混じってきていた。夫人に至っては、ほぼ真っ黒の中に赤が混じっている感じだったな」


「……それは、スコット王国の姿勢を反映していると思うか? この数十年はずっと友好国だったはずだが」


「そこが気になるところだ。スコット王国が友好国だと言い続けているのは誰だ?」


「…………外交担当の大臣……ギャレット侯爵だ」


ジョシュアが呆然と呟いた。


「ああ、もし、ジョージ・ギャレットが我が国を裏切り、スコット王国と通じていたとしたら?」


アリシアは突然気がついた。


「……邪魔なのはスウィフト領ですね。ちょうど、ギャレット領とスコット王国の間に挟まれています。スコット王国が国境を越えて攻め入るには、必ずスウィフト領を通らないといけない。スウィフト領で足止めを喰らったら、王都に辿り着くのは難しい」


ギャレット侯爵が欲しいのはスウィフト伯爵家が持つ領地か?


スウィフト領は辺境ではないが、スコット王国と国境を接する唯一の領地だ。


だから、常に国軍の兵士が駐留しているし、国境に沿って王宮の魔導師が設定した結界が張ってある。


しかし、スコット王国は友好国なので、それ程の緊張感はない。少なくとも王家は脅威だとは認識していない。


ブレイクによると、スウィフト領の領主代理/領地管理人マシュー・ゴードンに意見を聞こうと諜報や使者を送ったが、誰も戻ってこなかったという。


アリシアが送った手紙の返信もきていない。


「キナ臭いな」


ジョシュアが呟く。


「ああ。だから、僕はスウィフト領に行ってみようと思う。実際にどうなっているのかを確認したいし、それに……心配なんだ。どうにも胸騒ぎが止まらない」


「何か感じるのか?」


「ああ、今度スコット王国の訪問団が親善友好のために表敬訪問する。スコット王国から王都に来るためには必ずスウィフト領を通る。そして、その時は当然結界を解くことになるだろう? 訪問団を通すように父上はマシュー・ゴードンに通達しているはずだ」


「万が一、親善友好を装った訪問団が実は軍隊で武器などを持ち込んだら……と心配なさっているのですか?」


ジョシュアの言葉にアリシアは衝撃を受けた。

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