えいりんの話
むかしむかしあるところに小さな村がありました。
裕福とはいえないけれど、争いごとのないとても平和な村でした。
しかし、ひとつだけ悩み事がありました。
ここ数週間、頻繁に隕石が落ちてくるのです。
大小さまざまな隕石は、今まで村の人に被害を与えることはありませんでした。
ですが、建物の屋根が吹き飛んだり、目の前に急に落ちてくる隕石に、村の人々はとても困っていました。
ある日、農作業をしている若者が空を見上げると、隕石が落ちてくるのが見えました。
それは、今までに見たどれほどよりも大きく、異様な光を放っていました。
若者はすぐに村の人々にしらせ、皆んなで高台まで避難しました。
村の中心を目掛けてどんどん加速する隕石。
人々が落下する瞬間を覚悟したその時、一際鋭い光を放ち、辺り一面が真っ白になりました。
衝撃は感じず、ただただ白い光に包まれ、何も見えなくなってしまいました。
「ーーこちら612834☆☆応答せよ、応答せよ」
「ーーー」
「ーー???」
「ーーん?こちら612834☆☆!!上陸は成功した、応答せよ!!」
「ーーー」
え?まじ?
僕は612834☆☆。今回ミッションを任された天才スライムだ。
このミッションはまだ誰も挑戦した事のない凄く難しい事だけど、僕には問題ない。
なぜなら僕は超スーパー天才スライムだから!!
今まで誰も僕に勝ったことはないし、師匠も僕が一番だって言ってくれた。
"変身"だって、みんなの中で僕が一番上手にできる。
だからこそこのミッションを担当することになったのだ!
違う種族の言語をカンペキにマスターすることができるし、奴らの姿とか動作も一瞬で真似することができる。
要するに僕はとても天才ということだ!
超超天才なのだ!!
「それにしても、、どうして本部と連絡ができないんだろう、、。」
僕たちは心の中で念じたり、強く願って声に出すことで離れていても会話することができる。
とても優れたこの"テレパシー"というスキルを生まれた時から持っているのだ。
特に僕は能力値が高くて、回りを何か障害物に囲まれていても関係なくスキルを使うことができる。
事前の"実験"でも何も問題はなかったのに、、、。
「ーー○○○○○」
「ーー○○○○○○○○」
まずい、もう近づいてくる、早く隠れないと、、
この星の生物は警戒心がないのか??
「ーー○○だ○○○な」
「ーー○かも○○○○○ろう」
二足歩行する生物が、僕が着陸した所に何匹も現れた。
上空から観察していた時に想像していたよりもとても小さい生き物だった。
言語も聞き取れるし、もうすぐでカンペキに把握することができる。
ふむ、どうしようかな。
このまま隠れて様子を見るのも良いけど、、
パキッ!
「!!!」
「!!だ○○!!そこ○○いる○○○!!」
まずい、物音を立ててしまった!!
奴らがこっちに近づいてくる、、すぐに擬態しなければ!!
擬態する時の心得として特に注意されていたことがある。
ひとつ目は、相手をよく観察すること。
これは基本中の基本だから、誰でもすぐに身につけることができた。
対象をよく見て、そのまま真似することなんて簡単だからだ。
だけど、次が難しい。
ふたつ目に気をつけるべきことは、個性を出すことだ。
この世に全く同じ個体はふたつと存在しないからだ。
相手をよく見て、オリジナルを作る。
変えてはいけないところは変えずに、違うところは変えなければいけない。
みんなは苦手だったけど、僕は得意だった。
そしてさらに僕が天才と呼ばれる理由がもうひとつある。
それは、、、
「かくれてないで出てこい!!ーー??!?!なっ??!」
「だれだ!!ーーん??!?!」
「うわっ!!!」
「えっ??!?!」
そう、僕は、、
「おい、誰か知り合いか?!!?!」
「知らねーよ!!え、ちょっと待ってくれ!!!」
「おい!騒ぐなよ!!怖がってるだろ!!」
ひと目見ただけで、、
「君、大丈夫かい?立てる?」
「おい!抜け駆けすんなよ!!」
「俺こんなに可愛い子初めて見た!!!」
相手の好みの見た目に変身することができるのだ!
「はじめまして、みなさん。わたしえいりあんです。あの、ここはどこですか?」