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 王都にいた者は、全て復讐対象とする。

 非業の死から巻き戻り、神であるノヴァーリスと話してそう決意した時、アデライトはあることに気づいた。


(使用人達は、どうしようかしら?)


 そう、父・ウィリアムに仕えてこの屋敷にいる使用人達である。

 アデライトは王太子妃教育の為、リカルドの婚約者となった後、王宮で暮らすことになったが──それまでは世話になったし、アデライトが家を出てからも父に仕えてくれていた。


(とは言え、心から真摯に仕えてくれていたかどうかは、また別よね)


 斬首された後のことは解らないが、使用人の中には冤罪で殺された父とアデライトについて、あることないこと言って己だけは助かろうとした者もいたかもしれない。

 ……そこまで考えて、アデライトは宙に浮いていたノヴァーリスに尋ねた。


「あの、巻き戻る前、私達が死んだ後の使用人達について聞くことは許されますか?」


 自分に興味を持ち、時間を巻き戻してくれたのでその前の話を聞くのは良くないかもしれない。

 しかし、他の者達のように躊躇なく切り捨てることも出来なくて──尋ねたアデライトに、あっさりとノヴァーリスは答えた。


「ん? いいよ。逆に、それだけでいいの?」

「ええ、お願いします」


 それだけ聞ければ、十分だ。

 笑顔で頷いたアデライトに、ノヴァーリスも笑って口を開いた。



 翌日の夜。国王に伝え、正式に領地に戻ることになった父は、使用人達にそのことを伝えた。屋敷を手放しまではしないが、居住を領地に移すのでついてくるか辞めるかは任せるし、辞めるならきちんと紹介状を書くことも。

 そうしたら、何と領地に来てくれるのは侍女頭とその夫である庭師、そして主治医であるパウルの三人だけだった。侍女頭やミレーヌの母のように、家族も連れてきていいと伝えたのにである。

 もっとも、寝る前にノヴァーリスと話すアデライトは満足そうに微笑んでいた。


「ノヴァーリスに聞いた通りでしたね」

「お役に立てて何より」


 ベレス侯爵家は、あまりたくさんいても落ち着かないという亡き母の希望により、爵位の割に使用人は最小限だった。

 けれど、その中でもアデライトと父の無実を訴えたのは今回、領地に来てくれる三人だけで──それ以外の使用人達は屋敷から貴重品を盗んだり、命乞いや次の職に就く為にアデライト達の冤罪を肯定したと、ノヴァーリスが教えてくれた。元々、領地に戻るつもりだったがこうして篩もかけられて一石二鳥である。


「これで、心おきなく復讐出来ます」

「良かった」


 巻き戻って幼くなった顔に、強い決意を宿した鮮やかな笑みを浮かべるアデライトに、ノヴァーリスは満足そうに紫色の双眸を細めた。

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