表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/73

滑稽

 卒業パーティーの後、アデライトはリカルドにエスコートされ、学生寮へと戻ってきた。

 卒業はしたが、アデライトの領地は王都から馬車で二日ほどかかる。それ故、流石に卒業パーティーが終わり、夕方になろうとしている今から領地には戻れない。

 だからアデライトを含め、領地に戻る卒業生は明日から二日以内に退寮することになっている。


「ベレス侯爵には、先触れを送っておいた……明日は、私も一緒にベレス領に行って、君との婚約を申し込む」

「リカルド様……ありがとうございます」

「お帰りなさいませ、アデラ」


 こちらの了解を取らず決定か、とアデライトは微笑みながら思った。しかしリカルドが出てきて、アデライトが拒否をしなければ、彼女はすぐに王宮に招かれるだろう。

 そんなアデライトの考えを裏付けるように、不意にリカルドが学生寮の入り口で出迎えたエルマへと声をかけた。


「昔、母上に仕えていたな?」

「は、はいっ! さようでございますっ」


 言葉を遮ったリカルドに、けれどエルマは感激したように声を上ずらせて頭を下げた。サブリナではなく王妃に、と言ったのも王妃贔屓のエルマにとっては嬉しかったと思われる。


「これからは母上にもだが、今まで通りアデライト嬢に仕えて貰いたい……アデライト嬢? 明日以降、この者は君の領地ではなく王宮に戻そうと思うんだが」


 成程。婚約したら、一回目のように王太子妃教育を理由に王宮に住む――解ってはいたが、エルマは正式に王宮でのアデライト付になったという訳か。


「まあ……リカルド様、ありがとうございます。ぜひ、お願いします」

「……っ」


 リカルドの言葉にアデライトが頷くと、頭を下げたままのエルマの体が喜びに震えたのが解った。視界の隅のそれを見て良かった、とアデライトは思う。


(エルマを領地に連れていかずに済んで、本当に良かった)


 いずれ王宮に呼ばれるとしても、それまでは万が一にもエルマを逃がさないように、領地に連れていくつもりだった。しかし一方で、領地はアデライトにとって聖域なので、復讐対象であるエルマを連れていくのに、仕方ないと思いつつもわだかまりがあった。


「一回目は、卒業パーティー後にすぐ殺されたからね。でも、ある程度は予測出来るだろう? こいつら、単純だもの」


 傍らのノヴァーリスがそう言うのに、アデライトは微笑みながら答えた。


「ええ、そうですね……単純で、傲慢で、愚か。だからこれからも、今まで通り利用して堕とします」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ