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悪女と呼ばれた聖女が、聖女と呼ばれた悪女になるまで  作者: 渡里あずま


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声言

 ……ついに、ここまで来た。

 今日、アデライトは王立学園を卒業する。

 今までの学校行事は制服での参加だったが、卒業パーティーは違う。時間こそ昼だが卒業し、大人になったということで卒業生は礼装姿で参加する。

 そんな訳で巻き戻った今、アデライトも学生寮でエルマに手伝わせ、ドレスに身を纏っている。

 青いドレスは一回目の時のように既製服ではなく、オーダーメイドだ。しかし冬期休暇の時、婚約者のいない娘の為に両親がドレスを用意すると言ってくれて、アデライトは一回目の時に近いドレスをお願いした。

 巻き戻った今、復讐は当然だとしても今日、このドレスと父・ウィリアムを守ることがアデライトの目標だったが――ミレーヌが身ごもり、父を卒業パーティーに来させない理由が出来た。それでも父はアデライトのエスコートを気にかけてくれたが、一回目も一人だったし父を守る為にはそもそも卒業パーティーに参加させないのが正解だ。それ故、ミレーヌには本当に感謝している。


(これから、心配をかけるけれど……ミレーヌと、弟か妹がお父様の傍にいてくれるなら安心だわ)


 声に出さずに呟いて、化粧も終えたアデライトは鏡台の椅子から立ち上がった。

 一回目のサブリナと違い、節度のある付き合いを保っているが――学園内ではリカルドがサブリナではなくアデライトを想い、何かと尊重しているのは公然の秘密だ。だからアデライトが一人で行っても、惨めさは全くない。むしろ、リカルドに操を立てていると思われるだけである。


「それに、実際は一人じゃないよ……私が、いるからね」

「ええ、ありがとうございます。ノヴァーリス」


 宙に浮いたまま、背後から腕を回して囁いてくるノヴァーリスに、アデライトは笑ってお礼を言った。

 そして寮の部屋のドアを開け、学生寮を出るのをエルマに見送られながら、ノヴァーリスと二人で卒業パーティーの会場へと向かった。



 新入生の歓迎会も行った、大広間。アデライトと(見えていないが)ノヴァーリスが到着すると、先に来ていたドミニクとウラリーが婚約者から離れて声をかけてきた。二人の顔からは不安ながらも期待していることが見えたので、アデライトもまた気遣うような表情を『作って』声をかけた。


「ドミニク様、ウラリー様……どうなさったの?」

「アデライト様」

「サブリナ様が殿下ではなく、ロイド伯爵様にエスコートされてきたのです」

「何か起こるのではと私達、心配で」


 二人の言葉に、アデライトは驚いたように目を見開いて見せながらも内心、嗤った。どう理由をつけたかは知らないが、断罪するからこそサブリナをエスコートしなかったと気づいたからだ。

 そんな彼女達の耳に、リカルドの意気揚々とした声が届いた。


「サブリナ・ロイド! 王太子である私の婚約者という地位を笠に着た暴虐、もはや看過出来ん! お前との婚約は今、この場をもって破棄とする!」

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