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悪女と呼ばれた聖女が、聖女と呼ばれた悪女になるまで  作者: 渡里あずま


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思惑

 昨日の夜、全ての準備が終わったところでサブリナはわざわざ現れ、会場に飾られた氷中花に歓声を上げた。


「何て素敵なんでしょう……リカルド様、生徒会の皆さん、本当にありがとうございます!」

「「「…………」」」


 感激したように両手を組んで言うが、わざとらしくアデライトは外していた。リカルドや生徒会長が何か言おうとしたが、アデライトは無言で首を横に振って彼らを止めた。

 そして翌日、新入生歓迎会当日の朝。

 元々、今日の新入生歓迎会の為、生徒会役員はいつもより早く登校する予定だった。それは、手伝いであるアデライトも同様だったが――着替えを終えたところで、学園から連絡が入った。

 ……氷中花が、全て溶けてしまったと。


「エルマ。朝から申し訳ないけれど、話は通っているからハルティ商会に行って伝えてちょうだい……お願いしていた薔薇を、王立学園に搬入してほしいと」

「かしこまりました」


 領地の基本的な農作物は昔からのアスター商会に頼んでいるが、小麦や薔薇、それから薔薇を使った商品はハルティ商会に頼んでいる。だから今回も、領地から取り寄せた薔薇を店舗に預かって貰っていたのだ。


「それでは、行ってくるわね」

「……あの! お嬢様、これを!」


 朝食は食べられないが、仕方ない。そう思い、登校しようとしたアデライトに、エルマが紙袋を差し出してきた。


「こんなこともあろうかと、厨房に頼んでおきました。中には、焼き菓子が入っております。よければ作業の後、お召し上がり下さい」


 一回目ではなかった行動に、少し驚く。しかし王妃同様、は言い過ぎだとしても、従うと決めた相手にはこうして気を利かせるのだろう。


「ありがとう」

「恐れ入ります」

「行ってくるわ」


 アデライトが短く礼を言って受け取ると、エルマは嬉しそうに目を輝かせて頭を下げた。そんなエルマの横を通り、学生寮を出たアデライトに、隣で宙に浮いているノヴァーリスが言う。


「珍しく、役に立ってくれたな……生徒会の奴らが、会場に着いた」

「……良かったです。用務員や教員が見ているとは言え、念には念を入れたかったので」


 そう答えて、アデライトはこの時期にしてはきつい陽射しの下を歩き出した。



 登校し、会場に向かうとアデライト同様、学生寮に住む生徒会役員が二名ほど来ていた。リカルド達のように、自宅や王都にある屋敷から通学している役員も、もう少ししたら着くだろう。


「新しい花は、まもなく来ます。氷が溶けた花を、ひとまず避けましょう」

「お……我々がやるんで、アデライト嬢は新しい花が届くのをお待ち下さい!」

「ですが、人手はいくらあっても足りません。せめて、もう少し役員の皆様が来るまで……駄目ですか?」

「うっ……他の先輩方が来るまでですよ!」


 そう言ってアデライトが小首を傾げ、上目遣いで見上げると役員達は躊躇しつつも頷いた。

 そして片付けているうちに、まずはリカルド達生徒会役員が、次いでハルティ商会の者達がやって来た。やがて隣国の、小麦色の肌をした商人達が全て片付け終わり、アデライトが用意させた薔薇を飾り終えた時である。


「……酷い! あなたがわざと、氷中花を滅茶苦茶にしたんでしょう!?」


 怒りを露わにしたサブリナが現れ、アデライトを怒鳴りつけたのは。

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