見せてもらおうか、王国のYSの性能とやらを……
「皆様! 長らくお待たせ致しました! 本日の実況は私、広声機握って十二年! ランケと! 王国剣術道場、その師範! ラインでお送り致します!」
「……よろしく」
「それでは、本戦出場選手の入場です!」
歩いていけばいいのか?
「まず、一人目! 数多の男たちをその得物の沈めてきた斧使い! 予選敗者はこう言った……奴はまるで獣だ、と! 本能のままに戦え! 暴獣マオヴルフゥゥゥゥ!」
「うおおおおおぉぉぉぉぉ!」
めっちゃ叫んでる! そんな感じでファンサしてもいいのか! それなら……
「そして二人目! 貴族だからとナメるなよ! 一撃で落とされた者達は数知れず! さあ、コイツに勝てる奴は出て来いや! 鋭槍ズィルパーァァァァ!」
「ふっ……」
何アイツうぜぇぇ!
「三人目は! 何と! 学園生! それも、国王自らの推薦! 我らが期待の星、勇者トーゴー!」
「う、うおおおおお!」
勇者!? 聞いてないぞ! 名前からして、日本人か……接触する価値はありそうだ。
「続いて四人目! 武器など俺に必要ない。来るなら来い。俺が拳で受け止める! さあ! 予選で見せたあの力をより発揮してくれ! 破戒僧グリーゼェェェェ!」
「皆に神の加護があらんことを」
破戒僧て……
「五人目! なぜか勝ち進んだ酒屋の親父! 短剣をナイフのように扱い、まるでハムを切り落とすかのように、予選出場選手を蹴り落とした! 酒屋の親父ウィスキーィィィィ!」
「どーぞご贔屓に」
ウィスキーってそのままじゃん
「なんとも不思議! いつの間にやら立っていた男! 彼こそ、六人目の出場選手! 注目されることがただ苦手なだけらしい! 亡霊フルスゥゥゥゥ!」
「……ども」
次が俺の番か……よし! 準備完了!
「さてさてお待たせ致しました! 今大会ダークフォース! 予選の結果で、予選の言葉で! 数多の男が堕とされた! その姿はまさに閃光! 迅雷エルザァァァァ!」
「おいおい、いないぞ?」「何だ? 逃げたのか?」「何だと!? アイツに賭けたのに!」「おい! 空を見ろ!」「何だ何だ!?」「剣だ! 剣が落ちて来るぞ!」
ビリィィィン!
「ぐわっ!」「ま、眩しい!」
「何が起こっているのでしょうか!?」
「……来るよ」
今だ!
「いやいや、遅れてしまったのでな。つい、本気を出してしまったんだ」
どうだ! 決まったか?
「何という事でしょう!一本の剣が! 我らが迅雷となって舞い降りたぁぁぁぁ!」
「「「「「うおおおおおぉぉぉぉっ!」」」」」
「凄い……!」
どうだ!凄いだろう! もっと褒めるがいい!
「気を取り直して、八人目! 何と、滑り込みで参加し、そして勝ち残った! 誰もアイツの動きを捉える事が出来なかったそうだ! ここに来て匿名希望! ならば今だけこう呼ばせてもらおう! 神速ぅぅぅぅ!」
「ふん、最後は俺になりそうだな、クレーエ」
ザンテーメ……!? 何でここに!?
「シード枠の登場です! 語ることなどないでしょう! 私達は彼の事知っている! 崩壊のゾンマーァァァァ!」
「骨がありそうなのは三人か……」
アイツはこの中(ザンテーメを除く)で一番強いな……!
「そしてもう一人! そう! 私の隣にいるラインだぁぁぁぁ!」
「……びっくりした?」
「それでは! 順番決めと参りましょう! これこそ運命の時! さあどうなる! 一回戦! 三番対六番! 二回戦! 七番対一番! 三回戦! 二番対八番! 四回戦! 四番対五番! 誰がシードの二人と戦うのか! それは、この勝者のみぞ知る!」
斧のおっさんか……
「それでは、この後、一回戦、開始!」
「どういう事だ! ザンテーメ! 聞いてないぞ!」
「何がだ?」
「お前が出場するのと、勇者がいる事だ!」
「サプライズとでも思ってくれ」
だが、勇者か……どのくらいの強さなんだろうな?
少しくらいならバレないだろ。鑑定!
= = = = =
名前:神崎透轟
種族:人
Lv:26
HP:5320
MP:2460
筋力:360
体力:420
特攻:630
特防:550
俊敏:380
幸運:99
所持スキル
聖属性魔法5、聖剣2、剣術4、衝撃波1、見切り4、収納3、
聖鎧5、第六感Max、身体強化、秘技
称号
勇者、剣に愛されし者、幸運軌道、鈍感、真面目
= = = = =
そんなもんか……まあ、26だしな、しょうがないか……
「よろしくお願いします」
「……こちらこそ」
「選手同士の挨拶も済んだところで! 一回戦、開始!」
「負ける気は無いよ!」
「……うん」
どう仕掛ける?
「たぁぁっ!」
真っ直ぐ行った!? 馬鹿か!
「甘いよ!」
そりゃ、袈裟斬りなんて避けてくださいというものだしなぁ
これで終わりか……
「っ!? まだだ!」
「何!?」
あの角度で身を捩って躱した!? なんつー体幹してんだよ!
「てやぁぁぁ!」
「ガッ……!?」
「おーっと! なんという事でしょう! フルス選手気絶してしまった! よってこの勝負、勇者トーゴーォォォ!」
何だ? 今の違和感は……まるで相手の攻撃を読んでいたかのようだった……それに、アイツの攻撃、ただ当たっただけじゃ一撃で気絶するはずがない。何か仕掛けがあるはず……
= = =
幸運軌道
・振った剣、言葉、行動が、良い方向に行きやすくなる。これこそ、主人公補正!
= = =
第六感
・気配、殺気に敏感になる。不意打ちは無意味と知れ!
= = =
これか……どう対策しようか……
「ザンテーメ、お前から見てどうだった?」
「不可解な点があった」
「そうだよな」
「ああ、戦闘の素人が、一撃で気絶させることは、相当な能力差がない限り無理だろうが、あの二人にそれほど差は無かった」
やはりあのスキルと称号か……
何だ? 今の感覚、誰かに見られている? なんだか気色悪いな……
「一回戦、開始!」
「負ける気は無いよ!」
僕はこんなところで負けられないんだ! ロイエ王女のためにも!
「たぁぁっ!」
「甘いよ!」
外した!? まずい! いや、ダメだ! 弱気になるな!
「っ!? まだだ!」
どうにかして避けないと! 身体強化して、体を捩る!
ここだぁぁぁぁ!
「てやぁぁぁ!」
もう、立って来ない、よな?
ふう、疲れたぁ!
「それではトーゴー様、こちらへどうぞ」
「はい。分かりました」
次の相手はエルザさんか……凄く強そうだなぁ、でも僕は負ける訳にはいかないんだ!
「へっくち!」
「どうした?」
今のが噂されてる感覚か……
「いやぁ、誰かが噂してるみたいだな」
「お前、大丈夫か?」
「う、うるさいな!」
「そうか、じゃあ、決勝で会おうか」
「そうだな!」
「それでは二回戦出場選手、入場!」
行くか!
「おう、女、俺は容赦しねぇぜ」
「そうか、それは有難いな。相手も本気でなければ、まるで私が小動物を虐めているように見えてしまうからな?」
「ほざけ!」
「両者早速煽っていく! だが、エルザは素手だが大丈夫なのか!?」
「心配する相手を間違えているぞ? 実況」
「これには、暴獣、苛立ちを隠せない! どちらもヒートアップしたところで、二回戦、開始!」
どう来る?
「死ねやぁぁぁぁ!」
お前も真っ直ぐかよ! 単細胞か!
「遅い! つまらん!」
避けてからの、顔面ストレート!
「ぐぶぅぇ!」
「またしても一瞬で決まったぁぁぁぁ! なんという拳! 彼の顔は大丈夫でしょうか!? 無事なようです! 良かったですね!」
よし! それじゃあ、勇者対策を考えるとするか!
YS(勇者)