ダンジョンの掟破り
「ほう? そうでないなら、その力で我に示してみるがいい!」
「おおっと! 謎の女騎士、開始する前に辺りを挑発したぁ! これで負けてしまったら男達は黙っていないでしょう!」
何か変なこと言われた!
「それでは試合、開始!」
「おらぁ!」「倒れろクソアマぁ!」「抑えろ! ひねり潰せ!」「ヘッヘッヘ、今夜が楽しみだぜ!」
武器は刃の潰れた剣、というか沢山来すぎだろ! 全員じゃねぇか!?
「おっと七番フィールド万事休すか?」
えっと、ヴィンデはこんな感じのやってたよな?
「遅い! 模倣、神躁刃!」
「ぐえっ!」「ゲフ!」「ヒデブ!」「あべしっ!」
「何と、なな何と! 謎の女騎士、またしても謎の衝撃波を出し、七番フィールド終了! これは予想だにしない展開だぁぁぁぁ!」
「今のは! 剣術8で覚える技、神躁刃!? まさか使い手が勇者以外にいたとは……」
えっ!? 本当にアレで全員だったの!
もっと仲間の技試そうと思ったのに……
「そ、それでは、どうぞ、こちらへ……」
「うむ」
次はどんな武器使おうかな?
そうだ! パフォーマンスみたいなことしよっと!
「決勝に参加する際に、名前が必要のため、それに記入して下さい。あ、偽名でも結構です」
また名前か……そうだな……
エルザっと
「ありがとうございます。それでは、明日の本戦までご自由にどうぞ」
「了解した」
「おめでとう、主」
「いや、あまり楽しくなかったぞ」
「そうなのか? あと、その口調は?」
「ここでは私はエルザだ! ザンテーメもそれで頼む」
「ああ、了解した」
さてと、何しよっかな?
「ある、いや、エルザ、今日の宿に着いたぞ」
「そうか! ここが……」
普通の宿としか言い表せない。
「俺はこの後ギルドに行くが……聞くまでもないな」
「どこ行く! 何狩る!」
ダンジョン、ボス敵、毒キノコ!
「D級ダンジョンだ」
「ダンジョン!」
「まぁ、敵もさほど強くないため、楽しめるとは思えんが」
「いや、行くだけで楽しい!」
「そうか」
「流石王国、冒険者ギルドの大きさも桁違いだ……!」
「あまりはしゃぐな。行くぞエルザ」
「ああ!」
にしても、沢山いるなぁ
「ダンジョンに潜りたいんだが」
「はい! 承りました! お二人で行かれるのですか?」
「ああ」
「はい、こちら、通行手形となります。ここに、踏破した階層が記されるので、それが報酬の目安になります! 後、ダンジョン産のものの買取もギルドでやっておりますので!」
「感謝する」
「終わったか?」
「ああ、それでは、そこの転移門から行くぞ」
転移門!? なんていい響きなんだ!
「あ、待て!」
ここが、ダンジョン!
苔むした壁、ひび割れた床、ツルも生い茂っている。
「ここのどこかに階段がある。そこを何度も降りて、最後の部屋まで辿り着く。それが一連の流れだ。って何してる?」
「なあ、ダンジョンの壁とかって傷つけても治るんだよな?」
「? ああ」
それなら!
「どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
どうだ?
「よし! 床抜き成功! さあ! 行くぞ!」
「あ、ああ」
以外と深くまで衝撃波が行ったな。ここどこだ?
「今何階層だ?」
「……7階層だ」
「ここって最高何階層だ?」
「九階層だ」
「目の前のアレは?」
「八階層への階段だ」
……。
「行ってきまーす!」
「はぁ……。ミステル様が苦労する訳だ」
「ほら、行くぞ!」
「ああ」
「ザンテーメ! 2時の方向!」
「ああ」
そういった瞬間、
私の後ろにいた犬型の魔物は真っ二つになった。
「すげぇな、この切り口」
「痛まないことを意識しているからな」
「ふーん」
「どうした?」
「いや、何も」
「おい、アレが最下層に続く階段だ」
「もうダンジョン探索終わりか……」
「またくればいいだろ」
「そうだな!」
「では行くぞ」
「もちろんだ!」
デケェなこの扉!
「せーので行くぞ」
「「せーのっ!」」
ゴゴゴゴゴ
「開いた!」
「何か来るぞ!」
暗かった廊下は、青白い炎が辺りを照らし、今ではすっかり明るくなっている。
その廊下の奥には、逃がすものかという心が伝わるような瞳をこちらに向ける斧を咥えた牛が……
「Explode(爆ぜろ)」
爆発四散した。
「えっ?」
「ツノの回収もした。帰るぞ」
「えぇ? えぇぇぇぇぇ!?」
「どうした?」
「終わり?」
「ああ」
【ミノタウルスを倒し、経験値2680入手しました】
時差!
「帰るぞ」
「ああ……」
「もう終わったんですか!?」
「ああ。これが証拠だ」
「これは! ミノタウルスのツノと、最下層を記す通行手形……!」
「報酬は?」
「はいっ! ええと」
「いや、急がなくていい。自分のペースでやってくれ」
「はい!」
暇だ……
「ツノと踏破の価格を足してお値段、小金貨120枚です!」
「感謝する」
「あっ……」
その時! ザンテーメの手と彼女の手が触れていたのを私は見た! それも彼女は頬を赤らめていることにも気づいてしまった!
「ザンテーメ……罪な男だ……」
「? どういう意味だ?」
「いや、何でもないさ」
「そうか」
この鈍感系主人公が!
どうしよう……! あの人の手に触れちゃった!
「どーしたの? ルルらしくないなぁ。何かあった?」
「いや、何も、ナカッタよ?」
「ねぇねぇ、ミルちゃん」
「えぇえぇ、シリルさん」
二人して何ですかぁ?
「「恋ね」」
「こっ、こここ恋!? そ、そっそそそそんなはずありませんよ!」
「「図星ね」」
何二人で握手してるんですか!
「やったわ、仕事鉄人ルルちゃんにやっと春が来た……!」
「誰! 誰! お相手は!」
「いえ、そんな! ただ、あの人は……」
ザンテーメさんは……
「もしかしてさっきの……」
そ、そんな! あの人にはエルザさんが……
「女騎士さん?」
「エルザさんは違います!」
「え? 今、エルザって……」
「おいおい聞いたか?」「ああ、聞こえた」「エルザだってな!」「まじか……」「俺あん時思ったんだけどよ」「何だ何だ?」「すげぇ罵倒されてぇ」「解る」
な、どうしてみんな、エルザさんを? それに、変な人達も混ざってるし……
「あの、どうしてみんなエルザさんを?」
「ルルちゃん知らないの!? エルザって言ったら、今日の予選を僅か数十秒で終わらせて、一躍有名になった謎の女騎士よ!」
そうだったんだ……
「なあ! どんな感じだった!」「声は!?」「顔は!?」「いい匂いした!?」
「そんないっぺんに聞かないでください! 後、一人頭冷やしてから来てください」
「「「それで!?」」」
確か……
「声は綺麗で透き通るような声で、顔は見えませんでした」
「「「そっかぁ……!」」」
「で? まだルルから聞けてないんだけど、あっちの黒鎧の男?」
「っ!……はい……」
「わお。そうだったかぁ、あういうのが趣味かぁ」
「違います!」
あの人は、私に、冒険者なのに、心からの感謝の言葉をくれた……」
「何が違うの?」
「ひっ秘密です!」
明日も会えるかなぁ
「へっくし!」
「どうした? ザンテーメ。風邪か?」
「いや……誰かに噂されているようだ」
「解るのか?」
「なんとなくだがな」
「凄いな!」
「ふっ」