プロローグ
現代に似合わない大広間。
重そうで煌びやかな衣装。
フルプレートの鎧の騎士。
「おぉ、異界の勇者よ、北の大地に居座る魔王を倒し、世界を救うのだ?」
どうして、
どうしてこうなったんだ!?
「ゲロゲロッ!(ふざけんなああああぁ!)」
やめろ!やめろやめろやめろぉぉぉ! 近づいてくるなぁぁぁぁぁ!
「ゲッ。(ぐえっ)」
「宗也? ご飯できてるわよ?」
「あぁ、今行く」
あの日はウチの学校の夏休み明け最初の日だった。
あの時、もっと遅く出ていれば、こんなことにはならなかったのだろう。
「行ってきます!」
「車には気をつけるんだよ」
「分かってる!」
ワクワクして、気がつかなかった。昨日のことを覚えていれば良かった。
停電があったことを。
「ん? アレは何だ?」
キラキラ光っている物が道路に落ちていた。俺はそれが何か知りたくてつい、近づいてしまった。
この選択が、ああなるなんて、誰が予想出来ただろうか。
「キャァァァァ!」
「ほえ?」
高速で近づいてくる物に気づく頃には、もう遅かった。
(クソッ、結局アレが何か分からなかったじゃねぇか)
あの後、俺は、よく分からん所にいて、よく分からん女性と出会った。
それが、この後起こる最大の不幸の引き金だったのだろう。
「自分語りご苦労であった」
「うるせぇ、そもそも、アンタがあんな所へやったからだろ!」
「はて?何のことじゃ?」
コイツ〜! 人を殺しておいて、はて?何のことかな? だ!
「そもそも、勇者召喚の儀式にカエル突っ込んでどうすんだよ! 何のチートも持たせずに、王様の前! 俺は、行く世界について知りたいつった筈なのにどうしてそうした? もっと口で説明するとかあるだろ!」
「妾は、お主がこの世界について知りたいと申したから、口で説明するより手っ取り早い方法をとっただけじゃが? 何か知れたかの?」
「あぁ知れたさ! あいつらには、人の心がねぇってことがな! 普通、目の前に可愛らしいカエルが現れたら、普通逃がしたりするだろ! なのにあいつら、俺を掴んで絞めたんだぞ! あんなの、動物愛護団体が黙ってねぇからな!」
カエルとして行ったことよりも、一瞬で俺を絞め殺したことが納得いかねぇ。俺が先生だったら生物尊重の所を空白じゃなくバツ印入れてやる。
「じゃが、そんなことよりも大事なことがあるじゃろ?」
「そんなこと!? 動物愛護をそんなことって言ったな!」
「ええい、その話題から離れるのじゃ! 勇者召喚について考えてみるのじゃ。学年二位の順位を保ち続けたその頭は飾りか?」
勇者召喚、勇者召喚……そういえば、どうして俺は殺された? 人の心がないから? いや、違う。なろう小説と同じならば、一度召喚するとそれが死ぬまでできない? きっとこれだ!
「勇者召喚には、召喚した者が死ななければ、すぐに次の召喚ができないんだな!」
「うむ、まぁ、正解に近い答えじゃな」
「えっ、違うの!?」
嘘だろ!一年間学年二位の学力飾りだった、のか……
「正解は、説明するのが面倒じゃから脳に送り込んでおくのじゃ」
(こ、コイツ直接脳内に……!)
なになに? 勇者召喚の条件とは?
勇者召喚には二種類あり
・強い一人を呼ぶ。(一人しか呼べないが、強い現地民五十人程度の強さ)
・たくさんの強い人を呼ぶ。(強い一人より弱いが、現地民よりは強い)
俺は上だったのか。
それでそれで?
それぞれ再度行う為に
・呼んだ者が死ねば三日後に可能
・二十年後に可能
・どちらかを使用している際は、出来ない
なるほど理解。
「なぁ、今って」
「可能じゃ」
「最後まで言わせろよ」
「嫌じゃ。むむっ?」
「なぁ、どうしたんだ?」
「ほーう、ほうほう、ふふふ」
何だよ、気になるだろ!
「あっちを見てみるのじゃ」
あっち? なっアレは!
「健吾! 慎二! 中野さんと小峠先生! どうしてここに?」
「お主が向こうに行ったことで、お主に関係している者と向こうが繋がったのじゃ。つまり、あの者らが向こうに呼ばれる勇者ということじゃ」
何? あいつらが勇者?
「なら俺は、何だ?」
「うーむ、言うなれば元勇者じゃな」
はぁ!? ふざけんな! 元って何だ、元って、クソッ俺も勇者になって俺TUEEEEしたかった……
「そうじゃ! 忘れておった。お主を向こうに送ってやろうと思っておったんじゃった」
「本当か!?」
へへっ、向こうに行ったら何しようかなぁ、魔法使えるかなぁ、美味いもんあるかなぁ、エルフにドワーフ、リザードマン! 色々いるのかなぁ。
「じゃが、ちと問題があっての」
問、題……?
「お主を向こうに送るといっても、魂だけになってしまうのじゃ」
「そこをどうにか!」
「そうじゃのぅ、お主の特徴を使って肉体を作るのが手っ取り早いのじゃが」
「それでいいです! あ、でもチートはちゃんと付けてくださいね」
「わかった。責任は取らんぞ」
これから、俺の英雄譚が始まる! 俺TUEEEEして美人に囲まれて魔王を倒すんだ!
「では、行って参れ。良い旅を宗也」
あぁ、意識が薄れて行く……
ここは、どこだ?
暗くて何も見えない。
何だ!? この硬い壁は?
おっ、もうすぐで崩れそうだ!
眩しい! おぉ、太陽だ……
ん? 嘴?
まさか、まさかまさか!
「カァァァァァ!?(鳥になってる!?)」
どうも、転生ものが書きたくなってしまった作者です。
どうぞヨロシクおねがいします。