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面倒見のいい魔王さま  作者: たじょう鹿
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平穏な日常は続かない

ベラとクレメンスは婚約破棄についての計画を立てることになった。だがその日は時間がなかったため手紙で連絡しあおうということになった。クレメンスに手紙を出しても怪しまれないように、ベラは公式の連絡係に名乗りを上げた。連絡係とは家同士の会食や晩餐会などの案内を手紙にして送る。頻繁に手紙を送ることになるので怪しまれることは少ないだろう。


クレメンスはつつがなく挨拶を終えると帰り際にベラをちらりと見ると穏やかに笑った。ベラは今になって本当に良かったのかと頭が痛くなった。だが今更遅いなと肩を落としたのだった。


そして数日が過ぎた。あれから何度か手紙のやり取りをしているが、一向にいい案が浮かんでこない。クレメンスも解決策がなく頭を抱えている状態だった。


それでも日々は過ぎてゆき一か月がたった。その日はいつものようにフェリックスに餌をやり自分の部屋に戻ろうとしていた。


「ベラ、この紅茶エンゾ様に持って行ってもらえる?」


メイド長がトレーにポットとティーカップを乗せベラに話しかけた。ベラは運が悪いなと思った。紅茶を届けるのはいいのだが、ベラはエンゾのことが苦手だった。エンゾは金に近いブロンドと青い瞳をしていてまるで物語から出てきた王子様のような見た目をしていた。だが女好きでプライドが高いく、いつもベラのことをなめるように見つめている。ことあるごとに話しかけ、さりげなくベラの腰や手などを触ってくるのだ。そのためベラはできるだけ距離を取り目を見ないようにしている。


「あ、はい。わかりました。」


ベラは表情を少し硬くしながらトレーを受け取った。エンゾの部屋の扉をノックする。中から了承する声が聞こえてきた。扉を開けると机に向かい何かを書いているようだった。


「紅茶をお持ちいたしました。」


ベラが声をかけるとエンゾがこちらを見た。エンゾは少し驚いたような顔をして、うれしそうに微笑んだ。


「珍しいね、ベラが持ってきてくれるなんて。」


エンゾがベラに声をかける。ベラは机に近づいた。机の邪魔にならないところにカップを置きポットから紅茶を注いだ。その間もエンゾはベラから目を離さない。


「ベラは、休日何をしているの?」


エンゾはベラに話しかける。このまま帰らせてくれるとはベラは思っていなかったが、急に脈絡のないことを聞かれ何と答えるべきか困ってしまう。


「いえ、特に面白いことはなく、、、」


「なんでもいいんだ、僕は何でもいいから君のことが知りたいんだ。」


エンゾは熱のこもった眼でベラを見つめる。ベラは少しエンゾのことを怖いと思った。いくら何でもメイドである自分に手を出したりしないだろうと思っていたがもしかしたらと考えてしまったのだ。


「うーん、時間があれば街に出かけたりもしますが大体は自分の部屋にいますね。本読んだり料理したりします。」


「へぇ、街には何しに行くの?服買ったり?」


熱心に話しかけてくる。


「そうですね、、、」


これ以上聞かれたくないとベラは思いエンゾに言った。


「そういえば言えてなかったのですが、ご婚約おめでとうございます。」


すると突然エンゾの表情が硬くなる。


「あぁ、ありがとう。本当は、、、」


エンゾは先ほどとは打って変わって言いよどむ。ベラは気になって聞く。


「どうかしましたか?」


「本当は婚約したくなかったんだ。」


想像がつく話だった。クレメンスの話を聞く限りではメフシィ家から婚約の話が来たと言っていた。エンゾが結婚したいといったわけではないのなら親が決めたことなのだろう。


そしてベラは気づいた。エンゾに直接、婚約を解消してもらえばいいのではないかと。いや、とベラは考え直す。息子にめっぽう甘いあの両親が聞き入れなかったのだからよっぽどの理由があるのだろう。その親バカぶりは、息子のエンゾのために膨大なお金をかけて専用の離れを建てさせるほどである。


「それはどういうことでしょう?」


ベラは心底疑問そうに聞く。エンゾは伏目がちに答えた。


「父がどうしてもクレメンス譲と結婚してくれと言って、承諾せざる終えなかったんだ」


やはりそうだ。両親が決めたことなのだ。でもそれほどクレメンスとの結婚が大事なのはなぜなのだろうか。


「旦那様はなぜそのようにおっしゃるのでしょうか。」


ここでその理由が聞ければ婚約解消の大きな一歩になる。期待が声になりベラの声が少し声が大きくなる。


「父によるとクレメンス譲のオンドリィ家が所有している領地に珍しい植物が生える土地があるらしい。それがどうしても欲しいそうだ。」


「土地ですか?でもオンドリィ家は没落寸前ですよね。あまり有効に使えるとは思いませんが。」


珍しい植物が生えている土地を持っているとしてもオンドリィ家は没落寸前なのだ。それを見るとあまりお金にならないのではないだろうか。そんなものを喉から手が出るほど旦那様は欲しているのだろうか。


「それが、オンドリィ家は気づいていないみたいなんだ。本当なら没落なんてありえない。メフシィ家より繁栄しているかもしれない。」


ベラはなるほどと思った。そして、これでクレメンスを救えると内心で大喜びした。クレメンスにすぐに伝えよう。こんな重要なことを一介のメイドのベラに話してくれたエンゾに感謝しなくてはならない。


「気づいてない!?」


精一杯ばれないように驚いた声を上げる。エンゾはベラを見ながらうなずいた。ベラは早く部屋に帰り手紙を書かなければと話を切り上げた。


「そういうことだったんですね。お気持ちお察しいたします。メイドの私にはどうすることもできませんが、エンゾ様の幸せを祈っています。ではあまり長居するのも申し訳ないので失礼いたします。」


ベラはエンゾに頭を下げる。部屋を出ようとドアへと近づいた。すると突然後ろで椅子を引く音がした。真後ろにエンゾの気配がした。


「待ってくれ。」


エンゾはベラの腕をつかんだ。ベラは突然のことで驚き固まった。そして、これは何か嫌な予感がするとベラの直感が言っていた。


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