表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

とりかへばや姫君外伝〜お正月編〜

作者: 美湖都

いつも「とりかへばや姫君」を読んでいただいて、ありがとうございます。今年もよろしくお願いします。

雪がしんしんと降り積もっている。


ここが宮中の一角であるとは思えないほどの静けさ。


白銀の世界には、自分たち以外には誰もいないような気分にさせられる。


芙蓉と東宮は、二人きりで雪の梨壺を堪能中である。


正月も三が日を過ぎて、騒がしかった宮中もようやく落ち着きを取り戻した。


数々の儀式で、特に東宮は目の回りそうな忙しさだった。


こんなふうにのんびり過ごすのは久しぶりである。


すっぽりと庭の木々を綿帽子のように覆っている白雪は見ていて飽きない。


人払いをしてあるし、御簾は一応垂らしているから、人目はない。


キラキラした目で雪を眺めている芙蓉。


中将の御方が見たら怒りそうなくらい端近にいる。


戸を開け放っているので、冷たい風が芙蓉の頬を赤くする。


「もう少し火鉢によらないと、風邪をひいてしまうよ?」


火鉢のそばに座っている東宮が、芙蓉を引き寄せる。


「ほら、こんなに冷えてる」


そう言って、火鉢にあたっていた自分の手を芙蓉の頬をふわっと包み込む。


芙蓉は、そんな東宮の手にすっと頬をすりよせる。


「あったかい・・・」


二人とも、何かをしゃべるわけでもない。


そっと、寄り添っているだけ。


何をしているわけでもないのに。


「幸せだな」


芙蓉の口から、そんな声がぽろっと漏れる。


「何か言った?」


東宮が、わざとらしく聞き返す。


芙蓉は、頬を真っ赤に染めてぶんぶんと首を振った。


そんな言葉、恥ずかしすぎてもう一度言えるわけがない。


真っ赤に染まったままの頬を隠すようにして、東宮の肩に顔をうずめた。


いつにない芙蓉のそんな行動に、東宮の顔がほころぶ。


こうして二人の甘い時間は過ぎていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ