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『半径1メートルの日常』  作者: 八神 真哉
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『ふるさとは遠きにありて思ふもの』


30年ぶりに帰郷。

ある方とコロナワクチン接種の話から、わが町の話に。


マツダ本社とキリンビール工場があったこともあって、昔は日本一税金の安い町。

今でも、広島市より安い。

大型ごみもタダだし。ごみの分別も簡単。

コロナ下の昨年は、住民全員に生活支援として1人当たり5,000円のクーポンを配布。

「〇〇部屋ネット 街の住みここちランキング<広島県 自治体>」でも4年連続1位の評価。


にもかかわらず、アンケートでは広島市という住所が欲しい人が半分ほど。合併すべきだと。

確かに「〇〇郡」というと、田舎のイメージ。

実際には、人口が町としては日本一。単独で市になることも可能。

自治体面積は広島県で一番狭く、広島市に周りをぐるりと囲まれていることから広島のバチカンと呼ぶ人も。


現在は、キリンビール工場跡地にイオンモールが出店。

その出店に合わせJR山陽本線、広島駅となりに小さな駅を新設。この駅舎の建設費はイオンが持ったとのこと。

――と回答。


「まさか、イオン駅という名前?」と返信あり。

――「いえいえ、さすがにそれは……名称は「天神川」駅。

ちなみに建設費は4億4千万円。

太っ腹!


確かにわたしも、いい町だと思う。帰ってきてよかったと思う。

だが、ふとした拍子に違和感を感じることがある。


公園はあっても、ボール遊びは禁止。

放課後集まって野球やドッチボールをしていた小学校の校庭も使用禁止。

凧、コマ、ビー玉、花火で遊び、放置された材木やトタンを使って秘密基地を作った空き地を見つけることはできない。

夏になれば砂防ダムとも知らず泳いでいた水分峡。

魚釣りをし、川や田んぼに入り、メダカやフナ、オタマジャクシ、ザリガニを捕まえ、セミやトンボを追い、あぜ道から転がり落ちていたあの頃の景色はどこにもない。


このあたりに駄菓子屋があったよな。

誕生会に呼んでくれた寿司屋の〇〇ちゃんの家はこのあたり。

あの頃よく遊んだ友の家は……散歩の途中で探してみるが、なにひとつ見つからないのである。

小学校も新しい。


天気が良ければ、その頂上の大岩の上から、わが町に加え瀬戸内海や広島市中心部を一望できる高尾山(岩谷観音)。

自宅から見える、その山頂だけは、変わっていないように見える。


だが、今そこに登っても、もはや、あのころの風景を想い描くことはできないだろう。


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