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『半径1メートルの日常』  作者: 八神 真哉
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『引越し通信』  〇〇〇万円を探せ!

4月20日

実家の整理。

結構な日数をかけ、必要な物と不要なものの選別も進み、終わりが見えてきた。

しかし、大事なものが見つかっていない。


20年ほど前のこと。

「葬式のお金は、ここに隠しておく」

母が言った。

「葬儀屋は待ってくれるが、お寺と火葬場は、待ってくれない。銀行が休みだと困るからね」

しかし、ここだと言っていた場所どころか、どこを探しても見つからない。

以前、父が亡くなったときに「葬儀用の…」と切り出したが、

「あれは、きれいなお札だから」と出そうとしない。

母が手元に置いているのは、新札ばかり。

しかもナンバーのなかに4や9の入ったものは残さない。

「お祝いに使う」ためだ、という。


結局、あわてて、わたしの定期を翌朝解約したのである。

まあ、いいか、という金額ではない。

箪笥の抽斗のたたまれた服やタオル、引出物でいただいてそのままになっている箱も念のために徹底的に開ける。探す。

一部屋ずつシラミつぶしに探していく。

山ほど積みあがっている新聞紙やチラシ、DMも丁寧にめくっていくが見つからない。


すでに、夕方。室内は薄暗くなってきた。

電気の契約は切っているのでそろそろ限界だ。

もうひと山片づけて切り上げよう。

新聞販売店からもらったのだろう、「新聞名」の入ったごみ袋の束が嫌というほどある。

あまり大きくないので使いにくい。

束ごとゴミ側に投げ捨てると、空中でふたつに分かれ、音を立てて落ちた。


一方の紙袋が破れ、お札らしきものがのぞいている。

100枚ぐらいある。

「出た!!」




挿絵(By みてみん)



……さて、葬式代は本当に見つかるのだろうか?



そういえば、妹が、

「冷蔵庫の中で腐っていた肉などは全部捨てたよ」と言っていた。

新聞紙に包んで、そこに隠していたのではないか。

母であれば、やりそうである。

悪い予感は広がるばかりである。


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