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『半径1メートルの日常』  作者: 八神 真哉
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自己紹介

かれこれ10年近く前のことである。

○○美お姉さんから手紙が届いた。主催する少女マンガ同人誌に参加しろ、と。


「マンガは描いていない。年賀状を見ればわかるだろう」と、断ったが、会報を送りつけてくる。ゲストで描けと手紙が来る。

しつこさに負け、幽霊会員として入会した。それでも何か描けと言ってくる。

無視していたら、会費とともに送った私信を無断で載せる。

――まて、まて、それなら書き直す。

と、そんなことから始まった、会報への近況報告。


定期的に手紙をくれる元スタッフへのエッセイもどき。

2年ほど前から始めた「絵封筒」と、ともにご覧いただければ幸いである。


                『自己紹介』


11月28日 夜12時過ぎに帰宅したら手紙が届いていた。○○美お姉さんからだった。悪い予感がした。先に食事をすませて恐る恐る封を切る。

「自己紹介、B5で1枚。11月30日必着でよろしく。水性ペンでちょいと!!」とあった。これはひどい。毎日12時近くまで仕事。休みの日も仕事を持ち帰っていると返信したばかりなのに。

 最後に「はい、返信用。大サービス」とあった。結局、この手練手管に騙されてしまうのだ。ホステスでもやれば人気が出るに違いない。むろん若い頃であればという条件付だが。


 さて、愚痴に時間を割いても自己紹介は終わらない。気を取り直して先に進む。

仕事時間が長く休みも少ないので、たまの休みの日には寝ていることが多い。子どもたちが小学1年生のころは土日も休めなかった。「お父さんは寝てばかりいて役にたたない」と言っていたという。

来年度の「このマンガがすごい」の男部門1位にマンガ家を目指す若者たちを描いた『バクマン』が選ばれた。書店にいるので情報は早い。

 この単行本2巻が出たとき策を練った。数年前にコロコロコミックに連載していた友人にカット入りのサイン本をもらってきたら子どもたちが「おとうさん、すごい人と友達なんだね」といって宝物箱にしまいこんだことを思い出したのだ。

そこで『バクマン』の1巻と2巻をそのあたりに投げておく。マンガであればダボハゼのように食いつくので簡単である。

時を見計らい、原稿持込時に「コーヒーが出たら見込みあり」「若い担当者がついた」というくだりを見たか、と尋ねる。

うなずく子どもたちに「おとうさんは編集長が担当についた」「ビールも寿司も出た」と自慢する。たぶん、ちょっとだけ尊敬された。

本当は子どもができたら、絵本を作ってやるのが夢だったのだが、気づいたときにはハリーポッターを読んでいた。

おとうさんの「すごさ」を見せることができず、

心残りの2児の父。八神真哉です。

よろしく。


こんなものでいかがでしょう

○○美さん。

検閲入れてもいいですよ。


挿絵(By みてみん)



挿絵(By みてみん)


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