36 強面貧乏お嬢様、事の顛末を聞きました(後)
ざまぁ その2
「では、王女様達はもう、帰国なさったのですね」
「あぁ、無事に帰れたかどうかは知らないけどね」
「お祖父様も怒ってくださったのですか?」
「そりゃそうだよ! 大事な孫だし。
それと、もう一つ、言わなければならないことがある。」
ミーシェ王国第一王女、クリスティーナが出て行くと、次に入って来たのは、ブレンターノ伯爵の息子のアロイスと孫のダンクマールだった。
そしてこの場には、2人の父と祖父でもある、アドルフ・ブレンターノ伯爵も居た。
「ブレンターノ伯爵子息アロイス、その息子ダンクマール。
其方らに、国庫横領の罪の告発状が届いている。」
2人は揃って、青い顔になった。
「その事を知って、ブレンターノ伯爵は、爵位を返上しようとしたが、彼自身は非常に優秀な為、
王家としても、手放すには惜しい人材だ。
そこで、横領した金を返還することと、其方らを廃嫡させることで合意となった。」
さらに2人は青い顔になり、ダンクマールは「うそだ!」と叫んだ。
「それに其方ら、カミラ・アルベルツ子爵令嬢の誘拐にも手を貸したな?
用意した馬車や、旧ブルーニ伯爵家跡地を提供したのは其方らだろう」
旧ブルーニ伯爵家跡地は一時的に、ブレンターノ伯爵家預かりとなっていた。
この事を知るのは、王家とブレンターノ伯爵家のみだ。
家が傷まないよう、定期的に管理を任されていたのだ。
カミラの誘拐事件後、これを知り、すぐにアロイスとダンクマールに容疑がかかった。
「王女殿下から頼られたのですよ?
それに、旧ブルーニー伯爵跡地も使われた方がうれしいでしょう?
カミラ程度が殴られるくらい、大したことがない」
悪びれも無く、ダンクマールが顔を引きつらせながら言うと、ブレンターノ伯爵であるアドルフの怒りが頂点に達した。
「大したことが無いとはなんだ!?
お前ら……犯罪に手をかけながら、なんと情けない。
貴族の矜持を忘れおって!!」
「フッ」と笑った後、息子のアロイスが口を開いた。
「では、父上。 ブレンターノ家に跡継ぎがいなくなってしまいましたなぁ。
……いかがするおつもりで?」
「ふん」と呆れるような顔で、アドルフは答えた。
「ブレンターノ家の心配は無用。 宛ならある!」
きっぱり言われてしまい、ブレンターノ家の親子は、愕然とした表情になった。
「アロイス・ブレンターノ。 並びにダンクマール・ブレンターノ。
本日を持って、貴族身分を剥奪。
国庫横領の罪と、カミラ・アルベルツ子爵令嬢誘拐ほう助の罪で、
シーカー刑務所に送ることとする。」
王がそう述べると、2人ともその場にへたり込んでしまった。
今回、財務大臣である、アドルフ・ブレンターノ伯爵の息子たちが国庫を横領したということで、財務大臣を降ろす動きもあったが、この2人の悪事を追っていたのは他でもないアドルフであった。
アドルフ・ブレンターノ伯爵は、自ら身内の悪事を晴らし、王の助力と、周りからの評判の良さもあって、そのまま継続して財務大臣をやることになった。
本人は、領地に籠る気満々だったにも関わらず……だ。
それほど、後任となれる人材が居なかったらしい。
「それで、君の叔父一家は、貴族籍を剥奪されたんだ」
「……そんな事があったのですね。 あの、シーカー刑務所って?」
「噂だと、重罪とは言えないが、王が強い怒りを感じた者が送られるところ……だったと思う。」
「ということは、陛下もすごくお怒りになっていたということでしょうか?」
「国庫の横領だしね。 君の叔父はかなり長い間、巧妙にやっていたらしいし。
今回分かったのって、君の従兄弟がヘマしたせいみたいだ。
ブルーノが以前言っていた、国庫から擦っている親子が君の叔父と従兄弟だったんだよ。」
「あ!そうだったんですね」
「ちなみにシーカー刑務所に行った者は、皆揃って、地獄を見たと発言している。」
「……恐いところなのですね」
何はともあれ、無事、収束したということだった。




