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34 優男な成金子息、強面貧乏お嬢様の為に奔走しました


「ローレンツ様!!」


俺は、商会に駆け込んで来た、ベック男爵邸の警備兵の様子を見て、嫌な予感がした。


「カミラ様が……何者かに連れ去られました」


その言葉に、愕然とした。


ただ、俺はまだこのとき、希望が残っていると思っていた。


それは以前の家族会議で、密かに決まったことが原因だった。


『侍女見習いエルゼは、見習い期間終了と共に、解任。

 また、エルゼとカミラ嬢には、密偵をつける。

 皆……意義はないな?』


当主の言葉に皆が頷いた。



なので2人には、密偵がついている……はずだった。


「エルゼの部屋とカミラ様の部屋から、下働きの男が1人ずつ縛られて、

 気絶させられているのを発見しました。」


俺は言葉を失った。


彼女はかなりの手練れだったのだ。


「そして、連れ去るところを庭師が見ていたのです。」


そう言って、警備兵はカミラが連れ去られた様子を伝えた。


庭師が、庭で手入れをしていると、カミラを担ぐエルザを目撃。

慌てて走って、後を着いて行くと、エルザが、カミラを止めてあった馬車に乗せ、猛スピードで去って行った。


すぐに、庭師は使用人達に報告。


部屋に向かうと、気絶して縛られている下働きの男を、それぞれの部屋で発見。


「至急、当主一家、アルベルツ子爵に報告致しました。

 現在男爵家は、僅かな者を残し、皆で捜索に当たっています!」

「分かった。 俺もすぐに捜索に当たる!」


俺は、副会頭に仕事を任せ、警備兵と一緒に商会を出た。


「馬車は、北に向かって走り去ったそうです。」


その言葉を聞き、北へ。


警備兵とは別れ、1人で探しまわっていると、なぜか王城の兵になっていた知り合いと会った。

兵の格好だったので、仕事中だ。


「ローレンツ! お前もカミラ嬢を探しているのか?」

「どういうことだ? 王城の兵がカミラを?」

「あぁ。 俺はベルンフリート卿の兵なんだ。

 うちの団は全員捜索に当たるよう、王から許可も得ている。」


ベルンフリート卿が王に団を動かす許可を取ったらしい。


「何か分かったら伝える」と言って別れ、捜索を続ける。


北の王都は、貴族の住宅街も多いが、空き家も多い。


俺は空き家を探し、怪しいところが無いか、探った。


何軒か空振りして、走り回っていると、「ローレンツ!」と言う声が聞こえ、声のする方へ向くと、ブルーノが走ってこっちにやって来た。


俺らは人目につきづらい路地へ行き、ブルーノからの話を聞いた。


「旧ブルーニ伯爵家跡地で、濃紺色の髪の女が、金髪の女を運んでいるのを目撃した奴が居た。」

「分かった。 すぐ向かう。」

「待て。 ベルンの兄貴と落ち合ってから、突入してくれ。

 ()()()()()()()()()。」


俺はすぐにでも突入したい気持ちを抑え、旧ブルーニ伯爵家跡地へ向かう。


ブルーニ伯爵家といえば、元は、この国に古くから王家に仕えていた名門貴族の一つだったはずだ。

確か、跡継ぎがなく、親戚に任せられるような人材もいなかったため、王家に家も領地も返上した。


返上したのは5年前くらいだったかな?

ミーシェとは関わりが全くなかったはずだ。

空いていたから使った……というわけではないだろう。


俺がそんなことを考えているうちに、旧ブルーニ伯爵家跡地に着くと、すぐ、ベルンフリート卿が兵を率いて合流した。


遠くから伺うと、少人数ではあるが、王女側には警備をしている男達がいた。


「そいつらに攻撃をする許可は得ている。

 存分にやれ。

 ただ、王女は出来るだけ傷つけるな。

 こちらが不利になる。

 だが、王から、王女を一時拘束する許可はもらっている。

 こちらが剣を向けても不敬にはならない。

 では、行くぞ!!」


「「はっ!!」」


ベルンフリート卿の号令で、俺も一緒に中に入った。


何人かの王女側の手練れの男達が、行く手を阻むが、俺と、狂気に包まれたベルンフリート卿でほぼ、蹴散らしてしまった。


やはり、ベルンフリート卿も娘の誘拐に、気が立っていたようだ。


最後の1人をベルンフリート卿に任せ、俺は先に行かせてもらった。


「カミラ!」


部屋に入ると、手足を縛られて、横たわるカミラの腹に、王女がヒールでグリグリしている光景が目に飛び込んで来た。


俺を見て「なんで……」とつぶやく王女。


すぐにカミラに駆け寄ろうとすると、エルゼが剣で攻撃してきた。


エルゼの強みは素早さなんだろう。

それで、一瞬の隙をつかれ、密偵達は倒されてしまった。


けど……それが分かれば……


俺は自分の剣ですぐ防御し、下から振り上げた瞬間、エルゼの剣が宙に舞った。


キィン!とした音が響き、カランカランカラン…と乾いた音が鳴った。


「どけ」


俺はエルゼの腹を軽く突き、王女を軽く突き放し、カミラに駆け寄った。


そして、俺の後から、兵が何人も入って来て、王女とエルゼを囲む。


ベルンフリート卿が淡々と王女に向かって、口を開いた。


「クリスティーナ王女。 ロザリファ国王の命により、アルベルツ子爵令嬢誘拐、

 監禁および傷害容疑で一時拘束します。」

「え?」

「っ……お嬢様!」


そう叫んだ、エルゼも拘束された。


「カミラ! 今、ロープを切るからじっとしていて。」


すぐに剣でローブを切ると、カミラはすぐ手を腹に当てた。


「カミラ、すぐに医師に診せるからな!」


そう言って、カミラをお姫様だっこし、すぐに医師の家へ連れて行っていった。


日が落ちる前に見つかって良かった……!!


少し安堵しながらベック家専属の医師の家に駆け込むと、すぐに診てもらえた。

そこでカミラに聞くと、王女から、腹を蹴られ、その蹴られたところをヒールの先で、グリグリと押し付けられたらしい。


よっぽど強く蹴られたのか、骨には異常がないものの、全治2週間と診断された。

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