33 強面貧乏お嬢様、王族のお客様に会いました
この回で、残虐な描写ありとしたシーンがありますが、恐らく拍子抜けするか、これくらいで? と思うかもしれません。
ただ……やられたら痛いし、リアルでやられたら……と思うと、一応、つけとかなきゃなと思ってつけました。
目を開くと、どこかの部屋の一室にいることが分かった。
灯りはあるが、外はカーテンで閉め切られており、人は誰もいない。
手足はロープで縛られ、部屋の床に横たわっていた。
なんとか立ち上がれるかなと思って、立ち上がろうとしたが、無理だった。
もっと、足が開けばなぁ……
すると、ドアが開かれ、そこにはエルゼが、可愛らしいピンクの髪の令嬢に従い、入って来た。
「エルゼ!」
エルゼは、今まで見たことが無いくらい、冷えた目で一瞥し、すぐに令嬢に目を移した。
可愛らしい令嬢は、蔑んだ目を私に向けて、口を開いた。
「あなたが、カミラ・アルベルツ?」
「……はい。 そうですが……ここはどこでしょう?」
「言う訳無いじゃない。 ローレンツ・ベックはこんな人のどこに、惚れてるのかしら?」
「ローレンツ様をご存知なのですか?」
「もちろん、私の国に来てもらおうかと……」
「お嬢様!」
「あ!?」
「あぁ! 今訪問なさっているという、ミーシェの王女殿下でしたか」
「お嬢様……」
「あぁ!もう! 単刀直入に言うわ! ローレンツ・ベックから身を引きなさい!
彼はうちの国に必要な人よ!」
「どうして必要なのでしょう?」
「彼は、絹をこの国で作り出すことに成功したわ! それをうちの国でやってもらいたいのよ!」
「なら、作り方を尋ねれば良いのでは?」
「作り方を聞くより、本人を引っ張って来た方が早いじゃない!」
「どうして絹にこだわるのです。」
「あんなに素晴らしい生地を独占しているなんて、ずるいじゃない!
それはうちの国でも持つべきだわ!
ここの国の商人は、良いものを売っている人が多いのよ。
そんなの全部うちに持って行った方が得なのに!」
この人は、欲しいものは全部持っていたい人なのかな?
でも、無理矢理自分の国へ連れて行くのはどうかと思うけど……
「私がローレンツ様から身を引けば、殿下の国にローレンツ様は向かうのでしょうか?」
「きっとあなたが枷なのよ。 あなたさえいなければ、すんなり私の国へ来ると思うわ!」
「そうですか……。 あの、ローレンツ様以外の他の方はなんとおっしゃっているのでしょう?」
「他からも断られているのよ。 この国が居心地が良いんですって。
みんな同じことを言うの! うちの国を侮辱して!!」
たしか、ミーシェ王国の気候は、常に温暖な我が国ロザリファと違って、寒冷地帯だったはず。
それでも大国なので、生きるのには困らないが、我が国のような快適さとはいかない。
「殿下、伺いますが、今、ミーシェ王国は絹を必要としているでしょうか?」
「何が言いたいの?」
「今、ミーシェ王国はベルク王国と戦争中なはずです。
そのような状況で、必要なものでしょうか?」
「何を……」
「私なら、食料なり、日用品なりを求めます。
綺麗な絹は必要ないはず……」
その瞬間、王女が思いっきり私の腹を蹴った。
「あ……」
息が出来ない…!!
「……っごぼっ……はっ……はっ……」
できた!
と思ったら、王女はものすごい形相で私を見ていた。
『あなた、うるさいのね。
この私に説教だなんて、身の程知らずが!!』
王女の言葉が、ミーシェ語に変わっていた。
靴のヒールの部分で、王女は私のお腹を強くグリグリと押し付ける。
「あ……いっ……」
『私に逆らうことを言うなんて……愚かな女ね』
私はなぜかこの時、ローレンツ様の顔が浮かんだ。
「ろ……れ……さ……ま」
『呼んでも来ないわよ』
『やっぱり馬鹿ね』と嬉しそうな声でつぶやき、さらにグリグリを強めた。
すると、外が騒がしくなり、ドアから男が入ってきた。
「カミラ!」
なんと、ローレンツ様が駆けつけてくれた。
「なんで……」
王女がそうつぶやくと、エルゼが剣でローレンツ様を攻撃した。
ローレンツ様が剣を下から振り上げた瞬間、エルゼの剣が宙に舞った。
キィン!とした音が響き、カランカランカラン……と乾いた音が鳴った。
それを見て、私は以前、剣も使えると聞いたことを思い出す。
「どけ」
ローレンツ様はエルゼの腹を突き、王女を軽く突き放し、私に駆け寄ってくれた。
そして、ローレンツ様の後から、兵が何人も入って来て、王女とエルゼを囲む。
剣を持ち、兵の姿をした父も入って来て、淡々と王女に向かって、口を開いた。
「クリスティーナ王女。 ロザリファ国王の命により、アルベルツ子爵令嬢誘拐、監禁および傷害容疑で一時拘束します。」
「え?」
「っ……お嬢様!」
そう叫んだ、エルゼも拘束された。
「カミラ! 今、ロープを切るからじっとしていて。」
言われた通りにしていると、ローレンツ様は剣で私のロープを切ってくれた。
「カミラ、すぐに医師に診せるからな!」
そう言って、私をお姫様だっこし、すぐに医師の家へ連れて行ってくれた。
結果、私は全治2週間の怪我を負っていた。




