31 優男な成金子息、強面貧乏お嬢様に友人を紹介しました(後)
次に会う人は夜だ。
その間は、俺の商会でゆっくりしてもらうことにした。
カミラは興味深そうに、キョロキョロ見ている。
会頭室でのんびりしていると、カミラを見ようと、わざとらしく社員が仕事の話を持って来る。
その度にカミラは自己紹介してしまうので、俺はもっと休める部屋へ移動した。
そこでカミラに仮眠を取ってもらうことに。
と、言っても、ソファーだが。
すると、「寝ません!」と言っていたカミラがすぐに寝入ってしまった。
疲れていたのだろう。
俺は、その寝顔を見ながら、時を経つのを待った。
「すみません……寝てしまって……」
「疲れさせたのはこっちだしね。
俺も、カミラの寝顔が見れて良かった。」
カミラの顔が赤くなった。
か……可愛い!!
ディナーの予約をしている店へ向かい、彼らを待った。
数分後、彼らが揃って来店した。
「お誘いどうも!」
「久々だな」
席について自己紹介する。
「カミラ、エリク・カーフェン伯爵子息とクリスト・パリッシュ子爵子息だ。」
「どうも! カミラ嬢。 初めまして! クリスト・パリッシュでーす!
クリストって呼んでね」
クリストと呼ばれた男は、ストレートの金髪にグレーの目の幼い印象が強い男だった。
「エリク・カーフェンだ。 俺もエリクで構わないよ?」
エリクは柔和な印象の、ウェーブの銀髪に碧眼の男だった。
「カミラ・アルベルツです。」
「彼らは、俺の学園時代の友人だよ。」
「階級は違うけど、なんだかんだ馬があってな」
「学園……ちょっとうらやましいです。」
カミラの顔が少し寂しげになった。
「あ、でも、学園で何か問題を起こせば、そこにいれなくなるだろ?
そうなると、社交界にも出づらくなるんだよ。」
「え!? それはそれ、これはこれ、ではないのですか?」
「学園は、社交界の縮図だからね。
何か生徒同士で問題が起これば、それは個人間の問題では済まされないんだよ。
例えば……」
ある男爵子息が、伯爵子息に因縁をつけられた。
明らかに伯爵子息が悪いのに……だ。
男爵子息は下級貴族なので、上級貴族の伯爵子息には言い返せない。
けれど、男爵子息には、ある友がいた。
それは王太子だった。
王太子が伯爵子息の悪事を叩きつけ、その話が親へと行った。
すると、その伯爵子息は廃嫡され、二度と社交界には足を踏み入れることが出来なくなった。
ちなみにその伯爵は、王城を退職し、領地に引っ込んだ。
実はその伯爵も、王城では傲慢な態度で疎まれており、息子の件でさらに肩身が狭くなって辞職したのだった。
「と、まぁ、こんな話があるんだよ」
「ちなみにその男爵子息はローレンツな」
「え? そうなのですか!?」
「うん、まぁ。」
「そんなことがあると思うと……通わなくて良かったかもしれません」
「でも、社交の練習も兼ねているから。 今からでも通うかい?」
カミラは全力で首を振った。
すると、友人2人は腹を抱えて笑い出した。
「カミラ嬢って、こんな可愛い性格だったの!?」
「いい人捕まえたな……お前!!」
「だろ!……お前らも頑張れ」
「てめぇ……」
『そういえば』
突然ミーシェ語になって、エリクが口を開いた。
『知ってるか? その王太子に婚約者が出来たって話。』
『本当か?』
『今朝届いたビックニュースだからな。
エラ・アサモア侯爵令嬢と婚約したらしい』
『そうなのですか!』
ぎょっとしながら、エリクとクリストはカミラに向いた。
『私、ミーシェ語は話せますので』
『カミラ嬢。 学園通っていたら、絶対成績優秀者だったね』
「ちなみに俺は話せないんだ。 ……学園通っていてもこれだよ」
クリストが少し気まずそうな顔をする。
「クリスト様は、社交上手で羨ましいです。
さりげなく、私を気遣って、興味深い話に変えてくださりましたから。」
カミラは小さく微笑んだ。
「本当に羨ましいよ。 ローレンツ」
「あー……婚約者が欲しい……」
結果、友人2人をへこませる結果となってしまった。




