表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/38

28 優男な成金子息、強面貧乏お嬢様にお願いしました


「外にお仕事……ですか?」

「うん、そう。 僕たちもう、婚約しているからね。

 みんなにカミラを紹介するために、挨拶周りをしたいんだ。」


俺はまだ、友人達にカミラを紹介出来ずにいた。

なので、仕事として一緒に来てもらうよう頼んだ。

仕事と言った方が、ついて来てもらいやすい。

なぜならその日、カミラは本来侍女として仕事をする日だから。


人によっては情報収集も兼ねているので、仕事というのは間違ってはいない。

そして、この日しか皆の都合がつかなかった。


「朝から夜まで回るから、疲れるかもしれないけど、お願いできるかな?」

「はい。 ……ですが、服が……」

「それなら用意してある。 後、申し訳無いのだけれど、その日の前日、侍女の寝室とは別の部屋で寝て欲しい。」

「え? なぜですか?」

「その日は俺たち男爵一家と朝食をとってもらいたいからさ。 ドレスも着るしね。 広い部屋の方が、侍女達もやりやすいし。」

「え!? 1人で着れますよ!」

「実は俺付きの侍女達、カミラを綺麗にさせたいと躍起なんだ。 うちには女は産まれなかったからね。 女性を飾りつけたいんだってさ。」


それは本当だ。

訪問用のドレスとはいえ、綺麗に着飾ったカミラが見たくて、侍女達にお願いしたら、「「お任せください!」」と俺付きの侍女2人に言われてしまった。


「だから頼むよ。 カミラ」

「……はい」


そして当日。

俺は、カミラが使っている客間に、カミラを迎えに行った。


ノックをして中に入ると、そこには薔薇の精霊がいた。


この世界には精霊がいる。

我がロザリファ王国には、視える人が基本居ないが、視える国の人は精霊に力を借りて、魔法を使うことが可能だ。

この国では、観劇などで度々、精霊と呼ばれる女神のような姿をした女性が登場する。


今のカミラは、その精霊そのものだ。


胸の下に切り替えのあるエンパイアラインのドレス。

淡いローズ色のドレスは、カミラによく似合っていた。

髪はハーフアップに編み込み、控えめな薔薇の髪飾りをつけている。


清楚な大人びた少女が、一輪の極上の薔薇に見えた。


「とても綺麗だ……カミラ」

「そう……ですか?」

「あぁ。 とても似合っている」

「ありがとうございます…ですが、食事前に着なければダメでしょうか? ……汚しそうで」

「大丈夫! 例え汚したとしても、ヴェンデルにもう何着ももらっているから」

「え!?」


カミラのサイズは、ここの使用人になるときに、侍女の制服が合うよう事前に計っていた。

そのサイズ表をヴェンデルに渡し、有無言わせず訪問用ドレスを作らせたのだ。

ヴェンデルは快く受け取り、しかも金を取らないと言って来た。


理由を聞くと、たまにカミラのようなスレンダーな体型のお客様が居るのだが、特に胸は恥ずかしいのか、なかなかサイズを測らせてくれないらしい。

みんな自己申告で言うので、きちんとしたドレスに仕上がらないこともあったのだ。

なのでカミラのサイズ表は、貴重だった。

そして、幾つかサンプルを作り、納得がいくデザインのものだけ、すべてもらうことができたのだ。


『これは新しいデザインが出来たお礼ってことで! デザイナーにも良い刺激になったみたいだし』

『ヴェンデル。 良いのか? こんなに』

『実はこのドレス全部、他の体型のお客様にも合うことが分かったんだ。

 切っ掛けをくれたカミラ嬢には、感謝しか無いよ。

 あと……カミラ嬢には大事なことを教えてくれた、お礼も入っているんだ。』


そういわれてドレスを8着も受け取った。


「さぁ! みんな待ってるよ。 行こうか?」


カミラの手を取り、男爵一家用の食堂へ連れて行った。


部屋に入ると、皆興味津々でカミラを見た。


「まぁ~!! カミラ、綺麗よ!!」

「訪問着でここまで……」

「これは……綺麗だ」

「よく似合っています。」


家族からも高評価だ。


「そう言ってもらえてよかったです。

 ヴェンデル様、こんなに素敵なドレス、ありがとうございます」

「いえいえ! こちらこそ。 おかげで良いものができましたよ」


和やかに談笑しながら、皆で食事を取ったら、俺とカミラ以外は皆、出かけてしまった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ