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25 強面貧乏お嬢様、お仕事を休んでしまいました(前)


ローレンツ様と勝負をしたその日、私は夕食をとることなく、寝てしまった。


そして、起きて、いつも通り食堂へ向かおうとドアを開けたところで、ビアンカと遭遇した。


「カミラ!? どうしたの?その顔……」

「え?」


トイレに向かい、鏡を見ると、私の目の周りは真っ赤に腫れていた。


「カミラ! トイレで鏡を見たら部屋に戻って。

 食事は私が運ぶから」


先程そう、ビアンカに言われ、私はその通りにした。


コンコン


ノック音がしたので、「はい」と答える。


すると、入って来たのは侍女長だった。


「大丈夫? カミラ」

「すみません! 侍女長にこんなことを……」

「確認したいことがあって、ビアンカに変わってもらったのです」

「なんでしょう?」

「今日は、仕事をお休みなさい。 そんな顔は、あまり見せてはいけないわ」

「でも……」


侍女長は首を横に振って、答えた。


「多分今日は仕事にも影響するでしょう。 いつも通りの仕事ができないかもしれないから……ね?

 それに、今日はそんなに忙しい日ではないから、大丈夫よ」

「……ごめんなさい」

「はい!これを食べて、元気を出してね。」


侍女長は持って来てくれた食事を机の上に置いた。


侍女長が出て行くと、私は、食事に口を付けた。


美味しい。


さっきまで寒かった身体が、ポッと小さな火が灯るように、暖かくなった。


しばらく経つと、食事を下げに、ビアンカが来てくれた。


「カミラ、全部食べられたんだ。」

「うん。 身体は万全なんだけど」

「そんな風に見えないけどな~。 今日はしっかり休んでね! 明日も休んでもいいかもよ?

 今まで、結構頑張っていたんだから、このくらい誰も(とが)めないって!」


そういって、ビアンカが部屋を出て行った。


私はすることがないので、ぼーっとしているうちに、昼になったようだ。


トントン


「はい」


ドアが開くと、そこに立っていたのは、何と、奥様のハンナ様だったのだ。


「カミラ。 体調はどう?」

「大丈夫です! それより……奥様にこんなこと」

「昨日はローレンツがやっちゃったんだって?

 だったら、私からも謝らなきゃ。 ごめんね。 馬鹿息子で」

「いいえ……馬鹿は私です」

「まぁ、とりあえず、一緒に食べましょ?」


奥様の後ろに奥様付きの侍女が、奥様の食事をもっていた。

机に並べると、侍女は出て行った。


「久しぶりに、賄いを食べたわぁ。 普段の食事もこれがいいんだけれどね」

「言えば聞いてくれると思いますけど」

「外聞って恐くてね。 あそこの家は、賄いみたいな食事しか出てこないって噂になっちゃうのよ!」

「そうなのですか?」

「注目されるのって面倒でもあるのよね。 ありがたくもあるけど」

「……確かに面倒ですね」

「それは、社交界の?」

「はい、()()でしたから」


奥様は困ったような顔をした。


「全然違うのにね。 カミラがこんなに可愛いのを知らないなんて、まわりの方々が気の毒だわ。」


私は苦笑するしか無かった。


「カミラ、知ってる? 何でも出来ることが、必ずしも、美点では決して無いの。」

「……どうしてですか?」

「そういう人はね、一つのことに、ものすごく長ける人には、勝てないのよ。」


その言葉に、カミラの目から鱗が落ちた。


「カミラはカミラの良さがあるわ。 きっと、そういうところに、ローレンツは惚れたのね」

「ローレンツ様が……私を?」

「えぇ、そうよ。 決して都合が良いからではないわ。 

 だって、どんなことがあっても冷静なローレンツが、カミラのことになると、顔が赤くなったり、青くなったり、ころころ変わるんだもの。 驚いちゃった。」


ローレンツ様が……本当に?


「自信を持ちなさい。 あなたは、充分魅力的な女性よ。」

「奥様……」

「ただ、社交の練習はもっとしなくっちゃね?」

「うっ!……はい」


私は、笑顔で答えた。


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