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20 優男な成金子息、家族会議を開きました


ベック男爵家・家族会議


それは、家族の秘め事、または緊急時に招集される会議である。


本日、その家族会議が、緊急で開かれることになった。


ベック家の、とある部屋に家族が集結したところで、家族会議、もとい食事会が行われた。


「今日、招集したのはローレンツだったね? 何があったんだ?」


口火を切ったのは、この家の当主、ティルであった。


「本日、急にアンネリーゼ嬢が、この男爵家に来た。」

「アンネリーゼが?」

「俺に用があったらしい」

「なぜだ?」


婚約者であるフレディが疑問を投げかける。


「まず、ミーシェとベルクが一触即発状態なのはご存知ですね?」

「あぁ。 もう皆も知っているだろう。 それに大忙しのはずだ」


先日、男爵家の各商会に王家からの依頼があった。


それは、貿易国ミーシェに日用品を支援するため、国から依頼された品物を至急用意しろというものだった。

用意したものは国が買い取り、ミーシェへ船で持って行くらしい。


以前、旧友のエリクに聞いた通りになった。


「そのミーシェから王族が、留学に来るんです。」

「なるほど。 避難だな」

「それで、その王族がどうやら、俺の絹に興味を持っているようなのです」

「……いやなのに目をつけられたな」

「その情報だけ…だったのか?」

「表向きは。 実際にはカミラのことを子爵家の密偵じゃないかと疑っていたのです。

 そうだよな……ヴェンデル」


皆、ヴェンデルの方を向く。


「ヴェンデル、アンネリーゼ嬢を使って、カミラのことを探ろうとしたんだろ?」

「ヴェンデル。 ……人の婚約者を使ったのか?」


ヴェンデルはふてくされるような顔をした。


「だって、おかしいだろ!? 

 貴族なのに使用人のスキルを高めたいなんて!

 絶対うちのことを探っているに決まってる!」


すると、「あ」とハンナが声を上げた。


「そういえば……私、フレディとヴェンデルに契約書のこと言ったかしら?」

「なんですか?それは」


二人は「何のこと」というような顔をした。


「言ってなかったか。

 カミラ嬢は契約結婚をしないかと持ちかけてきたんだよ。

 ただ、内容はカミラ嬢がローレンツに振られる前提だったんだ。」

「カミラ様は、あの容姿なのに、自分の容姿にあまり自信を持っていないの。

 きっとローレンツに振られるだろうから、もし別れる時はローレンツに家督を譲り、自分は出て行くと書いてあったのよ。」

「使用人になりたいのは、どこへ行っても働けるようにしたいからだそうだ。

 彼女は学園を出てはいないからな。」


「……」


2人はあっけにとられた顔をすると、フレディはいきなり笑い出した。


「だから……使用人か! やっぱり面白い子だなぁ!!」


ヴェンデルは黙ったまま、口をぽかんと開けていた。


「それで、アンネリーゼ嬢が来た時に、首に手を回され、胸を押し付けられたのです。

 その姿をカミラに見られてしまいまして……」

「なるほど……彼女はやっぱりって思うだろうね」


ティルはやれやれといった顔になる。


「用件は分かった。 ヴェンデル。 お前のしたことではないが、これはアンネリーゼ嬢に探らせたお前の責任だ。」

「……はい」

「お前にはまだ、優秀な情報屋が居ないのだろう?

 もっと、人を見抜く力を持った方が良い。」

「……はい」

「ヴェンデル。 本日から、一ヶ月間、ヴェンデル付きの侍女を外す。

 1人で準備しなさい。 起きるのも自力で起きろ。

 客が来るとき以外は、使用人を使うのをやめろ。 ……いいな」

「……わかりました。」


ヴェンデルは眉を下げ、少し悔しそうな顔を浮かべた。

それを俺は見逃さなかった。


「俺も追加させてくれ」

「ローレンツ兄上……」

「ヴェンデル。 俺は今回のこと、かなり怒っている。

 出来れば、俺と一ヶ月間話さないでもらいたい。」

「え!?」

「俺もだ。 勝手に婚約者を使われた身としては、怒りしか無い。

 せめて俺を通して欲しかった。」

「フレディ兄上……」

「もし、早くこの状況を抜け出したいのであれば、カミラの良い噂を流せ。

 アンネリーゼ嬢にも同じことを言ってある。

 俺がカミラの良さをたっぷり語ってやるからな。

 良い噂を期待している。」

「……はい」


力の無いヴェンデルの声が、部屋の中の重苦しい空気に溶け込むように、消えた。


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