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13 優男な成金子息、婚約者の親族に試されました(後)


早速本題の契約結婚についての話になった。


「まず、カミラが書いた結婚契約書だ」


・子爵家の負債を清算すること


・ローレンツにカミラとは別に好いている人が出来、カミラとの間に子どもが産まれていれば、その子に子爵家を継がせ、カミラは出て行く


 そのとき、妹達がまだ家にいる場合、養うことを条件とする


・カミラをベック男爵家の使用人として働きに出すこと



ベルンフリートが読み上げると、皆渋い顔になった。


「なぜ、カミラは子爵家を出て行かなければならないんだ?」

「まるで、振られることが前提で書かれていますね」

「あと……なぜ、男爵家の使用人として働きに出る必要があるのでしょうか?」


「謎だわ」とハンナがつぶやくと、皆、うんうんと(うなず)く。


ここで、俺がカミラから聞き出したことを伝える。


「彼女は、自分の容姿に自信がないようです。

 きっと、僕に愛想を尽かされると思っています。

 男爵家に働きに出る理由は、使用人としてのスキルを上げ、

 どこへ行っても雇ってくれるようになりたいそうです。

 学園を出ていないのも気にしていました。」


すると、カミラの親族達は苦い顔になった。


「俺のせいだな。 借金に追われて、通わせてやれなかったから」

「本当は伯爵家から金を出したかったのだが、息子達に阻まれてな。

 それに、容姿の件はうちの孫が元凶だ。」

「ダンクマールですか」


俺が訪ねると、アドルフはこくりとうなずいた。


「あやつにカミラの社交界デビューのエスコートを頼んだ。

 だが、あいつが一緒だったのは、行きと帰り、それとダンスを一曲踊っただけで、すぐ離れてしまったそうだ。

 しかも、カミラを『魔女』と吹聴したのもダンクマールだ。」


ベック男爵一家の顔も厳しくなる。


「そんな息子さん方に、伯爵家を継がせるので?」

「ん〜……考え中と言っておこうか」

「……なるほど」

「それより、カミラだ。 ローレンツ卿。 この条件をすべて飲むつもりかな?」


アドルフの問いに、俺は重い口を開く。


「正直、負債を清算すること以外は必要ないと思っております。

 ただ、使用人になりたいのは、本人の強い希望ですので、婚約期間中のみ、許可しました。

 あと、別れる場合、カミラ嬢が出て行くのではなく、僕が出て行き、お金を定期的に支払うことを提案しました」

「うん、それが妥当だな。 ちなみに別れる予定は」

「ありえないですね」

「ん。良い答えだ。 まぁ、婚約期間中に使用人として働くのは許可しよう。

 そちらはどうだ? ベック男爵」

「んー……問題があったときは、すぐに中止させることを条件に入れてくださるなら、

 こちらは何も言えません」

「よし、それでいこう。」


これで、今日はお開きということになった。


「今日はご足労頂き感謝する。」


アドルフは笑顔でティル達、男爵一家に感謝を述べた。


「いいえ!こちらこそ、良い縁がつなげて嬉しく思います。 ……しかし、なぜこちらに集まったのですか?」

「それは……子爵家は使用人がおらず、十分なもてなしができないからだよ。

 あとは……聞かれたくない話もありましたから……な?」

「もちろん。 商売人として心得ております。」

「カミラに聞かれたくない話もあったので、カミラ抜きにしたのだ。

 カミラはダンクマールが『魔女』と流したことを知らないからな」

「なんとまぁ……後から知った方が酷なのでは?」

「というか……カミラはあまりダンクマールのことを覚えていないんだ。

 その時のことがショックだったのか、顔も思い出せないと。

 会ったのはそのときが初めてだったし、それ以来、すれ違ってもわからないそうだ。」

「……なるほど、言ったとしても覚えていないと」


親達の話が終わると、俺はここに来た時に、不安に思ったことを口にした。


「そういえば、子爵家は使用人も居ないのでしょう? 今、子爵家はカミラ嬢と妹達だけですか?」

「俺の部下、騎士団の連中で、今日非番のやつに頼んだ。

 勝手知ったる人の家だし、子ども達も小さい頃から知ってる。」

「それは安心ですね」


俺ががホッとすると、ベルンフリートがティルに向かいあう。


「では、婚約期間中、カミラを男爵家の使用人として、よろしく頼む」

「はい。 責任を持ってお預かり致します。」


2人は、固い握手を交わした。


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