表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/38

12 優男な成金子息、婚約者の親族に試されました(中)


「婚約の件なんだけど、うちとしては、ぜひ、ローレンツ卿に来てもらいたい」


俺はこんなにあっさり言われるとは思わなかった。


「だが……まず、剣で俺に認めさせろ」


アルベルツ子爵は低い声を出して、剣を俺に差し出した。


そういえば、この人騎士団の人だったっけ?


俺は素直に剣を受け取り、アルベルツ子爵の後をついて行く。

手合わせは庭でやるらしい。

その場に居た皆もぞろぞろとついて行く。


庭に出ると、いくつか席も用意されており、見物人はここで見守るらしい。


「本気で来ていいよ。 君、剣をたしなむみたいだし」

「では、遠慮なく」


アドルフが審判をし、「始め」の声で、互いに近づき、剣を合わせる。


「おお!良い太刀筋だね。 机仕事が多いはずなのに、なぜだい?」

「仕事上、絡まれることもありますからね。 鍛練はしていますよ」

「こうして打ち合っているのに、余裕そうだ。 さては、かなりの手練れだね?」

「元は平民ですよ? 荒くれ者との付き合いもあります。」

「君の持ち札かな?」

「その通りです。」

「出来れば、カミラを巻き込んでほしくないな」

「彼女には知られたくないですね」

「それは無理かもな。 あの子は好奇心も強いから」

「では、あえて紹介して、あまり近づかないように言うしかありませんね」

「そうしてやってくれ。 人は秘密にしていると、それを暴きたくなるものだからね」

「……肝に銘じます。」


こんな会話が交わされている間、周りの目には凄まじい剣の応酬が映っていた。


「すごいなぁ……べルンフリートはかなりの手練れだと思っていたが……まさか対等にやり合えるレベルとは……」

「下町はごろつきも多いですからね。 あと、学園に通っている間、みっちり稽古をしていたそうです」

「はぁー……文武両道とは。 ……へたに高位貴族と結婚させるより……良いな。」


アドルフとティルは、観戦しながら、のんびりとそんな会話をしていた。


一方女性陣はというと。


「……」


目にも留まらぬ早さの2人の剣技に、しばらく言葉が出なかった。


「はぁー……これが剣技なのかしら?」

「すごいわ……ベルンフリートと対等だなんて……」

「兄弟の中でも、ローレンツは特に、全体の能力が飛び抜けておりますから」

「まぁ……もしかして、跡継ぎの候補だったのではなくて?」

「そんな話もありましたが……本人がまず、自分の商会をやりたいからと、兄に譲っておりました。」

「あらぁ…こう言っては失礼かもしれないけれど……優良物件ではありません?」

「そうおっしゃって頂けて光栄です」

「自慢の息子さんで……羨ましいわ」


そんな会話が繰り広げられる中、俺たちの戦いに幕が閉じた。


俺は一瞬の隙を突かれ、キィンと音を上げ、手から剣を弾かれてしまった。

そして、ベルンフリートが俺の喉に剣を突きつけた。


「勝負有り! 勝者、ベルンフリート」



勝負が終わり、部屋に戻ると、出て来たドリンクを飲みながら、ベルンフリートは満面な笑みを浮かべていた。


「いや~!良い勝負だった。 良い汗かいたよ。」

「こちらこそ、勉強になりました。」


剣を交えて分かり合った2人に、これ以上の言葉は必要なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ