10 強面貧乏お嬢様、家族から祝福されました
カミラの家族が一気に登場しますが、詳細は次回。
次回からは、またローレンツ視点が続きます。
この日、アルベルツ子爵邸は喜びに満ちていた。
私、アルベルツ子爵の長女カミラが、ベック男爵の次男ローレンツ様と、めでたく婚約の運びと相成ったのだ。
親の目だけで見極めたいと、わざわざ母の実家で、ローレンツ様とそのご両親と会ったそう。
そして今日は、アルベルツ家の親族で祝うことになった。
「「「「「「カミラ(姉様)、婚約おめでとうーーーーー!!!!!」」」」」」
皆に祝ってもらい、久々に私も顔が緩んでいる。
「皆、ありがとう」
「いや~……かなり都合の良い話なんで勘ぐってしまったが、なかなか良い人を選んだじゃないか! でかしたぞ! カミラ!!」
「調べてくれって泣きついてくるんで、なんだと思ったら……カミラの結婚相手とは……もう、そんな年か」
カミラの父、ベルンフリート・アルベルツ子爵と、母方の祖父、アドルフ・ブレンターノ伯爵は、嬉しそうに、だが少し寂しそうに微笑む。
「ベック男爵を取ってみても、非常に優秀な商売人だ。 何より人柄も良い!
その息子とあって、親とは別分野の商会を興し、成功しているところをみると、将来有望だな。
20才だし、17のカミラと年回りも良い!!」
父と祖父が認めてくれて良かった。
「でも……使用人はやる必要、ないんじゃない?」
母方の祖母である、ベッティ・ブレンターノ伯爵夫人が、優しい声で尋ねた。
「いいえ! これは私に取って必要なことだと思いますから! むしろ、やりたいのです!!」
私はが思わずハキハキと答えると、ベッティお祖母様は苦笑した。
「ならいいんだけど。 ……それにしても、ローレンツ卿はすてきな人ね。
べルンフリートの剣について来れるなんて、すごいと思うわ」
「え? 剣を扱えたのですか?」
「あら! 知らなかったのね。 ごめんなさい。
ローレンツ卿に会った時に、べルンフリートが言ったのよ。
「剣で俺に認めさせろ」ってね」
「格好良かったわよ。 あなた」
「よせ……アマーリア」
私の母、アマーリア・アルベルツ子爵夫人とべルンフリートが惚気るのを見て、みんな生温かい目をした。
「背が高い人だったけど、剣の腕も立つんだ。」
次女のデリアが感慨深そうにつぶやいた。
「ぼーっとしてそうなのにね」
三女のドリスは少し辛辣気味だ。
「そうなのよ!
私もちょっと心配だったの。
けれど、剣の腕は立つわ、経営者だわで、もう!圧倒されたって感じね」
興奮気味でアマーリアが言う。
「まぁ、現役には勝てなかったけど、かなりの腕ね」
「あれで普段、商売やっているとは、思えなかった。
男爵で、しかも騎士の家じゃないのに、さすがだよ。」
「きっと商売柄、危険な場面もあるんだろう。 男爵と縁ができたのは大きいな」
反対されると思っていた私にとって、この状況は奇跡に近かった。
だが、一方で、心配事もある。
私はローレンツ様以外のベック家の方々にお会いしたことがないのだ。
なので、不安が無いと言えば、嘘になる。
それでも、使用人として働けるなら、頑張らなくっちゃ!
私は密かに気合いを入れた。