表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
60/85

これまで、これから

 妄想全開の和美を現実に引き戻してから、私たちは今後のことを話し合った。


 まずは「むこう」のこと。

 こっちで16年生きて、お父様やお母様はもうほんとうの家族だし、私は私で「瑠璃」だけど見た目は「リリアンヌ」だから、もしそういう方法があっても「むこう」に帰ることは難しいと思う。でもやっぱりお父さんお母さんお姉ちゃんにはきちんとお別れをいっておきたい。


 ほんとはあっちとこっち、自由に行き来できればいいんだけど、そんな便利な魔法があったら、私たちはそもそもこの姿でここにはいないんじゃないかって和美の意見はそうかなって思う。問題は、海流がどんな魔法をつかったのか見当がつかないことなので、今の私たち二人だけではどうしても限界がある。というかまったく手も足も出ない。なので、できるだけ早い機会にフェル様にもう一度会って、私たちの事情を打ち明けるのがいいんじゃないかってことになった。


 フェル様はこないだの話以降茶飲み友達になってるので、お茶会の時にちょこちょこアドバイスを頂いたりしてるけど、さすがにこの話は他のみんなの前でできないから、こないだみたくこっそり会えるようフェル様にお願いしないと。


 一応、「薔薇園」には魔法の専門家がいっぱいいるし、レティシア先生たちにもいろいろ聞きたかったけど、あんまり詳しい事情は話せないし、逆にこういう環境だから海流が潜んでいる可能性が高いから警戒した方がいいらしい。私たちが目立つ動きをすると海流が気付いてしまうので、誰が海流なのかある程度絞り込めるまでは自重することにした。

 海流の気持ちに気付いてなかった私がこの後海流がどう動くかなんてえらそうなことは言えないので、それは和美にまかせることにして、


 私は、海流の気持ちにどうこたえるか、きちんと考えないといけない。


 こっちに来たことはもうしょうがないことだと思ってるし、いまさらそれについてあれこれ海流に言う気はない。だけど、海流が何を思ってそうしたかは本人の口から聞いておきたいし、私以外の人を巻き込んでしまったことについてもきっちりけじめをつけないといけないと思う。

 今さらって感じでもあるけど、もしできるなら他のみんなだけでもきちんと帰して欲しいし。


 いまの私はアンディの婚約者で、それは国中の人が知ってるのでおそらく海流も知っているだろうから、和美の言うように「私を自分のものにする」ために、またとんでもないことをやらかすかもしれない。そしたら今度は私たちだけの問題じゃなくなる。

リリアンヌ()」はギュスターブ公爵家の娘で、レストニア王国の次の王様にあるアンディの婚約者だから、前の、ただの高校生だった「喜多村 瑠璃」とは状況も影響力もぜんぜん違う。自分のことをこう言うのもなんだけど、もし私がいなくなったらものすごく大きな騒ぎになると思う。


 自分のことが大切、ってわけじゃ……、違うね、

 私は、自分のことを大切にしなきゃいけない。だからもし、海流がまた変なことを考えてたら、今度はちゃんと私が止めないといけない。たぶんそれは私にしかできない役目だから、私にできないことは私よりうまくできる人にまかせて、私は私のできることを一生懸命やる、そう決めた。

 正直、どうして海流が私のことをそこまで好きになってくれたのかはまだよく分かってない。でもこれもそのままにしとくんじゃなくて、海流の気持ちになって考えてみて、私なりの答えを出した上で、ちゃんと海流の気持ちを()()()と思う。


 いまの私の中にはアンディがいる。


 たとえば久住くんに未練がないかって言えば多少はあるけど、どちらかというと「初恋の大切な思い出」みたいなもので、いまのこの気持ちとは違うと思う。


 わたしはアンディが、だいすき。


 あの夜、アンディに告白されてから、私の気持ちはずっとアンディといっしょにある。いまも。


 だから、もし海流が私にもう一度そう言ってきたとしても、私はその気持ちに応えられない。私が中途半端に思わせぶりな態度をしていたんだとしたら、それは私の責任で、だから私がきちんと海流を()()()あげないといけない。

 そうしないと私も、他のみんなも、なにより海流自身が先に進めなくなってしまうから、だから私は海流をきちんと()()。そう決めた。


 でも、それでももし、海流が止まらない時は、




 ……良くないことを考える前のはやるだけのことやってからにしよう。私はものごとを悪い方向に考えるくせがあるらしいから、まだ何にも起こってないのに悲観的になるのは早すぎる。


 次に「ヒロインちゃん」のこと。


 これはアンディに近々「幼なじみ」のクリスを紹介してもらう予定なので、その()()をたどれば割と早く特定できるんじゃないかと思うし、できればそこで友達になれたらいいなと思う。


 探す前はなんて言うか「悪役令嬢フラグ」を回避するために友達になっておかなきゃ、的な義務感みたいなものがあったんだけど、「友達」ってそういうのじゃないし、むこうが嫌がってるのに無理やり友達って言うわけにもいかないから、その子を見てから考えようと思う。

 うまが合うならそれでよし。そうじゃないならそれはそれで真正面から衝突しなければいいかなくらいに考えてる。

 まあ今の私は衝撃吸収ボディなので、多少の衝撃なら受け止めますよ。ふふん。


「最近コルセットのハトメが外れたんだって瑠璃?」


 うっさい!!あんな拷問器具なくてもいいんだよ!


 ……ともかく、ヒロインちゃんについては海流のことより多少見通しは明るい。

 だから、


 みっつめの、アンディのこと。

 についてもヒロインちゃんとのことが動き出せば、アンディにぜんぶ話すのも早くできるかもしれない。

 私はアンディに言えないことが多すぎて、その悩みや不安がアンディに伝わって、それでアンディが不安定になってるってフェル様は言った。だから、私がいろいろ抱え込み続けるのは私とアンディだけじゃなくて、もっと大きな範囲で影響を与えるんだと思う。私は隠し事が得意じゃないから、どんなに頑張ってもアンディにはバレてしまう。ていうかアンディだけには隠しきれてないみたい。

 アンディすごい。ぱない。


 どっちにしてもいずれは話すことなので、その時期を早めるために海流のこととヒロインちゃんのことの両方をなんとかするのが先決だ。そしたらたぶんアンディも落ち着いてくれるし、レオん時みたいなこわいことは起こらないと思う。


 最近、アンディの周りには人が増えてきた。

 最初はアレックスとふたりだけのことがほとんどだったけど、それからレオが混ざるようになって、やっぱり美形が3人そろうと、っていうか、実はレオの従者のセバスも眼鏡系男子でアプデ後の追加攻略対象って和美から聞いたから4人だね、セバス空気感ぱないけど。まあそれだけのメンツだからそりゃ女の子は寄ってくる。たまに離れたところからテーブル見てるけど、ちょくちょく女の子に埋もれて姿が見えなくなる。


 アンディはあんまり歓迎してないみたいだけど、私はいろんな女の子と接する機会があるのは良いことだと思ってる。浮気はやだけど。

 でも、和美じゃないけどはっきり側室に立候補したがる子もいて、それが嫌みたい。ところがそこで出てくるのがレオだったりする。


「そうか。皇家の側室が望みなら俺に言え。セバス、彼女をリストに入れておけ」


 って感じでうまいこと横取りしてるらしい。

 だいたいの子はそこで腰が引けるようなんだけど、たまにつわものがいて、レオのいう「リスト」にはそこそこの人数が名を連ねてるらしい。おさかんだなあ。


 でもあれは、そういうのを嫌うアンディに、レオなりの気配りがあってそうしてるんだと気付いてからちょっとだけレオを見直した。レオは相変わらず強引な感じだけど、それなりにつきあいが長くなって、レオはレオなりの考えでそうしてて、それでも前よりは少しだけど人当りが良くなってるのが分かるようになった。でも最初のあれはまだ許さないけどね。


 ほかにも、女の子だけじゃなくて、入学式の時のレイオルくんだったっけか、彼や彼の友人たちもアンディとよく話してるのを見るようになった。

 たぶん最初レイオルくんはアンディに取り入るつもりだったんだよね。でもアンディはそういうのをすごく嫌ってて、アレックスのこともあったからすごく怒った。

 でもレイオルくんはその後ちゃんと謝って、反省もしたみたいだし、アンディのとこにレイオルくんを連れてきたのはアレックスらしい。

 アレックスは大人だなあ。

 それで、ホントの同級生としてちゃんとつき合いが始まって、今はすごく仲が良いらしい。


 そうやって、アンディの世界が少しずつ広がっていくのを見れるのが、私はとてもうれしい。


 この先もずっと、こうしてられたら、いいなあ。


「さ、行こうか。瑠璃」

「うん」


 だから、

 私は頑張れる。


 これまでのことと、これからのことのために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ