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リリアンヌ対にせリリアンヌ

 キャサリンちゃんは、しゃべり方とおんなじように見た目もおっとりした感じだった。ちょっと垂れ目がちで左目の下に泣きぼくろがある。あらー、ちょっとえっちな感じだわ。で、髪はウェーブのかかったふわふわで、なんか全体的に柔らかそう。おまけに服の上から分かるくらいにすっごい女子力というか攻撃力高そうなのがついてる。()()()だ。男の人は目がいっちゃうだろなー。私もいくけど。


「どうしましたー?」

「いえ、何でもありませんよ」


 私がじろじろ見てるのに気付いて、こてんと首を傾げる。ああでもとりあえずこれは聞いとくかな。


「でも、どうして私に声を掛けられたのですか?」

「うーん。お父様に『薔薇園でリリアンヌ様と仲良くなれ』って言われたんです」


 がく。えー、計画的かい!「でもー」ん?


「さっきの、入学式の、リリアンヌ様を拝見してー。ちょっと、他の皆様と違うな、と思いましてー。でも、他の皆様はリリアンヌ様を遠巻きに見るだけでしたのでー。何でだろうと」


 へえ知らなかった。普通に声掛けてくれればいいのに。じゃ、キャサリンは私が気になって?


「そうしたら他の皆様が『貴方。ちょっとリリアンヌ様をお誘いなさい』って言われましてー」


 結局強制かい!


「ああでもちょっと嬉しいなーと思いまして、それで声を」


 まあ。なんと言うか、正直な子だね。


「そうですか。お声を掛けて頂きありがとうございます」

「いいえー。でも、皆様がお待ちですしー。ちょっと急ぎましょうかー」


 うん、全然急いでるように見えないからすごいね。


 階段を降り、通路を抜けて、キャサリンとラウンジの扉をくぐる。

 うっわ、広っ!

 私が行ってた高校にもラウンジっていうのか、そういうのはあったけど、こんなに広くはなかった。「ハトプリ」にもよく出てくる場所でもあるから知らない訳じゃないけど、マップで見るか背景で見るかだけだったしなー。こういうとこ、まだたまに驚かされる。

 ラウンジのある棟は男子寮と女子寮を挟む中間にあって、寮施設内ではここ以外で男女が会うのはNGになってる。だから今もあちこちで色んな人たちがおしゃべりしたり、お茶や食事してたりするんだけど、

 …なんか、独特の雰囲気出してる一角がある。女子だけの集団だ。


「あの…」

「はいー?」

「もしかして、あの方たちですか?」

「はいそうですよー。では行きましょうリリアンヌ様」


 私を置いてすたすた、というかゆるゆると行っちゃうキャサリン。

 いやいや待ってよ。ちょっとあれ、めんどくさい集まりの奴じゃない?女子独特のなんかヤバいやつ!うちの高校にもあったよ、なんかグループ組んで集まってるの。

 私あんまりたくさんの人と話すの得意じゃないから近寄ったことないんだけど、あれでしょ?何組のあの子は誰と付き合ってて、だから生意気だ、とか、今度どこどこの学校の男子と合コンするとかって、なんか派閥?っていうの?縄張り争いっていうの?そうでしょ、そういうのでしょ?


 えーキャサリン全く気付いてないのー?

 しょうがない。ここまで来たんだし、アンディが来たら「待ち人が来たので失礼します」って言っちゃえば良いか。


 テーブルに近づくと、まあ化粧臭いのが沢山だ。

 いや、私だって化粧くらいするよ?でも「瑠璃」ん時と違ってリリアンヌはもう顔がすでに派手だから、そんな厚化粧したら歌舞伎みたいになっちゃうと思う。歌舞伎見たことないけど。でもみなさんはこれでもか!てくらい盛っていらっしゃいますね。おまけに香水もぷんぷんだ。色々混じりすぎてもはや空気が澱んでるよ。換気、換気!

 そりゃ他の人が距離をとるはずだよ。においと雰囲気でここだけ異空間だもん。


「リリアンヌ様をお連れしましたよ。イリーナ様」


 キャサリンが声を掛けると、テーブルの全員が席を立ち、淑女の礼で私を出迎える。


「お待ちしておりましたわ、リリアンヌ様」


 その中で、ひときわ目立つ女性が私に声を掛けてきた。なんか見たことある子だなあ。すっごいロールがぐるぐるで、ずっと回転してるようにみえる。


「あ、ええ。この度はお招き頂き、ありがとうございます」

「いえ、とんでもございません。私たちにとって、この場にリリアンヌ様をお招きできたのは何よりの喜びでございますわ!」


 いやだったら自分で声掛けなよ。


「あら、立ち話もなんですわね。これは大変失礼を致しました。さ、どうぞこちらにお掛けになって下さいまし」


 イリーナはテーブルの上座を指す。まあ、私なんだかんだ言っても公爵の娘だからなあ。断ると角が立つんだろうなあ。


「ありがとうございます」


 キャサリンが私の椅子を引こうとしたので、やんわりお断りして着席する。イリーナが怪訝そうな顔をして、キャサリンがちょっと困ったような顔をしたが、何も言わず皆が着席した。

 私を中心に右手に5人、左手にも5人。左の一番手前にイリーナが座り、一番向こうの右にキャサリンが座る。遠い、遠いよキャサリンちゃん!


「まずはそれぞれの自己紹介から、まずは私からですわね」


 そう言ってイリーナが司会の真似事をする。イリーナはもう一度立つと、


「私、ラインフォード侯爵家の長子、イリーナでございます」


 と軽くスカートの端をつまんで挨拶をする。「カーテシー」だったっけ?

 まあ制服のスカートなんで、持ち上げると大変はしたないことになるし、そもそもスカートの裾をつまむのって膝を曲げた時にスカートが床につかないように、じゃなかったっけか。よく分からん。

 でもまあさすが侯爵家というか、多分私よりさまになってる。

 うーん、さっきからこの子、ずっと気になってるんだよねー。どこで見たんだっけ。私の考えをよそにそこから順番に挨拶が続いて、最後のキャサリンが終わると今度はこちらのご挨拶。


「リリアンヌ=ギュスターブ、公爵家の息女でございます。皆様には、何卒よしなに」


 シンプルに自己紹介して着席する。

 ふー。みんなこっちを見てるからちょっと緊張しちゃうよね。挨拶って。


「お話の前にまずお茶を。キャサリンさん?」

「あ、はい。今、準備しますー」

「いえ、お待ち下さいイリーナ様」

「はい?何でしょうリリアンヌ様?」

「大変申し訳ございませんが、私、先約がございまして」

「はい?」

「この後、アンドルー様とお会いする予定がございまして。アンドルー様をお待たせするわけには参りませんのでお茶はまた、次の機会にゆっくりと」


 イリーナはしまった、という顔になる。


「それは、私共の配慮が足りませんで、大変失礼を致しました」

「いえ。先に伝えておけば皆様のお手を煩わせることもございませんでしたのに。申し訳ございませんね」

「とんでもございません!ですが、殿下がおいでになるまでは構いませんでしょう?」


 ちっ、逃げそびれたか。なーんか企んでるんだよなー、この子たち。

 キャサリンちゃんは、あ、お茶取りにいっちゃったか。なんかあの子だけここの中で浮いてる感じなんだけどなー。


「実はリリアンヌ様に折り入ってご相談がございますの」


 うわー!予想通りめんどくさそうなのがきたー!!


「何でしょうか?」


 内心を見透かされないよう、表情を変えずに答える。


「実は私共有志で、淑女の会を立ち上げようと思いますの」

「淑女の会、ですか?」

「はい!それで、リリアンヌ様には是非ともその会長の座に就いて頂きたく、こうして御足労頂きましたのよ」


 ん?何か聞いたことあるなそれ。


「それは、どのような会なのでしょう?」

「はい!『淑女の、淑女による、淑女のための会』ですわ!ほっほっほ!」


 なんだそのまったく具体性のない会は。

 それの会長を、私が?会長、ねえ。あ。もしかして、あれか?


「もう会の名も決めてありますのよ!訊いて頂けますか?」


 へー。なんかそれ分かってきた。思い出してきたよ。


「ちなみに、何と名付けられる予定なのですか?」


 多分、私の予想は当たってる。


「はい!『白薔薇会』と名付ける予定ですわ。我ながら大変良い名だと思っておりますのよ。

 おーほっほっほっほっほっほっほ!」


 やっぱだーーーーーーーー!!!やっぱそれだーーーーーーーーー!!!!


 それ「ハトプリ」ん時にリリアンヌ()がヒロインいじめてた時のグループ名じゃーーん!!!

 なんだよさっきイベント回避できるって期待したばかりじゃんか!!!

 なんで即フラグ立っちゃうんだよーー!!!!

 返せ!私のシリアス返せ!!


 私の表情を見て、ネーミングを気に入ってくれたと勘違いしたのか、イリーナのトーンが上がる。


「リリアンヌ様もお気に召したようですわね!私も嬉しいですわ!!」


 あっ!ていうことはこの子、イリーナって!あれか!リリアンヌの腰巾着で、キャラデザがほぼ丸被りで「2Pカラー」とか「リリージ」とか「殺意の波動に目覚めたリリアンヌ」とか「双子のリリーズ」とかいうあれか!!

 うっそ、私この子とそっくりなの?私、こんななの?う、嘘でしょ。嘘よね!?違う子だよね?


「私、以前から周囲に『リリアンヌ様と似ている』と言われておりましたが、やはり顔が似ると、感性も似るようですわね!大変嬉しゅうございますわ!!

 おーっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほ!!」


 ほ、本物だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!

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