20話 これからと残った謎
皆様すみません、かなり遅れてしまいました!
もう少しすれば、時間に余裕ができると思うので、頑張りたいと思います。
閃光が収まると、そこには消えた筈の主がいた。呆然とした様子で主をジッと見つめる某等の姿に驚いたのか、タジタジになっている主の姿を見ている内にそれが夢幻や虚像などではなく、本物だとようやく認識した時、主がいなくなった時にも流れなかった涙が止めどなく溢れ出してきた。
こちらが泣いているのに気付いた主が、慌てて駆け寄って来るがそれを某ではなくシエルに向けるように促した。
なぜなら、シエルは某とほぼ同時に主が幻影の類では無い事に思い至ったらしく、先程からずっと泣きじゃくっている。
――その涙は、閃光が奔る前の涙とは違って心からの安堵がこもっており、某のような偽物が遮ってはいけない物だと思ったから。
……無論某も主に慰めて欲しいとは思ったが、某は刀で所詮は人殺しの為の道具。主等のような血の通った者達を差し置いて、こんな事を思うこと自体が間違っているのだ。
そう自身に言い聞かせながら、主に向かってこの言葉を送った。
「まずはお帰りなのである、主」
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暗転した視界が元に戻ると、先程あの場所に飛ばされるまでいた工房に戻っており、その手はあの刀をしっかりと握り締めていた。元いた場所に戻れた事に安堵しつつ、何故かこちらを呆然とした様子で見つめる討魔とシエル、クラウン爺を見て若干気圧されてしまったが、唐突に討魔とシエルが泣き出すのを見て、咄嗟に位置の近かった討魔に駆け寄ったが、シエルの方へ向かうよう促された為、少し後ろ髪を引かれながらもシエルに落ち着くように声を掛ける。
「シエル、落ち着け。俺は大丈夫だから」
だがシエルの涙は止まらず、
「…良かった……っ、…お兄さんが無事で本当に良かった………っ!」
と呟いており、討魔には
「まずはお帰りなのである、主」
等と言われ、いい加減状況が飲めなくなってきたので、比較的に落ち着いていたクラウン爺に事情を聞く事にした。
~爺説明中……、少年理解中……~
「……」
クラウン爺の話をまとめると、俺が刀を握った瞬間に俺が蒸発したかのように消えてしまい、呆然としていたら今度は突如閃光が奔って、それが収まると俺が刀を持った状態で立っていた……らしい。
え?アレってただ気絶していただけじゃないの!?ウッソだろお前?!ということは、討魔やシエルを泣かせるくらいの不安を掛けてたってことなのか?
「討魔とシエル、クラウン爺。まずは心配かけて悪かった」
ひとまず現状を正しく理解し落ち着いたので、皆に謝罪をする。そして今度は、彼処で起こった事をこちらが説明する。
だが、ヤツのことはまだ話さない。
なぜかと言われれば、俺は未だヤツの正体を知らないし、何よりヤツから感じた威圧感から察するに、今のままでは彼女達を守れるかも怪しい。これだけなら、知り合いに注意を呼びかけるくらいはできるが、俺にしたように皆にも干渉して来るかも知れない。
説明しながらそこまで考えた所で、ハッと気付いた俺はクラウン爺にこう問いかけた。
「ところでクラウン爺、コレの代金ってどうすればいいんだ?」
「オリオンが消えたのはソイツのせいで、その責任はソレを鍛った俺にある。だから、お代はいらねえよ」
それに、とクラウン爺は続け
「ソイツは十分魔剣の域に達している。そんなのに取り込まれて戻ってくるようなバケモン染みた奴はお前1人で十分だ。だから、簡単に死んでくれるなよ?」
ソレを使いこなせる奴がいなくなるからな。と言ってくれるクラウン爺には、感謝しか感じない。
「ありがとう、コイツは大切にしよう。それで、なんていう銘なんだ?」
あっ……、というような顔をしたクラウン爺に一抹の不安がよぎる。
「おい、まさか…」
「まだ銘を彫っておらんかった…。オリオン、お前さんが決めてやれ。もうソイツはお前の刀なんだからな」
そう言われた為、若干悩んだがスッと心に浮かんだモノを声に出す。
「……黒桜。コイツの銘は、黒桜だ」
禍々しい程の圧を放っておりながら、それでいてその美しさは見るものの眼を惹きつける。浮かべる刃紋は、八重桜のような華やかな重花丁子。
そんな自分に相応しいと思えるような名前が付いて黒桜も気に入ったのか、リィィィン……と鈴鳴りのような音を鳴らした。
「ちょっと待ってろ、今から彫り込んでくる」
そう言って、黒桜を持って工房に引っ込んでいくクラウン爺と入れ替わるかのように、ようやく落ち着いたシエルと討魔が俺の横を巡って騒ぎ出す。
「主よ、今回ばかりは不安になったである。…おい、雌豚。そこは某の場所である、疾く離れるがいい」
「…駄目。お兄さんは私と一緒にいた方が安心できる。あなたみたいに、ずっとくっついているような人よりも、ね?」
そう言ってどちらも譲らなかった為、
「おい二人とも。いい加減にしないと、いくら二人でも俺は怒るぞ?」
と言うと、あっさり二人は大人しくなった。
そんな事をやっていたら、工房からクラウン爺が出てきたが、今回は怒らずにただ微笑んだだけだった。
「ほれオリオン。これでコイツは正真正銘お前の刀である黒桜になった訳だ」
「何度も言って有り難みが失せたかも知れないがありがとう、クラウン爺。早速試し振りしてもいいか?」
そう聞くと、
「ああ、一応俺も試剣はしてみたんだが、あんまり得意じゃなくてな。重心くらいしか分からねえ。お前さんも早くその黒桜を振ってみたいようだし、裏で試してみてくれ」
と言われた為、クラウン爺に言われた通りに工房の裏に向かった。




