表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/22

19話 夢の狭間と“危険人物”

今回は早めに書き上がりました!

 暗転した視界は、これまた一瞬で切り替わり、初めて神様・ヴィヴィと会った空間のような場所――即ち別世界である――であることが感覚で理解出来た。

ただ、あの世界と違う点を上げるとするならば、あの世界がただひたすらに白かったのに対し、ここは前世でたまに見た戦場跡のような荒涼とした荒野が広がっていた。

一応、――幸いかどうかは別として――オリオンとしての身体のままらしく、スキルも普通に使えた。

多分、前のように魂だけとかそんな感じだと思うので、彼方の事はあまり気にしていない。

突然こんなことになってしまったので、いつもの数倍くらいは警戒して動く。ちなみに無限収納空間(インベントリ)に放り込んでいた大剣や乾パンなどの食料、その他の生活必需品はそのまま持ってこれたので、その気になればあと2、3ヶ月は生き延びられる。だがコレは、生き延びられるだけで人としての最低限を無視すればギリギリ出来るだけ最悪なモノだ。

それはそうとして、警戒を続けていると遥か彼方――距離に換算すると2、30kmぐらい――先からこちらに向かって歩いてくる人影が見えた。

その人影は、気づいたときにはもう目の前にいた。

「お前は…誰だ?いや、何だ(・・)?」

ソレは一応ヒトのカタチをしていたが、薄く靄がかっており、その姿は前世で理性を失った時の俺を彷彿とさせるようなモノだった。

「……」

何も言わず、こちらへついてくるようにといった風に手招きをするソレに対して、若干警戒心を覚えたが何もなさそうなのでおとなしくついて行く事にする。

そうしてヒトかどうかも判別出来ない彼(彼女?)について行き、たどり着いたのは、前世だと円形闘技場(コロッセオ)やコロシアム等と呼ばれているような周りを観客席で囲まれたリングだった。

「ここで俺に何をしろと?」

ここに連れてこられた意味が分からず、そう彼に聞くと、彼は俺がここに来る前に触ったあの刀を手に持ち、かかってこいとばかりに刀を構えた。

薄々気付いてはいたが、ここでも戦わなければダメなのか…と、家を出てから戦いぐらいしか大きなイベントのない自分に若干呆れながら、大剣を構える。

相手の靄は、始めの合図をこちらに任せるらしく合図を待っている。そして、いつの間にやら観客席は満席になっており、こちらにまで喧騒が響いてくる。その喧騒を背にして、俺は合図を出した。

「いざ、尋常に…」

――この世界に来て2度目の殺し合い(・・・・)が始まる。

「…勝負!!」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 (オリオン)が刀に触れた瞬間に蒸発するように消えたのを見て、某は何故もっと強く引き止めなかったのかと後悔した。

某も切羽詰っていたが、ふと横を伺うとシエルは泣きじゃくり、クラウンは呆然としていた。

無理もないだろう、シエルは兄と慕うような人物だった主が一瞬で消えるのを見せつけられたのだから。まだ、幼い彼女は恐怖心に心が飲まれてしまったに違いない。クラウンに至っては、自分が打った最高とも言える作品が、前途ある少年を消したのだ。その傷は一生残っても仕方あるまい。

某はと言うと、あの時にもっと強く引き止めていれば、このような結果にならなかったのではないかと思ったのだ。否、思ってしまう(・・・・・)ぐらいには押しつぶされていた。

元々、某は主の剣であり所詮は道具だ。そんな某が、主の厚意に甘えてこのような腑抜けた状況を甘受していたのがそもそもの間違いだったと痛感した。

もしもあの時、主の提案を蹴って主の武器であろうとしたなら。某は3度も(・・・)主をを失うような悲しみを味わうことはなかったであろう。

この忠誠心が、造り手であるあの腐れ(・・)薄情尻軽女(・・・・・)に植え付けられたモノだとしても、もう2度と主を失う喪失感は味わいたくないと感じた、この思いだけは本物だと信じたかったから。

これからどうするべきか、それすらも分からなくなった状況に対して何も出来ないでいると、次の瞬間閃光が某達の目を()いた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ガァァンッ!キィィンッ!

斬撃を交わし合う度に響く悲鳴のような金属音とともに激しい剣戟の応酬が続く。

靄との戦闘が始まってから、早くも5分程が経過した。

奴と俺の戦闘力の差は互角か相手が僅かに上、なぜなら剣を交わし合う度に防御や回避をすり抜けてきた一撃が、こちらの身体を掠めていくのだ。

ただでさえ晄気(オーラ)操作を発動しながらの戦闘で体力を消耗しているのに、そこに防御をすり抜けてきた斬撃が掠っていくので、更に体力と神経をすり減らす。

幸いなことに何故か(・・・)山砕だけは、相手の刀にさえ当てればダメージを通すことが出来るので、俺としては山砕をどれだけ奴の刀に当てることが出来るか、奴からしたらどれだけ早く俺を削りきるのかが勝負の分かれ目になるだろう。

と、そんなことを頭の片隅で彼我の戦力差について考察している間に戦局が変化した。

剣戟だけでは埓があかないと感じたのか、奴は魔法か何かのスキルで空を飛びながらこちらに対して魔力を集めて放っているので恐らくは魔法によるモノであろう遠距離攻撃を始めた。

恐らく、剣が届かない範囲から一方的に削りきろうという考えなのだろう。実際、遠距離攻撃を持たない普通の剣士であればこんな状況になれば即詰みであろう。だが、兒嶋流にそのようなチンケな戦法に対する対策が存在していないわけがない。

まず、兒嶋流唯一の受け技である返の太刀・柳枝垂。コレは、6つの剣の中でも特殊で、他のモノが攻撃特化であるのに対して、相手が攻撃してくれなければ意味を成さない、そんな相手ありきの斬撃である。

その代わり、威力は桁外れで、相手の攻撃が持っている推進力を吸収して自身の斬撃に使われる推進力に変換する、つまり相手の攻撃が強ければ強い程こちらの一撃が強くなるという悪魔みたいな技である。また、受ける攻撃の対象は何でも良いようで、前世で戦車の(・・・)砲撃(・・)に対して使った時には、下手すれば山砕を超えるような火力を叩き出した。他にもただ相手の攻撃を受け流すことも出来る。だが、欠点として構えが余りにも特殊な為、何度も連発をすると対策をされる可能性もあり、また所詮は剣の範囲内でしか威力を十全に発揮できないので今回のように相手が離れた場所に居る際には使えない。よってコレは没だ。

だが、型のひとつでこのような状況に最も効果を発揮出来るであろうモノが存在している。それが兒嶋流第二の型・飛龍墜(ひりゅうつい)だ。何故幕末に完成したとされる剣術にこんな型が存在するのか、免許皆伝を持っている俺自身もよく分からないが使えるモノは取り敢えず使ってみる。

技の流れを簡単に説明すると、紫電で相手の下に飛び込んで、こちらに飛んでくる攻撃を柳枝垂で受けつつ、山砕や桜花を敵に叩き込んで地面に落とした後に上から山砕を直撃させれば型の終了となる。

流れを頭の中で反復しながら、奴に悟られないように紫電を放ちやすい構えに移る。

「疾ッ!」

と、鋭く息を吐きながら宙を舞う奴の懐まで踏み込む。

奴は靄の分際でなかなか芸達者らしく、顔も分からないのに驚いた様子を見せた。そして、自身が圧倒的に優位に居るという余裕を崩すことなくそのままこちらに対して攻撃を放ってきた。

だが、その程度の対応なんてモノこちらは端からどころか百数十年前から予想してきている。

型通りに柳枝垂を上手く使いながら、更に近づいていき、ついに奴が俺の剣の領域に入った。

「その余裕を抱いたまま墜ちていけ、豪の太刀・山砕!」

「――――ッッッ!!!」

おおよそ人間には出せないような声を上げながら、地面へと墜落していく靄。

だが、仕上がりはこんなモノじゃない。

空中で姿勢を整えながら、山砕の構えへと大剣を構える。

「これでようやく終わりだ――」

未だ地に伏したままである靄が、最後の足掻きとばかりに滅茶苦茶に魔法をぶっ放す。だが、そんな苦し紛れに放った程度のモノでは俺のMNDを突破することは出来ない。まあ、そんなモノなくても急所と刀を振るう為の腕以外に当たる奴は無視して突っ込んでいくだけだしな。

そんなことを考えていると、奴はもう目の前に居た。

「――豪の太刀・山砕!!」

辛うじて刀を間に滑り込ませたのまでは良かったが、所詮はその程度。落下による加速と元の馬鹿みたいな火力が相乗されている状態なのだから、焼け石に水でしかない。そんな苦し紛れの防御ごと靄を紙のように斬り伏せた瞬間、討魔の念話スキルのような感じで頭の中に声が響き渡った。

《ふむ、やはり貴様には(わたし)の身体から造られたモノを扱う資格があるようだな》

ちょっと待て、この声は一体何、いや何者だ?我の身体から造られたモノ?何訳わからないことを言っている?

《いずれ分かるであろう、いと小さきモノよ。其方と逢える時が来ることを楽しみにしているぞ》

…決めた、コイツはヒトかどうかを別として間違いなく“危険人物”だ。なるべく関わらないほうがいい。なぜなら、声だけで俺を警戒させるような威圧感が漏れ出ていた。もし会うことがあり、敵意を向けてくるのならば、全身全霊を持って殺しにかからねばなるまい。

そんな決意を決めた時、ここに来た時と同じようにいきなり視界が暗転した。

誤字・脱字報告も受付けています

また、コメントやレビュー等をもらえると作者の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ