16話 苛む悪夢と新たな武器
前半、若干の欝展開?
2章スタートです
5/10 大筋が変わらない程度に書き加えました
――地獄を見た。
森の中を哨戒しているらしい兵士達の背後に黒い靄のかかった影が忍び寄り、彼等の無防備な背中にその手に持っていた刀を突き立てた。
隣を歩いていた戦友の胸から突然剣が生えるのを見て、彼らはこう思った。
“次は俺の番だ”
と。
一目散に逃げ出す彼等の心臓を影は正確に貫いた。
「―――――――――!!!」
人とは思えない咆哮を上げながら、影はその場から姿を消した。
影という化け物が去り、そこには心臓を正確に貫かれた兵士達が自分達から流れ出た血に沈んでいるだけだった。
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――地獄を見た。
家族が団欒していたであろう家のなかで、周りと己を血で真っ赤に染めた影は、持っていた刀を斬り払い血を飛ばすと、また咆哮を上げて去って行った。
「―――――――――!!!」
咆哮の残響が残るその家には、かつてはそこで賑やかな会話を弾ませていたであろう家族だったモノが転がっているだけだった。
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――地獄を見た。
ある国の首都だったそこには、無数の死体で丘が作られていた。それはあたかもこの国の国民全てを集めて作ったかの様だった。
その丘の頂上には先程の影がおり、その手に持っていた刀を落とした。
それと同時に影が纏っていた靄が薄れ始めた。
その靄から現れたのは――――
―――前世の俺だった。
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――地獄を見た。
かつての自分が犯した決して贖うことが出来ない罪を見た。
この夢を見る時、いつも俺は動けずにいて何処か遠い場所で俯瞰して見ている。
その夢の中では、前世の俺に殺された人の感情が俺に流れ込んでくる。
例えばこんな風に――
―――――――――――――或る巡回兵の一人―――――――――――――――
――なんだ、あのバケモノは!?このままじゃ皆殺されてしま……うっ?
あれ、おかしいな?俺の身長ってこんなに低かったっけ?
それにしても寒い。ここはジャングルの筈なのに。まるで此処だけが、凍土にでも変わってしまったかのようだ。ああクソ、寒い寒い寒い寒イサムイサムイサムイサムイ…
アレ、ナンデコンナニサムインダロウ?クビカラシタハモウナイノニ。モウスグシンジャウノニ。シヌノハコワイ。イヤダ、マダシニタクナイ。イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイ…
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そうして死を恐れる彼らは、いつも俺が死体の丘を築いた後、俺に対して死を願う。
――惨殺斬殺刺殺絞殺殴殺圧殺溺殺毒殺鏖殺銃殺爆殺殺殺殺殺殺殺殺汝生きる事認めず尽く遍く全ての汝認メヌ認メヌ認メヌ認メヌ認メヌ認メヌ認メヌ認メヌ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ……――
俺は、いつもここで飛び起きてしまう。彼らの声に肯定も出来ず、さりとて否定することも出来ずにいて、その事実に心が押しつぶされそうになるから。
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殺された彼らは歌い、謳い、呪い続ける、この憎悪の鎮魂歌を。自らの本物を殺した彼の死を願い続ける。
例え、それが彼自身の夢の中だけだとしても。彼を苛む事が出来るのならば、彼らは終わりなくソレを続ける。その狂って喰ってクルッタ呪いの言葉を吐き続ける。
彼らは決してソレをやめたりはしない。
彼の心が折れるまでは、決して。
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「――――ッッ!」
途轍もない不快感に襲われて、俺は飛び起きた。
また、あの夢を見てしまった…
夢で見る過去の俺のあまりに醜悪で愚かな行動と、それを知りながらも再び死んでその罪を償おうとしない今の俺にも反吐が出る。
そうやって、ネガティブな方へ流れてしまう思考を頭を振って追い出しつつ、今日の予定を考え出した。
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元が武器な癖して、主より目覚めるのが遅い討魔が起きてくる頃には予定を決めることが出来た。
「ふぁ~あ。おはようだ、主」
「ああ、おはよう」
まだ眠いのか、目を擦りながら話しかけてくる討魔に挨拶を返す。
ちなみに俺と討魔は同じ部屋に泊まっている。
討魔に押し切られる形で渋々ながらも同室を許可した。ベッドをダブルにしようとしたのには流石に辟易したが。
そんな事はさておき、
「討魔、今日は武器屋か鍛冶屋に行って刀を打って貰いに行くぞ」
やはり、先日の敗因は慣れない武器である大剣を使って戦ったことが大部分を占めると思った。だから、刀を探してみて、なければ造って貰おうと思ったのだが…
「!そ、それは某を捨てると言うことか…?」
何を勘違いしたのか、捨てられると思った討魔が目に涙を浮かべながら、俺に問いかけてきた。ここで討魔を泣かしてしまえば、皆の評価が自分で態々呼んだ娘を飽きたから捨てる、などという最低鬼畜なド畜生になってしまうのできちんとフォローしておく。
「そんな訳ないだろ。別にそのまま討魔を振ってもいいんだが、それだと討魔がいなくなった事をうまく説明出来る気がしないから、疑われるだろう。そんな事になるくらいなら、新しく作ってもらったほうがいいかなと思ってさ」
それに、と続け
「討魔も今の姿で過ごして、楽しいと思っている筈だ。その楽しさを奪う程、切羽詰まった状況でもないからな」
そう、いままでの様に刀として無限収納空間にいた時よりも、今の人間として過ごしている討魔の姿は生き生きしていた。さっきのように遅くまで惰眠を貪ったりなんてこと武器に出来るわけないからな。
「…そういうことなら、特別に許すのである」
そういって、若干むくれながらも討魔が許可してくれた所で朝食を食べることにした。
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そうして、朝食を食べ終えた俺たちは街に繰り出した。
転生してからの俺はトラブル体質だというのに何もトラブルが起こらない筈もなく…
「…お兄さんは私のもの」
「主から離れよ、卑しい雌豚」
絶賛修羅場っていた。
新しい武器を手に入れる所まで書きたかったけど、時間がありませんでした!
すみません




