プロローグ
「あれ、此処は何処だ?」
見覚えのない1ルーム程度の広さの白い部屋にぽつんと一言、無意識のように声を出した。
先程までの記憶がなかったせいでどうして此処に来たのか、そして此処が何処なのかも分からず、俺 坂上成也はどのように此処へ来たのか考えていた。
深く悩んでいると
「こんにちは、成也さん。ようこそというべきでしょうか」
透き通る様な綺麗な女声が聞こえた。
ハッと思い、声のする方向へ体を向ける。
そこに居たのは見るだけで分かる男だった…嘘だろ
「おい!期待外れにも程があるだろ!?マッチョってなんだよ!ガチムチ男じゃねぇか!こういうのは女神がチート能力くれて異世界で俺TUEEEものだろ!」
だが何度、目を擦ってもマッチョ男は変わらなかった。
「申し訳ありません。今、女神は他の方を承っております故、その代理として私、ディアスが対応を致します」
このマッチョ神はディアスという名前らしい。
「そして、何故此処に貴方がいるのかと申しますと残念ながら貴方は引かれてしまれて」
「そっか、車か何かに引かれて」
短い人生だったと自分に浸っているとディアスが
「いえ、引かれたというのはそういうことではなくてですね…」
言い辛いように言って来た。
「と言うと?」
疑問に思い聞いてみた。
「貴方は好きな人がいてその人に告白すると、相手がですね…」
「嫌すぎて断るときも引いていたということにショックを覚えてってことか」
一を聞いて十を知るという言葉を思い知った気がした。
「それ事実なの?」
苦い顔で尋ねると
「えぇ、真実にございます」
と、苦笑いともいえない歪な表情と共にその言葉が返って来た。
「そうだったのか…」
「ま、まぁ取り敢えず、名前を教えてくれたし俺も教えなきゃ…いや、ちょっと待ってくれ」
ふと俺は一つ疑問に思った事があった。
「はい?如何されましたか?」
「如何されましたか?じゃねぇよ!どうして俺の名前知ってるんだよ!」
そう、俺は一度も名前を言ってないのに始めから俺の名前を知っていたかのように言っていたのだ。
するとディアスは
「神です。という理由にしておきます」
などと言ってきた。
「いやいや、それ絶対嘘だろ!」
だが俺は考えた
(いや、少し考えてみろ…もし本当にこのマッチョが神だとするとありえない話ではないかも知れない。だが流石に神だとしても俺を知る方法は必要なはずだ)
「どのように貴方を知ったのかお教え致しましょうか?」
そう言ってディアスは問いかけてきた。
「勝手に心の中の声を聞くなよ!けど、知りたくないといえば嘘になるな」
俺は正直にそういうとディアスが
「暇でしたので地球で見ていますと偶然貴方を見つけて観察しておりました。貴方が良い男とずっと想っていたので、ずっと見ていました」
ディアスは凄まじいほどの笑顔を見せて言ってきた。
そう言われてしまうと成也はゾクッと背筋に寒気が来た。
「ふざけんな!寒気しかしねーよ!ってかこっちくんな!」
成也は迫って来るディアスとは反対方向に全力で走った。そこには扉が一つあった。
「お待ちください!そちらを開けますとと異世界に転生してしまいます!まだ能力を差し上げておりませんのでお待ちください!」
ディアスの声が聞こえた時には扉を開け、外に出ており、急に光り出した床と消えゆく俺の体があった。
「あ、そうじゃねぇか!俺まだチート能力貰えてねぇ!」
「転生するの待ってくれ!いや、待ってください!お願いします!」
しかし、言葉が意味もなく成也はそのまま光に飲み込まれていった。
ガチムチ神からは逃れたけど、チート無しは嫌だー!