サヤ
群像小説のため、単話で読むと、場所が分り難いと思われますので、一応、1話ごとに場所を書いておきます。
異世界:アイリーン王国
◇ アキラ 三 ◇
結論から言うと、この少女が暗殺をしていたわけではないらしい。
詳しく聞いたところ、任務を一人で行うことは滅多になく、基本はチームで動いている。そのため、暗殺を実行するのは、もっと経験のある大人の仕事とのこと。
けれども、こんな小さな子が、暗殺に加わる事自体、僕は納得が出来なかった。
コツコツコツ!
誰かが牢屋の階段を降りてくる。
足音の数から二人と推測する。
「え?!」
その人物の服装を確認して、僕は驚いた。
……どうして、玉座に座っていたエストリア女王がここに?……
隣には執事と思わしき男性も付き添っていた。
女王の間にいた時は、如何にも女王という姿をしていたため、気がつかなかったが、随分と若い顔立ちである。
童顔なのかもしれない、年齢は予想できなかった。
「先ほどは、申し訳ありませんでした」
エストリア女王が会釈する。
僕にではなく、少女に対してだが。
「サヤさんと、他の忍の方々の身柄は保証しますので、どうか心配なさらないで下さい」
サヤという名前なのか。
というか、エストリア女王と知り合い?
やっぱり忍だったの!
疑問やツッコミは沢山あるが、取り敢えず、話の続きを聞こう。
「ありがとうございます。任務の失敗、申し訳ありませんでした」
サヤが頭を下げて謝る。
「皇太后様は、何と仰っていますか?」
続けて、エストリア女王に訪ねた。
「まだ、終わったわけではないと。時がきたら、伝達をするので、しばらくは我慢をしていただかなければなりませんと話されていました」
「……分かりました……」
サヤが悔しそうに下唇を噛み締めている。
……もしかしたら、サヤは志願して、この任務に加わったのかもしれない……
サヤの様子を見ていると、何となくそんな感じがした。
そして、二人の会話から漠然とではあるが、このアイリーン王国の状況を理解する。
王族はいるが、実権は大臣が握っていて、その事がアイリーン王国の腐敗を促進させている。皇太后とエストリア女王は、その事態をよく思っていなくて、皇太后と繋がりのある忍達に、大臣の暗殺を依頼した。
……任務は失敗したので、今は次の作戦を考えているといったところかな……
じゃあ、今後の僕がする事は決まった。
まあ、この世界が僕の創造した夢の中という事は、一旦、置いておくとして。
この二人を助けてあげる事にしよう。
何故、助けるのかって?
そんな事は決まっている。
それは、サヤとエストリア女王が、とても可愛い顔をしていたからだ。