絵本の中の騎士様
群像小説のため、単話で読むと、場所が分り難いと思われますので、一応、1話ごとに場所を書いておきます。
異世界:ワグーナ王国
◇ エレナ 一 ◇
「お前が見込んだ騎士ならば、立派な騎士なのだろう。好きにするが良い」
「ありがとうございます」
ルカワが私の専属騎士になる事を、お父様からも了承を得る事が出来た。
ここは父の寝室、滅多に入室する事はないのだが、どうしても叶えたい要望がある時は、直接、お願いをしに来る事がある。
因みに、ルカワという名前は寝室でのやり取りの後に確認をした。
ガチャ!
自身の寝室に戻る。
「やった、私にも遂に専属の騎士が、しかも聖騎士!」
私は小さく拳を握り締めた。
え、性格が全然違うって?
あれは王女としての建前に決まっているじゃない。
こっちが、本当の私。せめて、自分だけでいる時くらい、自由にしないと息が詰まるわよ。
それにしても、カッコイイ騎士だった。一目惚れとは、こういう事を言うのだろう。
ずっと、夢を見ていた。私だけを護ってくれる騎士様に出会う事に。
胸に抱えている絵本を、私はギュッと抱きしめた。
もちろん、私にも王女を護る精鋭の騎士達はいるが、その中には、私が望んでいる騎士はいない。
私が大好きな絵本に出てくる騎士様は、たとえ相手が王女であったとしても、対等に意見を言ってくれる。そんな方なのだ。
この国の騎士は、王家に対して従順に仕えるように教育がされている。
本来、王女の私にとって、それは望ましい教育なのだが、同時にその環境の中では、私の願望を満たしてくれる騎士が現れる事はなかった。
正直、私自身、諦めかけていた。王女と対等に接する事が出来る騎士が現れるという事など。
ところが、この国の者ではない騎士が、何の因果か、私の寝室に現れた。
これが運命と言わずして、何と言う事が出来るだろうか。
……まあ、妹も一緒であったのは誤算であったが……
それも、きっと、私の専属の騎士になってもらう、布石だったに違いない。多少(と思う)、強引ではあったが、私の騎士にする事は出来たのだ。
まだ、実際の実力の程は分からない。
現実を見て、幻滅する事もあるかもしれない。
しかし、憧れの騎士様の出現に、私の心はとても高揚していた。