知ってるくせに
群像小説のため、単話で読むと、場所が分り難いと思われますので、一応、1話ごとに場所を書いておきます。
異世界:ワグーナ王国
◇ ルナ 一 ◇
「もう、お兄ちゃん、酷いよ!」
僕は、お兄ちゃんの腕を掴んで言った。
ここは、王女エレナさんの隣の部屋。
お兄ちゃんが、エレナさんの騎士になってしまったので、隣の部屋を使わせてもらえる事になった。 寝たふりがバレている事は分かっていた。
僕のお兄ちゃんだから。
「普通の事だろ」
……普通って何……
それで、僕は自分の気持ちに嘘をつかないといけないの。
「……僕の気持ち……知ってるくせに……」
思わず、言ってしまった。
僕の事を護ってくれた事は頭では分かっている。
それでも、エレナさんの騎士になった事は嫌だった。
「何の事?」
お兄ちゃんは、僕が何に対して怒っているのか分からないという顔をしている。
「……兄妹だから、そんな関係ではないって言った……」
お兄ちゃんの顔を見る。
お兄ちゃんは困った顔をしていた。
僕の事を悲しませたくない、お兄ちゃんのそんな気持ちが、表情を通して伝わってくる。
「知ってるけど、俺達は兄妹だし、どうしようもない事だろう?」
お兄ちゃんの気持ちは分かる。
だけど。
「……どうして……どうして駄目なの……僕はこんなにも、お兄ちゃんの事が好きなのに……」
涙が溢れそうになる。
「俺もルナの事は好きだよ、でも、俺達の好きは、恋人としての好きとは違うから」
「違わない!」
僕は強い口調で言った。
自然と涙がこぼれ落ちる。
「……違うんだよ……」
僕が涙を流していると、いつも優しくしてくれるお兄ちゃん。
でも、この事に関して、お兄ちゃんが優しくしてくれた事はなかった。
「………………」
いつものように、僕は何も言えなくなってしまう。
「……いつか分かるから……」
そして、いつもと同じ最後の台詞を、お兄ちゃんは僕に言った。
「……分かった……今日のところは納得する……」
納得できた事はない。
けれど、これ以上、お兄ちゃんと言い争いはしたくはなかった。
「ありがとう、ルナ」
お兄ちゃんが私の頭を撫でる。
口喧嘩をしたばかりなのに、こんな小さな優しさで、僕の心は満たされてしまう。
お兄ちゃんを好きになってはいけない。
ずっと一緒にいるから、お兄ちゃんのダメなところも分かっている。
……それでも好きになってしまったら……どうやって諦める事が出来るのだろうか……