異世界の布団
群像小説のため、単話で読むと、場所が分り難いと思われますので、一応、1話ごとに場所を書いておきます。
異世界:ワグーナ王国
◇ ルカワ 一 ◇
……眠い……
まるでふかふかの布団の中にいるようだ。
隣にはルナがいて、くっついて寝ている。
目を開いているわけではないが、いつもの事なので感触で分かる。
それにしても、本当に寝心地がいい、このままずっと寝ていたいくらいだ。
……いや、この肌触り、むしろ布団の中にいるよな……
記憶が正しければ、さっきまでは洞窟の中にいた気がするのだが。
「お主ら、ここで何をしている!」
聞いた事のない女性の声だ。
俺は目を開けた。
どうやら、俺達はベッドで寝ていたらしい。ただ、そのベッドは、普通のベッドではなく、豪華な設えが施されているベッドだった。
「ここが第一王女エレナの寝室と知っての蛮行か」
あ、俺達が寝ていたのは、王女のベッドだったんだな。どうりで、寝心地が最高だったわけだ。
……というか、何でそうなった?……それに俺達が兄妹だと知らない人が、客観的にこの状況を見たら誤解するよな……
エレナと名乗った王女が、蛮行と言ったのは、そういう事か。
シャキン!
「うおぉ!?」
剣先を喉元に突きつけられた。
……え、これ、本物じゃないよね……
真剣ではないという保障はどこにもない。
「いや、違うんです。この子は俺の妹で……」
「……妹?……」
「聖騎士が妹と関係を結んでいると言うのか?世も乱れたものだな」
来ている服を確認する。
なるほど、聖騎士の服装のままだからか。
「……そうじゃなくて、兄妹だから、そんな関係ではないと言いたかったんだけど……」
「………………」
自身の勘違いに気がついたのか、エレナは顔を赤らめた。
「ま、まあ、お主らが、どのような関係なのか、今は問題ではない。何故、わらわのベッドで寝ておったのかという事だ」
それは、俺が知りたい事なのだが……
「聖戦に参加していたのですが、敗戦の末、時空の扉を使用してここまで逃げて来たところ、ここで体力が尽き、ベッドの中で休ませていただいていました」
という設定。
「……そうか、そういう事なら仕方がない……」
……まさかの納得……
ここって、そういう事が当たり前の世界って事?
まあいいや、何とか誤魔化せそうだ。
「では、今のお主は、自由という事か?」
「はい、今は特別に仕えているところはございません」
エレナが笑みを浮かべた。
「分かった、なら、お主は今日からわらわの騎士となれ」
「はい、分かりま……え?!……」
……まさか、そういう展開になるとは……
「わらわには城の内外に、たくさんの敵がおる。このワグーナ王国と無縁のお主に、護衛を頼みたいのだ」
今いるのは、ワグーナ王国という国か。
「……断った場合は……」
「わらわの寝室に無断で入ったのだ。お主とその妹の命はないと思え」
……これって引き受けるしかないパターン……
「分かりました。エレナ王女様の護衛のため、騎士をさせていただきます」
「うむ、良い返事だ」
……ルナ、お前が寝ている間に、大変な事になっているぞ……
寝たふりをしている妹に対して、俺は胸中で呟いた。