あれ、これって演出?
群像小説のため、単話で読むと、場所が分り難いと思われますので、一応、1話ごとに場所を書いておきます。
異世界:???
◇ アキラ 二 ◇
「何者!」
大きな声が建物の中に響き渡る。
同時に、僕は目を覚ました。
「え、建物の中?」
先程までは、洞窟の中にいたはずである。
頭が混乱していた。
「その無礼、ここが女王の間、エストリア女王の御前と知ってのことか!」
台詞から推測すると、ここはどこかの王国の女王の間。僕は今、その女王の間の中心にいる。
正面の玉座には、エストリアと呼ばれていた女王が座っていた。
叫んでいたのは、隣にいる大臣と思わしき人物。
「引っ捕えろ!」
掛け声と同時に、両側にいた兵士が動き出す。
僕はあっという間に押さえつけられた。
首筋に槍の刃を当てられている。
「牢屋に閉じ込めておけ!」
「……あれ……」
状況を頭の中で整理する間もなく、僕は女王の間から連れ出された。
ガシャン!
牢屋に錠がかけられる。
「……あれ……」
僕は牢屋に閉じ込められた。
「えええええええええぇぇぇぇぇ!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
皮肉なことに、牢屋に取り残されて、ようやく僕は出来事を整理する時間を作る事が出来た。
家族でダンジョン体験のアトラクションに参加して、洞窟の中の扉を開いたら光に包まれて、目が覚めると兵隊に囲まれていて、いつの間にか牢屋に投獄。
……何これ……
ダンジョン体験のアトラクションに参加していたのだから、これも演出の一つなのか?
一緒にいた、レイカ、ルカワ、ルナはどこに行ったんだ?
……何か、客に対する扱いが雑だし、一人に対して、スタッフの人数が多過ぎるような気もするが……
考えていても仕方がない、ここは待つしかないか。
僕はしばらく待つことにした。
十分経過。
「………………」
三十分経過。
「………………」
一時間経過。
「いや、おかしいよ!」
自分しかいないのに、思わず声に出してしまった。
演出なら放送も無しに、こんなに待たせるはずがないし、スタッフも誰一人いない。
それによくよく思い返すと、さっき押さえられた時に首筋に当てられた槍の刃は、レプリカではないような感触だった。
「……あっ……」
気になって、首筋を触ってみると、手にうっすらと血がついている。
え、何これ、もしかして、本当にファンタジー世界に来ちゃったの?もしくは、中世の時代にタイムスリップしたとか?
……出来れば、前者のファンタジー世界の方が、個人的には興味もあるしマシなのだが……
ただ、今の状況を考えると、そんなことは大した問題ではないのだろう。
……何も分からない場所で、しかも投獄されて、僕は生き残る事が出来るのだろうか……