家族で異世界へ
群像小説のため、単話で読むと、場所が分り難いと思われますので、一応、1話ごとに場所を書いておきます。
日本:ファンタジーランド
◇ アキラ ◇
今日は快晴ということもあり、遊園地ファンタジーランドは、週末に遊びに来た人で溢れていた。
「ファンタジーランドに来たのは久しぶりだな」
僕は賢者の格好をしている。
ファンタジーランドでは、ファンタジー世界のコスプレが出来るのだ。
「そうだね」
妻のレイカは笑顔で答えた。
レイカは、精霊使いの格好をしている。
家族は僕と妻、長男と長女の四人家族。
皆、漫画やアニメ、ファンタジー小説が好きな家族である。
「家族で遊びに行くのはまだいいんだけど、このコスプレは何とかならないのかな……」
長男のルカワは聖騎士の格好。
少し恥ずかしそうな表情をしている。
「お兄ちゃん、カッコイイよ」
長女のルナは巫女の格好。
父親から見ても明らかに分かるお兄ちゃん好き、ブラコンである。
子どもが小さい頃はよく家族でファンタジーランドに来ていたが、子どもが学校で部活が忙しくなると、そういった機会も少なくなっていた。
今日はたまたまルカワもルナも部活動が休みになったため、急きょ家族でファンタジーランドに来ることになったのだ。
「お、ダンジョン体験だって、あれ行かないか?」
やっぱり、ダンジョンは、男の冒険心をくすぐる。
「面白そう!お兄ちゃんも行くよね!」
ルナがルカワの腕を掴んで言った。
ルナはお兄ちゃんと一緒ならどこでもいいんだろうけど。
「まあ、ルナが一緒に行って欲しいなら」
ルナが引っ張っているが、何だかんだ、ルカワは妹の面倒見がいい。
僕たちは、ダンジョン体験のアトラクションの列に並んだ。
コスプレをしているせいか、本当に自分が物語の世界の人間になったような気がして、心がワクワクしている。
いよいよ、僕たちの順番になり、洞窟の形に作られているダンジョンに入った。
「……結構、本格的な作りね……」
「というか、本物に見えるけど、本当に作り物?」
レイカは不思議そうに言った。
「外から見た時は、作り物っぽく見えたのにね」
ルカも同意見のようだ。
ダンジョンの中は一本道だったため、僕たちは道沿いに真っ直ぐ歩き続けた。
ダンジョンなのに一本道がずっと続くのはおかしくないか?
そう思い始めていた頃、フードで顔を覆った女性らしき人物が、扉の前に立っているのが見え始めた。
「ようこそラミレスへ」
扉の近くに行くと、ゲームで見たことがあるような案内をされた。
「何か、雰囲気出してるな」
何だか胸がドキドキする。
「扉の先が楽しみ」
ルナもワクワクしている様子だ。
ギギギー!
扉が開く。
その瞬間、僕らは光に包まれた。