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「これは、おどしでも、大げさに言ってるわけでもないんだ。あんたの正体が精霊の子だと町中が認めれば……昔話のように処刑され、あんたは二度と家には帰れないだろうさ」
おばさんの言葉が信じられず、真緒はまさかと思った。目を大きく見開き、顔を上げ、なにか言おうと口を開くが、開いたままなにも言葉が出てこない。かすかに体がふるえた。
そんな真緒をおばさんが一瞥し、外へ出ていく。しばらくの間、家に戻ってこなかった。静まり返る家の中で、真緒ひとりだけ。おばさんの言葉が、抜けないとげのように真緒の頭から離れなかった。
「あんた、まだ起きてたのかい」
いつも寝る時間の少し前に、おばさんが帰ってきた。呆れたように言うおばさんの視線の先に、真緒がいる。真緒はまだリビングでいすに座ったままだった。
「どうして、ですか?」
真緒はおばさんを見ることなく尋ねた。
「急に、どうしてって……なにがだい?」
おばさんが真緒の近くで立ったまま問い返す。
「私は……秘人じゃありません」
少しの間を置いて真緒が断言した。
「それに、精霊の子でもないです」
「じゃあ、なんだって言うんだい?」
「私は、私は……」
真緒の発する声に、熱くて短い息が混じる。ぎゅっと両手の平を閉じ、
「ひとです!」
力強くそう主張した。
けれども、おばさんは首を傾げて眉根を寄せ、理解に苦しむような顔をする。
「なに、わけのわからないことを言ってるんだい」
「おばさんたちの言う、秘人ではなく、秘人の人だけで読む、“人”なんです」
真緒は真剣におばさんの目を見て言った。
「おばさんは、秘人でなければ精霊の子だって私に言いました。でも、それって、この町に昔から伝わるお話の人物ですよね? 実在したかどうかもわからない……」
「いや。精霊の子は本当にいたと、今もいると、私は思うよ」
真緒の向かいのいすに、おばさんがゆっくりと腰を下ろした。
「町は、精霊の子の存在を信じる者と信じない者、半々だろう。だが、精霊の子に関する本の多くは、秘人が作り上げた実在しない人物として記してある。それも良くない伝説として」
「私が読んだ本も、そのような本でした。昔、この町にひとりの精霊の子がやってきて、魔法エネルギーではない、先天能力のような力でもない、不思議なエネルギーを使ってものを操った、って」
「ああ、そうだろうね」
「それが自然エネルギーの……精霊の強いパワーだとされて……時計や車などもその精霊の子がこの町に持ってきたって……。はじめは良かったけれど、その精霊の子は悪さをして、この町を滅ぼしかけた。それを許せなかった秘人たちが、精霊の子を精霊に返した。そう書いてありましたけど……」
「まあ、それもすべてうそというわけではないだろうね。まったくの作り話なんかじゃないよ、精霊の子の話は」
おばさんはどこか悲しげに目を伏せた。




