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「あ、あれ? 私……ご、ごめんなさっ」
すぐに涙を拭き取って鼻をすする。
「その……いろいろと、ありがとうございます」
真緒がお礼を言うと、導士はにっこり笑って真緒の頭をぽんぽんとなでた。
「僕は大してなにもしてないんだけどなぁ。貴夜くんの頭はね……お店で売ってる薬じゃ、治せないんだ。だから真緒ちゃん、自分を責めないようにね」
「中野導士」
まるで真緒の心を見透かしたように導士が見つめると、真緒は小さくうなずいた。
「よし! それじゃあまた、近いうちに会うかもしれないから、それまで元気出しとくんだよ? それと学校の授業は、予習復習をちゃーんとするように! あ、僕が今日教えたこと忘れてたら、泣くから!」
導士は励ますように明るくそう言って、真緒のもとから去っていった。
それから真緒はしばらくぼんやりと立っていた。バスがやってくると、他の大勢の秘人たちと一緒に乗り込む。ふと、その中に遊と麗華の姿はないだろうかと気になり、見回したが、ふたりを見つけることはできなかった。
「あんた! 心配したんだよ! まさか……けがをしたのかい?」
真緒が家に入るなり、おばさんは血相を変えて地下から飛びでてきた。おばさんの目に、疲れきった真緒の姿が映る。真緒の新しかったローブはすすけたように汚れ、頭もボサボサで、顔に少しの血痕が付いていた。
「その……ごめんなさい」
真緒はおばさんの顔を見たとたん、顔をくしゃくしゃにして、涙をぼろぼろとこぼした。
「私……うっく……約束っ……守れなくて……っく……」
必死に涙を拭おうと両手で目をこするが、涙は次から次へとあふれ、止まることを知らない。
「あんたって子はっ! ……とにかく、早く風呂に入りな! 話はそれからだよ!」
おばさんがいてもたってもいられずに、右往左往する。そして地下にある自分の部屋へと行った。
真緒はおばさんに言われた通り、風呂に入って汚れを落とし、新しい服に着替える。その間もいろんなことが頭を駆け巡り、泣きやむことはなかった。
「お、おばさん……私、もう耐えられないです」
リビングでおばさんと話をすることになった真緒は、開口一番、勇気を振り絞って自分の気持ちを伝えた。
その言葉を聞いたおばさんは、なにか言おうとすぐに口を開けたが、再びゆっくりと口を閉じ、鼻から息を出す。わなわなと腕がふるえていたが、それも抑えるようにぎゅっと手をまるめていた。
「とりあえず、今日、あの霧雨通りで事件があったことは知っているよ。さっき、新聞配達の秘人が配りにきたからね。で、そこであんたは巻き込まれたんだろう? まず、命が無事で良かったじゃないか」
「はい。でも……」
真緒の視界が涙で滲む。その続きを言いたくても込み上げる感情に胸が詰まって言葉が出てこない。おばさんの顔を見ることもできなかった。




