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「ああ、あなたたちか! 貴夜くんは無事だよ! けど、早く手あてをしないとダメだ! 意識がない!」
茶色い髪をさらけだした警備隊の朽木さんが、深刻な顔で言った。額や首筋を流れる大粒の汗が光る。
「わかりました、僕も医術士を探して声をかけます!」
中野導士が答えた。
ぐったりしている貴夜の顔を見て、真緒はどうすれば良いのかわからず突っ立っていた。このままもし貴夜が死んでしまったら……真緒の心が不安とおそれに支配され、足がすくんだ。
「朽木さん! 医術士を連れてきました! すぐ診てもらえるそうです」
間もなくして、中野導士が医術士である女性を連れてくる。そこへ貴夜をおぶった朽木さんが来て、一緒に近くのベッドを探し、貴夜を寝かせた。
数分後。処置が終わったのか、貴夜を診ていた医術士が真緒たちの方にやってきた。
「貴夜くんの具合は、どうですか?」
中野導士が医術士に尋ねた。その隣で真緒もハラハラしながら医術士を見つめる。
「言いにくいのですが……はっきり言って、あんな症状は今まで見たことがありません。腕の傷は薬を使ったのか、大したことはないのですが、頭の方が……。おそらくエネルギーの使いすぎだとは思うのですが、それにしてもひどいレベルです。このまま放置すると脳に障害が出て、危険な状態です」
「そ、そんな……」
真緒は目を大きく見開き、口を両手で押さえた。思わず泣きそうになり、急いでその場を離れる。それを導士が呼び止めようとしたが、真緒の耳には届かなかった。
「やっぱりエネルギーの使いすぎか……。どうにかして、彼を治せないんですか?」
「病院へ移す手はずをしておりますから、整い次第、他の重症の方たちとともに貴夜くんを病院へ移送します」
導士の問いに、医術士が答えた。
「そうですか、ありがとうございます。よろしくお願いします」
導士はお辞儀し、医術士が会釈してその場を去っていくと、真緒を探した。
真緒はトイレの個室にこもって泣いていた。
自分に使った薬を、少しでも多く貴夜くんに使っていれば、こんなことには……そう思うと、涙が次から次へとあふれてこぼれ落ちた。
真緒がひとしきり泣いてトイレから出てくると、中野導士は心配そうな表情を浮かべて立っていた。
「大丈夫? これから貴夜くんが病院に運ばれるらしいから、僕はついていくけど、バスがもうすぐ来るみたいだから、きみはそれに乗っていったん家に帰った方がいい」
「そんな……私もついて行ったらダメですか?」
「ついていくと言っても、貴夜くんは他の患者さんと一緒に搬送用のそりで送られるから、僕は使い魔に乗ってその後を追うんだ。今このへんは危険だから、ひとりでの行動は危ないって言われてるんだけどね。こう見えても僕は導士だから、許可をもらったんだよ」
「そう、ですか……」
導士と一緒に病院へ行けず、真緒は肩を落とした。
「それに、きみも心配している家族がいるだろうから、早く帰って安心させてあげないと!」
導士に笑顔でそう言われ、真緒は複雑な気持ちになった。おばさんではなく、ある人物の顔が浮かび上がり、胸がぎゅっと締めつけられる。
「ま、真緒ちゃん?」
気がつけば、真緒はぽろりと涙をこぼしていた。




