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「はい……。え? それって、どういうことですか?」
真緒は聞き返した。貴夜がけがをして大丈夫じゃないのはわかっているが、導士の言っている意味はそうではないように聞こえた。
「魔法エネルギーを放出できるようになったばかりのきみたちが、いきなり高等レベルの魔法を使うのは極めて困難だ。なぜなら、その知識も使い方もまだ教わっていない。独学でやったとしても、成功しにくい。それに……」
「あ、あのっ、すみません、話が……よく、わからないです」
「おっと、いきなりこんな話をしてもわからないよね! ごめん、ごめん。この話は救護エリアに着いてからにしよう」
中野導士がハハッと乾いた声で笑った。けれども、その後に見せる導士の目は笑っていなかった。どこか遠くを見つめているようで見つめていない、なにかを深く考えているような目をしている。口元に浮かべた笑みも消えていた。
真緒たちがバス停近くまで行くと、ひとりの警備隊がやって来た。警備隊は救護エリアまで真緒たちを案内し、ここでしばらく休むようにと言って、またどこかへと姿を消した。
救護エリアは、鉄製の折りたたみ式の大きな柵をいくつも並べて、地面を正方形に囲ったところだった。柵のすべてに、貴夜が使ったときと同じような長方形の紙が貼られている。上は薄い布で覆われ、雨が降っても大丈夫なようにできていた。
「救護エリアといっても、これじゃあ、ただの避難場所だねぇ」
たくさんの秘人でいっぱいのエリア内を見回した後、中野導士が呟いた。
けがをした者も多く、手当てをする秘人が少ないせいか、助けを求める声があちらこちらから聞こえてくる。
「すみません、あなたたちはけがの治療が必要ですか? もし必要で、お急ぎでないならば、先に重症の方を優先させていただきたいのですが」
いきなり後ろから知らない男に声をかけられ、真緒は小さく飛び上がった。
「はい、ぼくは後で大丈夫ですよ」
導士が答える。
「きみは?」
声をかけてきた男性が真緒にも確認する。右手に羽ペン、左手に薄い板がある。薄い板の上には白い紙とそれを留める小さなおもり、そして黒いインクの入った小瓶が乗っていた。
「私はさっき自分の薬を使ったので、治療しなくても平気です」
真緒も答えた。
「そうですか。ありがとうございます。それでは一応おふた方のお名前をいただけますか?」
「中野彩也斗です」
「宮本真緒です」
真緒たちが名乗ると、その者は紙にふたりの名前を連ね、お辞儀をした。
「あの、さっきの秘人は?」
その者が去っていくと、真緒はその後ろ姿を見つめながら中野導士に尋ねた。
「ん? ああ、医術士のこと?」
「いじゅつし?」
「うん。あれ、ひょっとして知らないとか? きみの年でそんなことも知らないと、恥ずかしいよぉ?」
ククッといたずらに導士が笑うと、真緒は顔を紅潮させた。
「し、知ってます! けがや病気とかっ、そんな悪いものを治す秘人ですよねっ?」
「ね? って……きみ、確認してたらダメじゃん」
導士は腹を抱えて笑った。




