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「ところできみ、さっきからものすごい香りがするんだけど……なにか付けてる?」
救護エリアに向かう途中、中野導士が真緒に話しかけた。
「あっ、すみません。さっき店の中で怪物に襲われて、そのときに棚にぶつかって香水が体にかかったんです」
真緒は内心ドキドキしながらも、そう答えてごまかした。
「そっかぁ。って、え? 怪物に襲われたの? もしかして竜みたいなやつ?」
「はい、そうです。甘味楽園にあるドラゴーランドの竜です」
真緒の脳裏に先ほどまでのできごとが展開される。しばらくは甘味楽園に行けないだろうと思った。
「よく無事だったねぇ! 逃げ切ったの?」
「いえ、違うんです。貴夜くんっていう男の子がその怪物をやっつけて、助けてくれたんです」
「む? 貴夜くんってさっき言ってた子だよね?」
「はい、そうです」
「何歳?」
「私と同じクラスなので、12歳だと思いますけど」
それを聞いて、導士の紺色の瞳が月のようにまるくなる。真緒は変な発言でもしただろうかと小首を傾げた。
「それって本当に本当? まさかとは思うけど……どうやってその怪物を倒したの?」
「えっと……私もはっきりとは覚えていないんですけど……なにか呪文みたいなことを言って、紙のようなものをその怪物に貼ってました。すると、怪物が動かなくなったんです」
真緒が説明していると、導士はその場にうずくまり、いきなりひとりごとのように言いはじめた。
「うー……嘘だよなー。そんなわけ、ないない。だって、12歳だよ? それに、まだ授業はじまってないじゃん。呪符はGクラスから習うはずだし、Dクラスでも扱うのが難しいのに、そんなことできるわけ……」
「あのぅ、大丈夫ですか?」
真緒がおそるおそる導士に声をかける。
導士はピクッと反応して顔を上げたかと思うと、勢いよく立ち上がり、真緒の正面に来た。そして真緒の両肩を握り、まじまじと顔を見つめる。
「それが本当なら、大丈夫じゃないよ!」
「ええっ?」
真緒は小さく驚いた。
「うん。きっと、大丈夫じゃない。平気なわけがない! 僕じゃなく、その彼がね」




